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Posted Mar. 01, 2017

A Japanese Perspective on China’s Evolving Surface Fleet

The Author: Vice Admiral Yoji Koda, Japan Maritime Self-Defense Force (Retired)

訳者前書

米海軍大学中国海事研究所(U.S. Naval War College, CMSI)が出すChina Maritime Study No. 14 (Draft)から自衛艦隊司令官だった香田洋二氏の小論を抜粋して抄訳したもの。

一大量産されている江島/Jiangdao級 (056)に一切触れておらず中国海軍水上部隊の充足や戦力比較などの条件が本来とは異なる点は大いに不満だが、同水上部隊に対する評価として部隊建設の観点からも示唆するものは多い。

構成はほんの少しだけ変えてあります。

Typo, 誤訳の指摘は歓迎。- E-mail

目次

I. Preface

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中国人民解放軍海軍(PLAN)部隊は3個艦隊として編成されている。北海艦隊(NSF)、東海艦隊(ESF)、南海艦隊(SSF)である。それらは共に中国の長大な沿岸部から伸びる海域の監視・防護を担う。

北海艦隊は渤海と後悔の防衛に責任を持ち、北朝鮮や韓国を担任する。この海域は中国の首都である北京に近接しているので、海軍関連の専門家はしばしば北海艦隊を”近衛艦隊(Imperial Guard Fleet)”と呼ぶ。

東海艦隊の担任区域は東シナ海及び南シナ海の北東海域の大半である。そのことから、東海艦隊は台湾危機への備え、日本の南西諸島周辺での活動、台湾とフィリピンの間にあるBashi海峡/Luzon海峡の哨戒を任務としていると考えられている。東海艦隊の仮想敵は長らく海上自衛隊の自衛艦隊と強大な米海軍第7艦隊だった。両者は日米同盟の下で緊密なパートナー海軍である。

南海艦隊は長らく海洋安全保障状況が域内沿岸国同士の海洋権益で混迷する南シナ海で中国の国益の防護を担ってきた。特に、中国の南シナ海における様々かつ特徴的な一方的な主張が南海艦隊の役割や任務を極めて複雑なものにしている。南海艦隊の作戦範囲は、域内海軍及び米海軍の潜水艦に対する極めて困難な対潜戦から、潜在する複合的な強襲揚陸による離島制圧まで幅広い。

従って、中国の戦略目標や国益の防護を支援するため、中国海軍は艦隊を3個に分けて維持せねばならない。中国の地政学的状況の特徴からそれらの艦隊同士で統合作戦や相互支援を実施するのは一般的に難しい。

II. The PLAN Destroyer/Frigate Force

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1990年から2000年代中盤にかけて、中国海軍は可能な限り多くのタイプの駆逐艦を少数ずつ建造して、艦隊にとっての最適解を探した。中国海軍は1990年以来、8タイプの駆逐艦を就役させている。2004年及び2006年に4,700トンの旅滬/Luhu級 (052A)が2隻、1999年に6,100トンの深圳/Luhai級 (51B)が1隻就役した。また、ロシアで建造された2隻のSovremenny級Type Iが1999年と2001年に、2隻のType IIが2005年と2006年に就役した。この4隻は”ピンチヒッター”として東海艦隊に配属され、1996年の台湾危機で露呈した海軍リソースのギャップ解消に当たった。ロシアから購入と並行して、2隻の7,000トンの旅洋/Luyang-I級 (052B)が2004年に完成し、2隻の7,200トンの旅洲/Luzhou-I級 (051C)が2006年と2007年に続いた。[01]

この経験から、中国海軍は単一クラス - 旅洋/Luyang-II級 (052C) - の駆逐艦を多数建造することを最終的に決定した。[02] 2005年、7,200トンの旅洋/Luyang-IIs (052C)が2隻就役した。これらは米海軍のArleigh Burke級駆逐艦に非常に似通っている。[03] 後継艦はその後8年建造されなかったが、結局同級3番艦(DD 150)の建造で再開され、2013年に就役した。

