平和資料館 草の家だより No.74 発行 2002.5.30 |
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東アジアの市民連帯を! |
〈若者の意識と新しい市民革命の予測〉 草の家に韓国の青年金英丸がきてからずいぶん様子が変わってきました。パソコンをつかいこなし、情報発信が早く、国家の壁を容易にこえてつながりが出来ます。彼が信頼している知識人の中に高橋哲哉、姜尚中東大教授がいますが、その姜尚中が戦後の日本を分析して「女性誌でよく取り上げられているファッションや旅行、グルメ、結婚や健康、あるいは芸能スキャンダルといったものは、どこかで社会が平和であるということを前提としているわけですね。 なるほどそういう社会は一見すると「公」の事柄よりは私的な趣味や欲望に過剰な関心が向けられている「滅公奉私」型の社会のようにみえるかもしれません。しかしそれは、決して異常ではないし、異常でないどころか、そういう社会こそ、やはりまがりなりにも戦争という大きな犠牲の上に獲得しえた価値によって成り立っていると思うのです。それは、一言で言えば、わが身を棄てるに値する大義など存在しないのであり、国家もその例外ではないということ、この徹底した「利己本位」こそ、戦後社会を根底で支えていたものだと思うのです」と述べ、最近では「利己本位」的な実感や生活を悪し様にののしり、国家意識の再生をとくような言説が流行っているが、9.11以降、テロという見えない暴力がいつどこで自分にふりかかってくるかもしれないという恐怖が実感され、若者の生き方や感性に変化がみられると言っています。 国会はスキャンダル続きで政治不信は高まるばかりで、小泉人気にかげりがみえますが支持率が下がれば下がるほど強権的に違憲の有事法制などを一気に通そうとしています。 この政治の「上から」の私権制限に若者が目覚めて立ち上がるかどうか、新しい市民革命の到来が期待されます。 高知大学の先生から大学生の状況をきく機会がありましたが、その荒廃ぶりは深刻です。授業中にもぺちゃくちゃおしゃべりをする、新聞をよまない、岩波文庫などよんだこともない、一年間に本を買う費用は平均して3000円弱。これでは専門書一冊もかえない。問題意識を持って学習している学生は皆無に等しいと言うのです。 こんな状況をつくりだしたのも戦後日本の「繁栄」ですが、これが日本没落の原因になりかねないと森嶋通夫氏はいっています。(「なぜ日本は没落するか」) しかし、金英丸さんや一昨年草の家に来て、今は三線奏者として活躍している外山剛士さんやピ−スライブに結集してきた若者を見ていると新しい市民革命の萌芽を感じるのです。 〈平和資料館の教育的役割〉 平和資料館は、資料に接することによって自己の問題意識を作るところで、答えを急ぎません。そして対話・交流を大事にしています。 安斉育郎さんが、ソウルにある「西大門刑務所歴史館」を訪れて、その感想を述べた文章(立命館大学国際平和ミュージアムだより、VOL 9-3、2002.3.25)で、この歴史館は日本の韓国支配の実態を学習する格好の場であるが、平和博物館の視点から見ると少し気になる点もあると次のように述べています。 「平和博物館は、単なる歴史博物館とは異なります。過去の戦争を取り上げる場合にも、戦争の加害や被害の歴史を展示するだけでなく、そのような事実を見据えながらも、再びそのような惨禍を起こさないようにするにはどうすればいいのか、かつて敵・味方に分かれて交戦した両国民、侵略国と被侵略国という立場で相対峙した両国民が、過去の悲惨な事実を見据えながらも、共に手を取り合って将来の平和づくりに向けて共同の努力をするにはどうすればいいのか−それを考える場こそ「平和博物館」だと思うのです」 草の家も安斉さんと同様の考え方で運営されている民間の施設ですが、金英丸さんが来てくれたことは異文化への関心もあるでしょうが、若者が若者へ働きかけることに特別の力があり、新しい若者文化が育ちつつあります。 草の家独特の自由な雰囲気の書道教室や草の家フォ−ラムに加え、ハングル講座「ハングルで遊ぼう」を5月より開講しました。ピースライブを通じても若者の交流が芽ばえています。草の家の杜の家いろりばた会議,自然農体験、憲法の森の育林なども企画し、学校現場の先生とも協力して、その教育的機能を高めなければならないと思っています。 〈市民の連帯で東アジア共同体を〉 森嶋通夫さんは「なぜ日本は没落するか」「日本にできることは何か」の中で東アジア共同体を提案しています。まだまだ研究中の課題ですが、アメリカ一辺倒の日本を脱し、日本国憲法にもとづく国家とするための構想で、かっての大東亜共栄圏の再現ではありません。人間は新しいビジョンをもつとき動きはじめます。 5月8日瀋陽総領事館事件がおこりました。日本外交のふがいなさは世界の物笑いの種子になっていますが、東アジアの連帯を考えるとき難民問題は過去の戦争の清算とともに重要課題です。アフガニスタンでもアフリカでもパレスチナでも難民の悲惨な状況が報ぜられますが、植民地支配の清算がきちんとおこなわれていない北朝鮮からの難民には特別の配慮をはらう必要があります。 難民は国境にむけて逃げていきます。戦火や飢えから逃れ、殺されないために隣国に向かいます。しかし、同じくそこにも居場所がないという現実に突きあたります。北朝鮮と中国の間の川を決死の覚悟でわたっても中国政府の役人につかまれば、北朝鮮につきかえされ、日本も難民を邪魔物あつかいにしている情況です。国境とはそもそも何か、その近辺にすむ住民にとっては障害物でしかありませんし、もともと地球には国境はありませんでした。せめて国境それ自体に相当な幅をもたせて、そこだけでも安心して住める屋場所(平和ゾーン)をつくるべきではないか。市民連帯の仕事の一つとして、国境付近に平和ゾーンをつくり、そこに平和博物館や平和の森をつくりことを一緒にやりませんか。 (5/15 西森茂夫) |
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2002年 草の家 活動方針と活動計画 |
1. 2002年ピ−スウエイブ(6月〜9月)を有事法制・憲法改悪に反対し、暴力でなく平和の文化をつくる行事として位置づけ全力を挙げて取り組む。草の家は事務局を担当しているが、草の家が直接責任を負う企画は第24回戦争と平和を考える資料展(7月2日〜7月7日)、第3回嘆きの森追悼集会と整備作業(7月4日)、第9回草の家小劇場「大崎二郎『沖縄島』朗読会(7月13日)、第8回憲法の森草刈り(7月20日)、8・15平和のための子どものつどい、「日本鬼子」上映(9月18日)である。詳細は別紙。 2.
