[ Back to Archive ]

Posted Apr. 07, 2017

An Assessment of Chinese Aircraft Carrier Aviation

The Author: Captain Robert C. Rubel, U.S. Navy (Retired)

訳者前書

米海軍大学中国海事研究所(U.S. Naval War College, CMSI)が出すChina Maritime Study No. 14 (Draft)から抜粋したチャプターを抄訳したもの。

現在、校正中

Typo, 誤訳の指摘は歓迎。- E-mail

目次

中国人民解放軍海軍は現在空母(遼寧)を保有し、航空運用能力(deck-aviation capability)開発のために初期作戦を実施している。中国海軍は何度も西側アナリストの予想を上回る能力を実証している。また、中国自身は遼寧が開発中のプラットフォームだと主張しつつも、空母保有海軍クラブに加わったことを宣伝している。[01] 現在、遼寧は海上公試及びJ-15戦闘機(ロシアSu-33派生型)と共に一連の初期航空作戦を実施中であり、中国海軍が有益な航空運用能力を獲得する見込みの評価に適切である。

米海軍の空母航空の開発はきちんと記録化されている、また伝説的に重要なサクセスストーリーでもある。しかしながら、この発展プロセスには第2次大戦までの20年とその後にジェット推進と空母が真の結婚を果たすための40年を要した。[02] 中国海軍は、米海軍がそのプロセスで経験してきた苦闘や流血の殆どを飛び越すことが出来る。空母航空はある側面では本質的に挑戦的なもので、組織的な学習プロセスを通して対峙するものだ。中国海軍が採用されている技術・米海軍のドクトリン・盗用した特許や機密を基に単独で進めることはできない。それは自身で学ばねばならず、その能力は与えられるものではない。[03]

I. The Limits of Leapfrogging

目次に戻る

中国海軍は学ばなくてもよい(中国海軍には学んでほしくない)大飛躍に貢献した、また貢献することになる大きな教訓がある。第一に何といっても、アングルドデッキの採用である。これはアレスティングギアを用いる全ての空母に見られる。アングルドデッキは米海軍が1940年代後半から1960年代初期にかけて経験した悲惨な事故率に対する自明の解という訳ではなかったが、アングルドデッキの導入で米海軍の航空事故率は1954年の776件から1960年の360件と約半分になった。他に光学着艦装置(OLS)のような技術的発展も貢献している。[04] さらに、初期のジェット機は気難しい操縦特性で、またエンジンの応答性が鈍かったことも多くの事故を引き起こした。中国海軍はこれらの全ての問題を回避出来る。遼寧の航空作戦のビデオを見ると、米海軍の飛行甲板手順を殆どそのままに(almost from the whole cloth)採用していることがはっきり判る。[05] 従って、多くの基本部分で中国海軍は技術的に洗練されたレベルで航空運用(deck-aviation business)を実施し、また米海軍が被ったコストを回避出来るだろう。

技術的飛躍は相当なアドバンテージになる一方で、多くの分野は中国海軍が自身で学ぶことになる、どれだけ模倣しても助けにはならない。第一に夜間及び全天候作戦である。第二次大戦まで空母は一般的に日中のみ、または好天時に行動した。核兵器の登場や空母を核攻撃の実行が可能なプラットフォームにした米海軍の必死さによって、夜間及び全天候作戦が航空機と命の恐るべきコストをもかけて始まった。[06] 勿論、そうした作戦を実施するための技術は航空機・艦艇の双方で向上しているが、"最後発(come last)"のクルーは実際にそうした作戦に習熟しなくてはならないし、それらは決してリスクフリーではない。