中断した理由は不明だが、中国海軍が洋上でシステム適合試験・艦隊受領試験・艦隊戦術運用評価を現実的かつ厳しくシミュレートした戦闘環境で実施する必要があったのではないか。そうした試験や評価は常に時間を要する。複雑で洗練されたシステムならば、完了に2-3年はかかるだろう。その後、試験や評価の間に見つかった機能不全や欠点に必要な措置を施すには多くの年月がかかる。建造タイムラインに中断期間が見られるのは珍しいことではない。また、建造ドックの設備改良が深圳/Luhai級まで6-8年の”建造休暇期”の理由だとする噂もある。

建造が再開されると、中国海軍は改良され近代的な旅洋/Luyang-III級 (052D)にシフトしていった。同級1番艦は2014年初めに就役、中国海軍は遂に米海軍のように多数の単一クラスの駆逐艦の建造を開始したようである。

フリゲイト(FF)は、ペースは早いものの、ほぼ同様の様式で進行している。1990年代-2000年代前半に14隻の江衛/Jiangwei-I, II級 (2,300トンが)が、過渡期の艦艇である2隻の江凱/Jiangkai-I級が2005年と2006年に建造された後に、中国海軍は最新フリゲイトの江凱/Jiangkai-II級 (4,000トン)の大量建造を開始した。2008年以来、16隻の江凱/Jiangkai-II級フリゲイトが就役している。江凱/Jiangkai-II級はステルスデザインを持つ端正な艦艇であり、その戦闘システムは近代的と思われる。

他に約14隻の旅大/Luda級系列 (旧ソ連Kotlinの改修型)の駆逐艦、また旧式となった25隻の江滬/Jianghu-I/II系列のフリゲイトが今日艦隊に在籍している。しかしながら、長期の就役期間や旧式の戦闘システムを考えると、これら老齢の駆逐艦やフリゲイトは2020年までに退役するものとみられる。

II-a. Destroyer-Frigate Force Strength in 2020

中国海軍水上艦隊が向こう5年から10年でどのようになるだろうか? 世界の艦船2013年3月号に2020年時点に中国艦隊の戦力組成の見込み予想が掲載されている。これを後述する議論の基本として用いる。[04]

North Sea Fleet

世界の艦船によると、南海艦隊は2020年時点で駆逐艦を6隻・フリゲイトを5隻有するだろう。それらは中国海軍最新のクラスになる。詳細はTable 1の通り。[05]

Table 1
Type Class 2013 2020
DD 051C 旅洲/Luzhou 2 2
052A 旅滬/Luhu 2 2
052D 旅洋/Luyang-III 0 2
FF 054A 江凱/Jiangkai-II 0 5
East Sea Fleet

中国海軍最大かつ最有力の艦隊である東海艦隊は、6隻のAegisライクの艦艇、すなわち4隻の旅洋/Luyang-II級と2隻の旅洋/Luyang-III級駆逐艦でアップグレードされるだろう。これらを4隻のロシア製Sovremenny級に加えることで、東海艦隊の駆逐艦部隊が大幅に増強される。Sovremenny級の特筆すべき要素の1つは、SS-N-21対艦ミサイルが提供する恐るべき水上戦闘能力である。マッハ2を超える高性能なSS-N-21は冷戦以来、自由主義国海軍の水上部隊に対する最強の艦対艦ミサイル脅威と見做されてきた。その点で、Sovremenny級の水上戦闘能力と旅洋/Luyang級の対空戦能力のコンビネーションは、長らく自衛艦隊と米第7艦隊を潜在的な敵としてきた東海艦隊にバランスの取れた戦闘力を提供するだろう。4隻の旧式の旅大/Luda級は退役すると思われる。

2013年時点で東海艦隊は16隻の新型フリゲイトと約10隻の旧型フリゲイトを運用している。しかしながら、駆逐艦部隊とは異なり、新造フリゲイトが加わることはないだろう。その代わり、約10隻の旧式フリゲイトは2020年までに退役することが見込まれる。結果的に2020年の東海艦隊は10隻の駆逐艦と16隻のフリゲイトで構成されているだろう。詳細はTable 2の通り。