高知空襲犠牲者の調査を徹底しておこない、名簿を作成する。(高知市は昨年10月より空襲犠牲者の名前の受付をしているが、調査のやり方はおざなりで、結果も公表しない方針) 4.
国際交流部の活動をつよめ、1999年のハ−グ世界市民会議決議の具体化を図る。 @ 国際活動基金を設ける。 A 韓国から草の家スタッフとして金英丸さんを迎え、アジアの人々との交流をつよめる。東アジアの市民連帯を模索する。(6月21日林秀郷さんをまねき自由民権記念館で平和と統一をテーマに交流する) B パソコンでの通信活動を充実させる。 C 6月にスイスのルツエルンで開かれる国際会議に山根和代さんを派遣する。 D 細菌戦裁判などアジアの戦争被害者の要求に耳を傾け、裁判の勝利に務める。現在、国会で継続審議になっている「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」の実現をめざす。 E 歴史の事実は消せない!「日本鬼子(リーベングイズ)を見る会」の活動を市民とともにすすめる。 F 5月18日(土)2時より「青年の船」で世界15ヶ国の若者と交流してきた中垣尚子さんを囲んで交流する。 G 7月23日(火)6:30より大阪大の栗本英世をまねき「ケニアの難民生活」の報告をきき難民について学習する。 5.「すべての武器を楽器に」をコンセプトに実施している「ピ−スライブ」を支え、音楽愛好者のネットワ−クで平和の花をさかす。(5月3日は雨天のため中止、5月26日(日)に再挑戦する) バイオミュ−ジックコンサ−トは10月に竹林寺で行う。 6.「平和を考える市民セミナ−」(2001年9月準備会発足、2002.4.5.正式発足、顧問野田正彰)を市民の自己形成学習運動として支援する。(6月11日(火)6:30教育会館で高知新聞編集局次長宮田速雄さんを囲んで「メディア規制法と市民」をテーマに学習する) 7.
草の家子ども会の活動を充実させるとともに、学校5日制に対応した土曜日の親子学習のプログラムを子どもの発達段階に応じてつくり、資料を見ながら子ども自身が学びを創造できるように援助する。そして総合学習授業の場として活用していただけるように学校教育との連携をつよめる。 8.
語り部の出前活動に対応できるようにするとともに、ガイド養成に努める。 9.
憲法の森の育林、拡大。杜の家の活用、自然農の楽しみを共有し、自然交流部の活動を充実させる。憲法の森の森番に高橋清光さんを任命、みんなで支援する。若者の杜の家での合宿学習会を定着させる。 10.
草の家ライフリンクの会は消費者グル−プと交流しながらゴミ問題や食の問題、街作りに取り組み、第三世界の人々の人権を守る立場でライフスタイルや安全な社会システムづくりに努める。地域通貨「グラス」もその可能性を追求する。(5月20日(月)から高知市役所の消費者週間のピロティ展に「戦争準備より原発対策を!」を展示する) 11.
会員の拡大(目標1,000名)に努めるとともに、財政強化のため会費を年3,000円(現在2,000円)とする。 12.
NPO(非営利活動法人)の資格をとるよう手続きをする。 13. 今年6月1日は槇村浩の生誕90年に当たり、「槇村浩詩集」を発行する。 14. 植木枝盛の命日である1月23日に「無天忌」を開催し、植木枝盛旧邸の保存、「植木枝盛研究資料目録」の普及にも努める。 15. 2003年2月20日は小林多喜二が築地署で虐殺(31才)されてから70周年になります。この日を覚え記念の集いをひらくとともに、県内の反戦に殉じた人々を若い世代につたえ、その業績を継承する。また海外にも発信する。 |
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平和遺族会をつくりませんか。 |
会員の片山和水さんから平和遺族会の高知の会をつくりたいので呼びかけほしいと申し出がありました。靖国神社の祭神になることを拒否する遺族の会です。関心のある方は以下の住所に連絡下さい。 〒781-1102 土佐市高岡町乙 1099-6 |
草の家だよりのスタイルを変えました。今まで手書きで作ってきましたが、手が少しふるえるようになり集中できなくなって、金英丸さんに手伝ってもらってこういうスタイルになりました。今回は特に活字が多くなりましたがご意見、ご感想をおよせ下さい。投稿も歓迎です。(西森) 西森先生の手書きより味はないですけど一生懸命つくりました。よろしくお願いします。 (金英丸) |