* 最後発のクルーは中国海軍という解釈で良いのだろうか。

全天候及び夜間の空母作戦の課題やリスクを理解するためには、米海軍の経験を検討する必要がある。天候が良好 - 着艦コース上の艦艇の最低でも4分の3マイル後方から目視で着艦エリアを確認する最終アプローチにおいて、雲高・パイロットの視程が十分で海が比較的凪いでいる - だとすれば、2つの状況では夜間作戦の方が恐らく容易だ。[07] デジタルコクピットやヘッドアップディスプレイの以前は、パイロットは航空機の垂直・飛行経路・高度・速度を保つためには最低でも5つの別々の計器の確認に習熟しなくてはならなかった。計器飛行は容易ではなく、練度を維持する定期的な訓練を要する。これは、晴天・満月の夜を別にすれば、パイロットが位置を判断するために視認可能な水平線がない洋上に特に当てはまる。デジタルコクピットやヘッドアップディスプレイは情報を統合し、問題を相当容易にする。しかし、方向感覚の喪失が絶えず脅威になり、またエレクトロニクスや他のシステムの故障はリスクを相当上げる。しかしながら、夜間作戦のために中国には少なくとも最新の西側技術をコクピットディスプレイ・航法・精確な最終着艦アプローチに取り入れて飛躍するアドバンテージがある。これら全ての装備があっても、米海軍は多くの航空機及び乗員の喪失 - 発艦して任務に向かい、そして消息を絶つ - を経験している。パイロットの方向感覚喪失が原因だと疑われる。さらに夜間の(座席の)射出や不時着水はパイロット収容の可能性を低減する。

悪天候は空母作戦の紛れもない敵である。昼夜の荒れた海では10万トンのNimitz級空母でさえもローリング・ピッチング・上下揺する。最後の用語は、船舶の垂直上下運動、海が容赦なく船舶を持ち上げ・落とすことを意味する。こうした運動は、例え安定していても光学進入角指示灯の上下揺を相殺する能力に限りがあるため、最終アプローチでパイロットに困難が生じる。船舶のローリングは、進入角指示灯が船舶のセンターラインから100フィートのところにあるために、上下動の困難を一層悪化させる。結果として生じた誤った進入角指示を追いかけるパイロット - 反射的な傾向の - は、低く進入して艦尾で墜落する、或いは高く進入してアレスティングワイヤーを逃す危険がある。米海軍では、そうした状況においては着艦信号士官(LSO)が着艦エリアに就いて航空機と連絡を取る。[08] それでも、合理的な着艦アプローチであっても、航空機と行き過ぎた降下率が航空甲板の上昇と組み合わさると、タッチダウンの際に着陸装置を壊す場合がある。

他の危険としてはワイヤーを逃すことだ。ジェット戦闘機は着艦時に燃料を搭載するにも限度があり、また燃料は急速に消費されるため、ワイヤーの捕捉に2度失敗すると直ちに燃料不足に繋がりかねない。米空母は空中給油が可能なタンカーを搭載し、問題が生じた機体に給油するために着艦作業中には通常は1機が上空で旋回する。中国がそうした能力を欠いているのであれば、夜間及び荒海時の作戦リスクは相当上昇する。代替手段は沿岸部に利用可能な”振替飛行場”を持つことだ。この場合は燃料が”ビンゴ(空)”になることが予想され、そうなればパイロットは着艦を放棄して、沿岸部に向かうことになる。しかしながら、空母作戦と代替飛行場がリンクしていると空母の作戦機動は限られる。

理論上は、米空母は雲高ゼロ・視程ゼロの状況で作戦可能である。低い雲・霧・激しい雨かどうかに関わらず、パイロットはタッチダウンまで或いは寸前まで着艦エリアを見ることは出来ない。彼らはレーダー誘導・電波進入角指示灯・パイロットが空母を視認可能になる前に実際に機体の着陸灯を視認出来るLSOの音声指示に頼っている。実際問題として、空母の艦長はリスクが上昇するそれらの状況での作戦を好まないが、搭載機が飛行中に天候が悪化した場合には必要になる。最新鋭の装備があったとしても、成功にはパイロットの技量が最高であることやパイロットとLSOの間の完璧な信用と信頼が求められる。これは広範な経験からのみ得られる。問題はここだ。天候は洋上では急速に変わり、空母は移動するため、指揮官が超保守的な作戦アプローチを取らない限りは、搭載機が離艦している間にある時点で状況は恐らく悪化する。また、空母や航空団の練度が低ければ損失が発生する。