Table 2
Type Class 2013 2020
DD Sovremenny-I/II 4 4
052C 旅洋/Luyang-II 0 4
052D 旅洋/Luyang-III 0 2
FF 054A 江凱/Jiangkai-II 4 4
054 江凱/Jiangkai-I 2 2
053H3 江衛/Jiangwei-II 6 6
053H2G 江衛/Jiangwei-I 4 4
South Sea Fleet

南海艦隊は、南シナ海の海洋主権問題が強まることでスポットライトが当たってきた。中国の国益を守り、国家の南シナ海政策を完全に支援する中国海軍にとっては、精強かつ有能な南海艦隊を向上・維持しなくてはならない。2020年時点で予想される艦隊勢力は東海艦隊よりも若干小規模である。2020年の南海艦隊派8隻の駆逐艦と12隻のフリゲイトを有していることが見込まれる。

南海艦隊は合計6隻の旅洋/Luyang-II/III級を有し、東海艦隊と同等になるものと見られる。フリゲイト部隊は東海艦隊よりも若干小規模であるものの、新型の江衛/Jiangwei-II級は南シナ海で活動する多くのASEAN各国海軍に関連して、より柔軟な運用性を提供するだろう。

水上戦闘指向のSovremennyを南海艦隊が欠いていることは東海艦隊と著しく対照的である。しかしながら、南海艦隊の作戦における対潜戦の重要性を念頭に置くと、中国海軍が旅洋/Luyang系列や江凱/Jiangkai-II級のみを南海艦隊に配属していることは当然である。

他の2つの艦隊のように、南海艦隊は5隻の旅大/Luda級や12隻の江滬/Jianghuの多様な派生型を2020年までに退役させるだろう。部隊構成の詳細はTable 3の通り。

Table 3
Type Class 2013 2020
DD 052B 旅洋/Luyang-I 2 2
052C 旅洋/Luyang-II 2 2
052D 旅洋/Luyang-III 0 4
FF 054A 江凱/Jiangkai-II 6 8
053H3 江衛/Jiangwei-II 4 4

II-b. The PLAN’s DD/FF Fleets in Comparison

中国海軍の3つの艦隊は主要な地域各国海軍、特に海上自衛隊や韓国海軍艦隊と比較するとどうか? 3か国海軍の詳細比較はTable 4の通り。

Table 4
Fleet PLAN SDF ROKF
NSF ESF SSF
Strength 6 DDs 10 DDs 9 DDs 36 DDs 12 DDs
5 FFs 16 FFs 12 FFs 6 FFs 6 FFs

2020年でさえ、中国艦隊は依然として日韓艦隊のどちらにも駆逐艦及びフリゲイトの勢力で劣っている。例えば、東海艦隊は駆逐艦の数において自衛艦隊の約28%(10/36)の規模に留まり、駆逐艦とフリゲイトの合計数においては62%(26/42)である。同様に、南海艦隊は2020年時点で韓国艦隊より大幅に少ない。言うまでもなく、中国各艦隊は各方面における任務要求に対処する高い能力を持っているだろう。

中国海軍は複数の課題への対処を続けるだろう、最も基本的な問題は水上部隊の配置である。中国の地政学的現実のために、中国海軍は3個に分けた艦隊を3個正面で維持する必要がある。将来最も可能性がある海上危機において、依然として駆逐艦及びフリゲイトを他艦隊から1つの艦隊に集中させて当該問題に対処することは戦略的に実現性がない。近い将来に、中国海軍がこの“散らばっている部隊と集中している部隊”という古典的な軍事的課題を解決することは出来ない。そのため、各中国艦隊の勢力は自衛艦隊と米第7艦隊が結集したパワーに対してはともかくも、自衛艦隊や韓国艦隊に劣ったままだ。

次の課題は新たな要求に対する資源割り当てである。いつか将来、中国海軍は空母戦闘/打撃群(CVB/SG)の一員として空母を運用するだろう。そうなった時、空母戦闘/打撃群の直衛となる(form screening)駆逐艦やフリゲイトが必要になる。

別の将来問題として、インド洋への展開における部隊の配置がある。中国のインド洋を通り抜ける海上交通路(SLOC)への依存度は大きく増すだろう。そのため、中国海軍はそれらを運用・保護する任務につく可能性が非常に高い。

しかしながら、2020年時点の中国海軍の駆逐艦・フリゲイト部隊の総勢力は3個方面艦隊の要求をようやく満たす程度だろう。水上部隊建設には時間がかかることから、急速かつ大幅に駆逐艦・フリゲイト部隊が増強されることは考えにくい。懸念される各任務に対処する艦隊から既に所属する駆逐艦やフリゲイトを引き抜いて新たに空母戦闘/打撃群の直衛部隊やインド洋の海上交通路の哨戒部隊を編成することも、結局は中国海軍のリスクを増すことになる。要するに、2020年までに新たに追加部隊を創設する – e.g., 現行の3個艦隊同様の部隊規模を持つ新艦隊の編制 - ことは困難である。これは中国海軍にとって深刻なジレンマだろう。

4つ目の課題は新装備の実際の能力に関連する。中国海軍の近代的な駆逐艦やフリゲイト、特に旅洋/Luyang-II/III級駆逐艦や江凱/Jiangkai-II級フリゲイト、は多くの新装備やシステムを運用する。しかしながら、日本周辺海域で実施される中国海軍の洋上訓練・演習の観測のような入手可能な情報を基にすると、それらのシステムの真の能力、特に現実的な戦闘環境における極限性能、が効果的に試験されているか疑わしい。同じことが新装備をフルに活用する戦術についても言える。それらは適切に開発されているとは思えない。これらは多くが未知数だが、一般的には対潜戦・対空戦・対艦ミサイル防衛・電子戦に用いられる中国海軍の新装備や戦術はきちんと試験されていない、或いは十分に開発されていないと思われる。

II-c. The Aegis System as a Comparative Case Study

今日のAegisシステムやBurke級の米海軍における開発史は、そのプロセスがどれほど困難であるかについて光を当てている。Aegisは1941年12月に始まる米海軍の対空戦開発の極致である。太平洋における第2次世界大戦勃発後、米艦隊の防空は大日本帝国海軍の航空機阻止に大きな困難を抱えることになった。特に1944年後半以降は凄まじく大規模な特攻機の空襲から水上部隊の防護、特に空母任務部隊、を防護することが、米海軍にとって最も深刻な課題の1つとなった。

しかしながら、日本海軍の空襲による損害に苦しんだ米海軍は、対空戦ネットワークを開発することで水上部隊の防護が可能になった。これは、対空レーダーを搭載するレーダーピケット艦・空母自身のレーダー・戦闘指揮所(CIC)・遠方の対空戦を担当するレーダー誘導される戦闘空中哨戒機(CAP)・多層になった終末防空担当の火器管制システムを備える対空火器(5インチ・40mm・20mm)で構成された。

とはいえ、2次大戦後のジェット戦闘機のデビューは根本的にゲームを変えてしまい、終末防空を担当する砲システムの効率的な利用に疑問が投げかけられた。この課題を解決するため、米海軍は艦対空ミサイル(SAM)システムの開発を開始した。これは、初期段階のコンピューターと1940年代中盤からのロケットテクノロジーを完全に統合することが開発作業に必要だった。1950年中盤から後半まで、3種類の第1世代SAMシステム(Talos, Terrier, Tarter)が就役。それらは、西側海軍では3-Tシステムと広く呼ばれていた。3-Tシステムは1960年代、70年代には最も成功したSAMシステムと考えられていた。

ソ連の米水上部隊、特に空母戦闘群、に対する航空脅威が手強く複合的になるにつれ、米海軍は革新的なテクノロジーのブレークスルーを取り込み“Typhon”とニックネームがつけられた開発プログラムを開始した。この対空戦システムの基本的な考え方は長距離で同時に多数目標を交戦することだった。しかしながら、その試みは余りに多くのテクノロジー上の課題のために失敗に終わり、プログラムは破棄された。

同時期にTyphonの開発と並行して、米海軍は新たな脅威に完全に対応するため、当時の最も洗練されたミサイルテクノロジーの統合によるSAMシステムの改良を開始した。その1つはTerrierとTarterをStandard Missile System (SMS)に統合することだった。その試みは成功し、標準化されたSAMの第1世代であるSM-1が1970年代初めに就役した。