1950年に起きたことだが、極東で複数の空母が関わった事故は今でもどのように事態が急速に悪化に向かうかの良い事例である。洋上と沿岸部の大体飛行場の双方で悪天候になった際、ある戦闘部隊が64機のジェット戦闘機をある空母から別の空母にスワップさせようとしていた。当時戦闘群幕僚だった士官の説明では”多くの戦闘機が飛行中だった。我々はそれらを降ろそうとしたが着艦させるのは大変な作業だった。機体は燃料切れとなり彼らを送り込む基地や海岸はない。我々はそれらを2隻の空母に戻さなくてはならず複数の機体を大破させてしまった。” [09]

悪状況での飛行に関する議論は搭乗員と艦艇乗員の練度の問題の考察に繋がる。部隊の能力全体を評価するには、それを人間及び機械の要素からなるシステムとして理解する必要がある。人間要素は選抜・訓練・文化 - 特に組織文化の複合として理解しなくてはならない。“槍の先端”の練度は、それら要素などの影響の産物である。本稿では2つのことに注目する。第一に、部隊の真の練度を作り出すために、中国海軍どの程度のリスクを受容するか? 第二は、中国海軍は乗員の中の比較的少数のエリート幹部の域を越えて、“平均的”パイロットを当てにするべき大部隊に移行出来るだろうか?

現代テクノロジーは高品質な航空シミュレーターを生み出した。これは実飛行時間に代わって普段から広範に用いられている。また場合により、特に民間航空では、乗員はシミュレーターのみを用いての新型機の資格を得ることが出来る。空母の作戦では、しかしながら、シミュレーターはこれまで述べてきた実際の状況の類の代わりにならない。個々人が各種のシミュレーターで部分的に訓練することは可能だが、夜間や悪天候での洋上作戦は、それらの状況下での実際の作戦のみ生み出し得るチームワークや信頼の開発が求められる。これはどの海軍にも平時の訓練環境においてリスクの受容が強制されるということだ。第二次大戦でリスクを飲み込むことが条件になり、米海軍は航空部隊が固有(endemic)の夜間・全天候能力を開発するために1950年代の努力の中で経験した悲惨な喪失を耐容することが出来た。疑問となるのは、中国海軍の組織文化に団体として(corporately)それらのリスクを受容することが出来るかどうか、また士官を一人ずつ、リスクを伴う決定を下す豪胆なリーダーにすることが出来るかどうかである。出来ないとすれば、中国海軍の航空作戦は重大な制約を抱えるだろう。

第二の問題は夜間及び悪天候での飛行を含み、また収まらない部分もある。高度に選抜され訓練された搭乗員の小規模、エリートの幹部を持つことが一つの方法だ。しかし平均的な人員が占めている大部隊を配備するには全く別の方法になる。軍事航空は進化論的(Darwinian activity)なものだ。弱者或いは不適応者は死ぬか去るかのどちらかだ。飛行環境が厳しいほど、高度な経験と練度に達している搭乗員は少なくなる。イスラエル空軍は厳しい選抜・訓練・評価によって真に卓越したパイロットの比較的小規模な軍団を作ったほぼ純粋な能力主義社会の例だ。1個か2個の小規模な航空団を配備することはこの方法で達成可能だ、しかしある程度の大部隊では選抜や評価の基準を十分な訓練の量(throughput)を生み出せるように緩和しなくてはならない。問題はどのように2級・3級程度の資質の人材を部隊の有力なメンバーに育てるかだ。ここにもリスクは入り込み、組織最上層部から部隊指揮官まで意思決定に浸透している、また組織文化が最も重要である。中国海軍は依然として集権的でリスクを忌避する組織だろうか、或いは組織の色彩を変えて組織自身とリーダー個人にリスクを受け入れる権限を付与することが出来るだろうか?

最近、米国のTop Gunを真似たSky fighters (歼十出击)という中国映画があった。作中ではTom Cruiseが演じた”Maverick”風のキャラクターは積極的で、中国人民解放軍空軍が進歩的な組織になるよう取り組むリスクを恐れない指揮官である。中国空軍がこうした映画に後援したということは、中国軍内に克服するべき文化上の問題が実際にあることを示している。[10]

多様な任務の役割を採り入れ、また予想される中国の戦略的任務の達成に貢献出来る中国空母の将来性は、訓練に影響を及ぼす組織の文化がどのように空母航空部隊の練度を上げるか、或いは制約するかの理解を武器にすることで評価が可能になる。