しかしながら、1970年代、80年代のソ連の脅威もまた各種の長距離高性能な対艦ミサイル・空対艦ミサイル・水中発射型対艦ミサイルの導入によってその進化は飛躍していた。この極めて困難な環境において、最新型のSM-1システムでさえ新たなソ連の航空脅威への対処には不十分だと考えられていた。従って、米海軍には革新的なコンセプトや考え方の新たな艦載対空戦システムを開発する以外の選択肢がなかった。

新たなテクノロジー、そしてTyphon開発から得られた最も重要かつ大きな教訓は、この新たな試みを支えた。その結果である艦載対空システムは長距離で多目標と同時に交戦する能力を持ち、Aegisと名付けられた。主な開発分野には、指揮統制(C2)・フェイズド・アレイ・レーダー、第2世代のSM-2が含まれる。

1970年代後半、80年代初めは、第2次大戦中の水上機母艦をミサイル試験艦にコンバートしたUSS Norton Sound (AVM 11)で幅広い洋上試験が実施された。この洋上試験なくしてはAegisシステムの開発は深刻なトラブルに見舞われるか、失敗さえしたかもしれない。

初めて運用されたAegis巡洋艦であるUSS Ticonderoga (CG 47)は1983年に就役した。Aegis巡洋艦や駆逐艦の初期建造艦の就役後も、Aegis戦闘システムは多数の実射試験や演習から得られたデータや教訓を収集して継続的に改良・アップデートされた。長い運用の歴史から得られたそれらの教訓や最新テクノロジーや強固な産業基盤に支えられた不断の改良なしに、今日のAegisシステムはあり得なかっただろう。

中国海軍のAegisライクな艦艇やシステムについては多くが未知数である。しかし海上自衛隊は相当期間に渡って中国海域での海軍の活動全般を鋭く注視してきた。また、この中国海軍のシステム開発に関連する洋上試験は殆ど確認されていない。従って、中国海軍のAegisライクなシステムは洋上試験されていないと結論付けて良いだろう。

III. The Remaining Challenges

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5つ目の課題は訓練態勢、特に中国水上部隊の対潜戦・対空戦である。海上自衛隊が蓄積してきた監視体験を基にすると、中国海軍の洋上演習や訓練の洗練度・熟練度合は西側海軍の標準からは程遠い。こうした見方は、中国周辺(黄海・東シナ海)・日本周辺海域(太平洋北西部)での訓練範囲、訓練支援態勢、演習シナリオのような海上訓練の基礎の全要素に当てはまる。

中国海軍、特に駆逐艦・フリゲイト部隊、はそれらの欠点を修正する最善の努力をしており、それを続けると思われる。しかしながら、中国の政策の不統一さから若干孤立している中国海軍にとって、短い限られた時間で迅速かつ有意に進歩することは容易なことではない。

創設以来の教師であり指導者である世界最良のパートナー海軍(米海軍)を持つ海上自衛隊に関しては、真に有能で機能的なパートナーに成長するまで20年ないし30年以上かけたと言ってよい。

この点に関する海上自衛隊と中国海軍との決定的な違いの1つは、海上自衛隊が、外洋海軍として76年の歴史と経験を有して通常海上戦闘分野全般のスキルを備えていた旧海軍から受け継いだ人的資源を基に創設されたことだ。中国海軍は強大な海軍に成長しつつあるが、今でも陸軍力に大半の焦点を当てる巨大な人民解放軍の依然として一部門である。

最後に大事なことは、他のアジアの海軍の拡大する潜水艦部隊と対峙しなくてはならない中国海軍の対潜能力である。幾つかの地域海軍では21世紀の初め以来、野心的な潜水艦建造プログラムが進行している。例えば周知の事実として、インドネシア海軍は約10隻の潜水艦を導入する計画があり、ベトナム海軍は既にロシア製のKilo級潜水艦の6隻中3隻を受領している。[06] シンガポール海軍は既に4隻の潜水艦を運用している。マレーシア海軍はフランスの訓練潜水艦に加えて、2隻の作戦用潜水艦が艦隊に在籍している。