II. Doctrinal Roles

目次に戻る

石炭船USS Jupiterが米国初の空母USS Langleyに転換して以来、この種の艦艇の作戦ドクトリン上の役割は発展・拡大してきた。空母は国家資源と攻勢的な戦闘力の双方の集結を意味している。つまり、空母の使用がコミットされ潜在的にリスクの影響を受けやすい状況や事態を、明確に理解し空母の特性や空母の使用から得られる利益の双方と調和させる必要がある。[11] 能力・利益そしてリスクの分析方法はドクトリンの役割を明瞭にすることである。米海軍はこのような分類を公式に刊行したことはないが、海軍航空部隊の将官はそれらの暗黙の理解を有している。中国海軍のリーダーシップが同様の理解を深めていくかどうかはこの点で疑問がある。米空母はその歴史上6つのドクトリン上の役割を果たしてきた。中国空母部隊による各役割に採り入れる将来性が、中国海軍がどのように空母を用いるのか、そして恐らくは中国のシーパワーの実際の限界についても見識を提供するだろう。

第一の検討すべきドクトリン上の役割は主力艦艇の役割である。”主力艦”という単語は、日米海軍の太平洋での大海戦の歴史を考えると当然のことながらかなりの頻度で空母と共に用いられる。伝統的に、主力艦はあらゆる他艦種を打破出来る艦艇 - 一般には帆船時代の多数に砲を搭載した艦艇、あるいはDreadnoughtの時代の巨砲を搭載した艦艇 - のことである。海軍航空が大口径砲弾に比肩する爆弾を運ぶに足る十分な能力を獲得すると、空母が水上艦艇の浮沈の運命の決定者になった。真の主力艦になった空母が集結すれば敵対する艦隊を打破し、制海権(command of the sea)の掌握を可能とする。

第二次大戦後、米国の比類ない海洋支配の利点・ソ連や冷戦の特段の特徴・制海権の性質・主力艦の付随的役割は変化した。敵艦隊打破に専心する代わりに、米空母は戦争抑止や国際秩序に安全保障を提供するためユーラシア沿岸部に分散した。[12] つまり、資源や国力を集中したことで米空母は主力艦になったが、それは内陸部の目標を爆撃する能力であって、制海権行使に関わって他艦を撃沈する能力ではなかった。[13]

原子力潜水艦・長距離対艦ミサイル・リーサルな対空防御の時代に、いずれの意味でも空母を主力艦のドクトリン上の役割で用いることが可能な中国海軍を想像するのは難しい。水上艦艇の浮沈の運命を決めるのは恐らくは潜水艦だ。さらに、第二次大戦後の米国と同様に、中国が置かれた一連の戦略的状況に気付いている可能性はほぼない。中国が建造する空母の隻数や作戦パターンに関係なく、主力艦のドクトリン上の役割とそれらは恐らく無関係だ。加えて、主力艦の役割のリスクプロファイルは中国海軍のリスク忌避文化とは相容れないようである。伝統的な主力艦のやり方では、誰もがあらゆる勝利のためにあらゆるリスクを負わなくてはならない。Salamis海戦からMidwayまで大規模海戦では、提督の一人くらいは戦闘に渋々の態度を取ったものだが、待ち伏せを受けるか、もしくは最高指揮官に戦闘に押し込まれた。あるいは機会があれば第一次大戦のJutland海戦であったように逃走した。現代の捜索手段を考えると、中国海軍の提督が”一か八かの(for all the marbles)”戦闘に吸い寄せられることを容認するかは疑わしい、つまり彼にとっては主力艦の役割に戦略的な意味はない。

日本に投下された2発の原子爆弾は太平洋における第二次大戦の終結を促した。戦後、醜い内紛が空軍提唱者と海軍の間で起こった。戦略爆撃機が空母を時代遅れにしたと信じる空軍提唱者を払いのけることに必死で、また大型で低速かつ長距離爆撃機がソ連の防空網を生き残れないと確信している米海軍は空母や人命に莫大なコストをかけて空母を核打撃プラットフォームとして確立すべく邁進した。1980年代後半までに、この役割は三元戦略核戦力によって時代遅れになり、核兵器は空母の弾薬庫から撤去された。しかしながら、この能力は今も空母の本質であり、我々は一般的にはありそうもないが中国が核爆弾を空母に搭載するかもしれない将来の可能性を、彼らに強固な米国のミサイル防衛の回避を許すこのオプションについて我々が考慮しないで済むことに期待しながらも無視できない。

第二次大戦初期、米空母が日本の防御圏内の各地をヒットエンドランでの空襲に派遣された、最も有名なものが東京へのDoolittle空襲だ。それらの作戦は日本の後方地域での作戦阻害、日本の配置に関する情報提供、米国市民の士気向上に意味を持っていた。この方法を取った空母は南北戦争における南軍のNathan Bedford Forrest中将の騎兵とさして変わらなかった。このドクトリン上の役割は戦後に影に潜り込んだが、米海軍部隊を捜索・攻撃する能力に対するソ連の信頼を揺さぶるために米空母がソ連の海洋監視ゾーン周辺で巧妙に身を隠し、奇襲的に姿を見せた点でいえば冷戦中には前例が残っていた。また、ある者は1986年のリビアでのEl Dorado Canyon作戦も空中からの大規模な騎兵的襲撃として見なすかもしれない。中国空母は無防備な隣人にこの種の襲撃をやってのけることが出来るかもしれない。しかし、恐らくは米国の偵察情報が最初の犠牲者を警告するため、そうはならないだろう。一般的に言えば、衛星ひしめく宇宙・ますます監視される(instrumented)海洋・ドローンやスマートフォーンの拡散・見通し線外(OTH)レーダーは、洋上で空母が失探されたり(get lost)奇襲的に姿を現したりすることを非常に難しくするだろう。その一方で、中国に作戦保全や欺瞞が可能なら、この役割は中国海軍にとって確立するのが最も容易な小規模かつエリート搭乗員幹部に相応しい。

(特に戦艦乗組みの士官に)構想された空母本来のドクトリン上の役割は”艦隊の眼”となることだった。空母は我が艦隊が有利に交戦するために機動出来るように前進索敵して敵艦隊位置を掴むだけではなく、迅速かつ正確に照準を修正するため大口径弾の弾着観測も行うことになっていた。空母がドクトリン上の最重要な役割を引き受けたことで索敵は空母機動部隊の今日まで続く全般的な警戒態勢の一部となったものの、人工衛星依存のネットワーク戦の登場はこの役割を復活させるかもしれない。有力な敵に人工衛星の無力化が可能だとすれば、見通し線(LOS)中継装置の必要性が生じる。空母から射出されてそうした装置や常続・長距離偵察及び監視を提供する長距離ドローンは想像に難くない。多分に中国海軍は米海軍と同じように、この役割に興味を持ち、また同じように実施する能力を有している、すぐにでも中国空母からの無人航空機を運用することを考えている中国の取得システムの有意な機敏さを考えればそれは驚くことではない。

Horatio Nelson卿は”軍艦が要塞を攻撃するのは愚かだ(a ship’s a fool to attack a fort)”と忠告したが、状況が許せば、すなわち低脅威ないし脅威がない、空母は陸上作戦支援のために洋上飛行場として活用される。この役割における空母の大きな有利性は自身の後方支援を持つことで、つまり”ready on arrival”だ。この特性は朝鮮戦争序盤の釜山防衛やSaddamのクウェート侵攻直後のDesert Shield作戦の一週目において重要性を証明した。米空母はベトナム戦争・Desert Strom作戦・不朽の自由作戦(OEF)・イラクの自由作戦(OIF)その他で何度もこの役割を遂行した。これは中国空母の当然の役割だが、相当な警告や問題に対処しなくてはならない。

* Ready on arrivalはUSS Enterprise (CVN 65)の標語だった。到着次第準備完了のような意。

第一の問題は要求兵力量である(total force requirement)、ヒットエンドランの襲撃とは異なり、洋上飛行場(の役割)は沿岸部の兵士の支援か、何かの航空作戦を実施するかだ。空母が単位時間当たりに海岸に投入出来る火力量は十分でなくてはならない、また恐らく期限不定に維持する必要がある。十分なエアパワーを供給するには、米国の実践では2~6隻の空母をグループとしてきたが、それらは70~80機を搭載し、そのうち50機が攻撃機だ。遼寧は30機前後を搭載可能だろうが、早期警戒機・電子戦機・給油機のような追加の支援機はない。そうした支援機能は後方支援・戦闘捜索救難(CSAR)と共に海上飛行場の戦闘作戦に重要なものだ。中国第一世代の空母はこの面で不足することになる。さらに、沿岸部での作戦の性質によっては、時間を問わない作戦や悪天候での継続的な飛行が求められる場合もあり、従って既に述べた文化的・訓練場の問題を引き起こす。このドクトリン上の役割を上手く遂行するチャンスを得るにも、中国海軍には密なグループとして行動する最低でも2隻、恐らくは3隻以上の空母が必要になる。それには10年以上かかると思われる。

継続的な洋上飛行場には定期的な後方支援の流通が求められる。核動力のNimitz級は乗り組んでいる航空団と搭載燃料の容積を争うことはないが、遼寧はそうなるだろう。給油は航空作戦を阻害する、また燃料容量が小さいほど阻害されやすい。兵装の継続消費(robust usage)を考えると、補給を受ける必要も出る。中国空母が比較的基地の付近で活動するのであれば、燃料・兵装・糧食・部品の補給部隊の維持は実現可能だろうが、第一列島線の外側でこのドクトリン上の役割を適用する試みには、相当な後方支援インフラが必要になる。航空機のメンテナンスや戦闘損害修理は洋上飛行場の継続にとって別の課題となる。30機程度の小規模な航空団では復旧不可能な装備の故障で直ちに不能に陥る。

最後に、”sea base“を部隊防護する問題がある。空母が洋上飛行場として行動するのであれば、防御的機動性は失う。スキージャンプ方式に必然の限定的な航続距離は、一定間隔での射出には風向きに針路を合わせる必要があるのと同じように、機動性を一層失わせる。最新のエリア拒否兵器の拡散はこの役割をますます危険なものにする、少なくとも特定海域では。フォークランド紛争において、英海軍はアルゼンチンのExocetミサイルの探知や攻撃を避け、強襲揚陸地点から相当遠方に空母を置くことを強要された。これは、Harrierが防御パトロールを構築出来ずアラート状態でのみ発進可能で、同機が目標を離れるまでアルゼンチンの空襲を迎撃する際の邪魔になったことを意味する。米海軍においてさえ空母は既に飛行場として機能する最適ポジションに位置することが出来ないという認識が拡大している。短距離機を搭載する中国海軍空母はさらに悪い状況に置かれるだろう。

* 対空砲火がハリアーを誤射する危険があったという解釈で良いのか。

空母最後の役割は地政学的なチェスの駒である。この空母の象徴的な本質は冷戦のうちに、またそれ以降に確立された。Obama米大統領は、米海軍はより少ない隻数に減らすようリコメンドしたにも関わらず、11隻の空母群を維持するように指示したのは、空母が”幅広く使える”と知っているからだと報じられている。米空母は海軍外交に不可欠となっている、また中国が最終的には同様に空母を用いるだろうと考える十分な理由がある。この役割の良心的(benign)な側面に関しては、親善訪問、合同演習、災害救援・人道支援は全て他の役割が課す厳しい作戦要求と直面せずに引き受けられる海軍外交の要素である。遼寧や姉妹艦は望む状況で活動可能であり、クルーズすると決めた世界中の何処でも後方支援は対処出来る。

この役割の強制的な側面はより複雑になっている。この側面で最も良心的な要素は通常抑止力の展開(general deterrence deployments)だろう、またこれは中国空母の使用法として最も有り得る - 中国との領有権その他問題の争いを抱えるベトナム・インドその他国家の計算を狂わせる。また危機勃発時には、その計算が空母のために一層困難になる。

抑止力あるいは脅威の誇示を効果的にするには、エアパワーの集中が可能な位置で艦艇は姿を見せていなければならない。しかしながら、この位置が精確だと弱小国家でも火力を集中する恐れがあるエリア拒否兵器の類に対して脆弱になるということだ。これは空母を危機管理ツールとして用いる国家にとっては難しいジレンマになる。空母を他国の脅威を与えるために必要な位置に置くことは、空母を脆弱にし、潜在的には政治的な人質となる。一方で、空母を安全な位置に移動させることは、最低限でも一時的には、決意が鈍った証拠と見做される脅威となる位置の放棄を意味する。1973年の第四次中東戦争中、米空母群は地中海西部でミサイルを装備する強力なソ連艦隊と間近に相対した際、この種のジレンマに置かれていることに気付いた。中国海軍及び政治的指導層がそのようなジレンマの回避に十分敏感になるか、適切な空母の動向を管理するに足る感覚を持つかどうかは不確かだ。

象徴以上の航空運用能力の構築や維持は、今日の先進技術を以てしても高額でリスクのある事業だ。米国は、戦略的に必然なものとして空母中心の艦隊構造にコミットしている、また現在、レガシーな構造を将来残すかどうかを決める時期が来ている。中国は反対方向からやって来ている。遼寧の航空運用能力を駆り立てる外部脅威は殆どない。むしろ、国家のプライドと中国空母の開発を推進していると思われるニッチな機能性のコンビネーションだ。[14] 最低限度の信頼出来る運用能力 - カタパルト装備の空母が待望されているだろう - が一度獲得されれば、何か特定イベントの押し引き(push and pull)で以降の中国空母航空の開発軌道が形成されるだろう。その軌道がどのようになるかを言い当てるのは1920年代に米空母の発展の方向を予想するより難しい。

技術の進化は攻防間のシーソー関係を作り出す傾向がある。George Friedmanは著書のThe Future of War (邦題: 戦場の未来 - 兵器は戦争をいかに制するか)で兵器システムの老衰という考え方を提示した。戦車や空母のような兵器システムの防護コストが兵器システムの攻勢能力の価値を上回るようになる侵食プロセスのことである。[15] 対艦ミサイルを搭載するディーゼル潜水艦・無人システム・スマート機雷・他の待ち伏せ型の兵器は空母の老衰の事例を生み出す環境、特に沿海域、の特徴となるだろう。我々がこれを深刻に捉えているならば、海上戦力投射能力を多数の小型プラットフォーム - 恐らくはミサイル艦艇 – に分散させる方法を模索し、空母の建造を取りやめるだろう。いずれにしても、脅威やコストの増加が理由かどうかにかかわらず、空母の将来の優勢を予測するのは難しい。横軸が時間で、縦軸を空母の戦略的有用性とするグラフを想像しても良い。Friedmanの主張に倣うと、縦軸上の高い位置で始まり、時間の経過と共に右側に下降する線をDreadnoughtと同じ道を辿ってしまう座標に向けて引けるだろう。2本目の線は縦軸・横軸の交差点で始まり右側に上昇する線となり、中国空母の開発の推進を示す。2つの線が交わる場所が中国にとって空母への投資を止めるべき点となるだろう。

中国の地政学的必然性もまた中国空母航空の本質的な特徴を変えていくだろう。米空母は自由世界の秩序を維持し、様々な混乱からグローバルな貿易システムや安全保障を防衛する戦略ツールになった。[16] 中国空母にそうした広範な役割を想像するのは難しい。最も有りそうなのは、中国海軍が第一・第二列島線内に安全保障障壁を確立し、また領有権主張の支援を企むことだ。時には、中国が自国の権益に対する脅威と見做すものに対抗してインド洋に出撃することもあるかもしれない。それらの戦略的任務には、建設する中国にとっては米国よりは小規模な海軍航空編制が必要で、また建設する中国にとって少なくとも編制上は1個をまず実現可能だ。

中国共産党は空母を強大な国家のプライドにすることを選択した。これはさらなる空母と先進的な船体の建造や、均整と性能が増した航空団の配備を促すだろう。我々は中国の外交政策や安全保障戦略が共産党のより核心的な目標である国力の維持に密接に連携していることを理解しなくてはならない。この連携が、中国海軍航空を象徴的でニッチな部隊から実際に運用される戦略的に戦闘アセットに移行させるために必要なあらゆる段階でのリーダーの困難な決定に対する組織文化やエトスの影響力を深める。これがどうなるかは不確かである。

- end -

VI. NOTES

目次に戻る

[ Back to Archive ]