南シナ海のASEAN各国海軍に加えて、報道によれば韓国海軍は約20隻の潜水艦を建造する計画を有している、また2010年12月には海上自衛隊が作戦用潜水艦の規模を16隻から22隻に増加する計画を発表した。それら地域海軍の潜水艦部隊に加えて、米海軍が必要とあれば世界最高の原子力潜水艦をこの地域に展開する用意していること明らかだ。

対潜戦の基本的な性質 – i.e., 四六時中の戦闘 – を考慮した場合、中国海軍は自国を取り囲む海域、特に南シナ海や東シナ海で、深刻かつ複合的な対潜戦の課題に直面するだろう。

上述した通りではあるが、我々は中国海軍の能力を過小評価すべきではない。同様に、確実な証拠なしに過剰評価することもまた危険なことである。

IV. Aircraft Carriers

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中国や中国海軍にとって、空母を保有することは明らかに長年の夢であり、世界クラスの空母を保有し、超大国であることのシンボルだった。中国海軍にとって、空母は国家目標、特に戦略及び戦術打撃・制海・対潜戦を支援する艦隊防空・非戦闘任務、を支えるために成功裏に任務を完了する重要なアセットとなる。それらは、今日の部隊プランナーや戦略思想家を引き付ける空母の付加価値の要素を示す。

しかしそうはいうものの、空母の能力と中国の接近阻止/エリア拒否(A2/AD)の作戦上の関係は何だろうか? 空母は中国のA2/ADの重要な要素なのか、それとも違うのか? 中国のA2/AD態勢に関する公開情報を基に、しばしば対艦弾道ミサイルや潜水艦が空母に言及されることなく、同戦略の主要なエネーブラーとして議論されている。それでは、2隻ないしそれ以上の空母を将来保有するための中国海軍の理論的根拠は何か?

中国空母の有効性を低減する別の要素は貧弱かつ不充分な空母を防護する能力である。勿論、空母は1941年以来、殆ど全ての海上戦闘にとって最高の軍事アセットである。しかし、空母は防護されなくてはならない高価値アセットでもある。第2次大戦中、旧海軍や米海軍はこの点において著しく対照的だった。1943年以降、米海軍は航空脅威や潜水艦の攻撃から圧倒的な空母部隊を防護することに最終的に成功した。旧海軍はしかしながら、空母の防護ではひどく失敗し、最終的に総数24隻の空母の内で12隻の空母を米海軍の空襲で失い、8隻を潜水艦の攻撃で失った。

地域海軍の急速な潜水艦部隊の拡張を考慮して、中国海軍の現在そして近い将来の対空・対潜能力を考えるならば、中国海軍は間違いなく空母防護における深刻な問題に直面するだろう。中国海軍はこれらの不利を是正すべくステップを踏んでいる。しかしながら、海上自衛隊の対潜・対空能力向上の経験を考慮すると、中国がそれらを著しく向上させるには数十年かかるだろう。

V. Amphibious Ship Force

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中国海軍は2008年以来、19,000トンの玉昭/Yuzhao級 (071)を建造している。[07] 現在3隻が就役しており、もう1隻が艤装中である。それらに加えて、中国海軍は総計17隻3種類(玉亭/Yuting-II, 玉亭/Yuting-I, and 玉坎/Yukan)の5,000トン級戦車揚陸艦(LST)を運用している。さらに2,000トン級の中型揚陸艦(LSM)を6隻が就役中である。Table 5は2020年時点で3個艦隊への所属が予想される揚陸艦を示す。

Table 5
- NSF ESF SSF
071 玉昭/Yuzhao 0 0 4
072 IIA玉亭/Yuting-II 2 2 10
072 II 玉亭/Yuting-I 0 5 5
072 玉坎/Yukan 0 7 0
LSM 0 4 6
Capacity (personnel) 500 5,000 7,000
DD/FF Force 6 DDs 10 DDs 9 DDs
5 FFs 16 FFs 12 FFs

これは2020年の中國海軍が多くの領有権争いが未解決のままである南シナ海に揚陸艦を集結させるだろうことを明瞭に表している。同時に、しかしながら、南海艦隊の揚陸艦艇を護衛する任務を負うだろう駆逐艦・フリゲイト部隊は比較的小規模である。これは、中国海軍が万が一南シナ海で揚陸作戦を実施しようとするのであれば新たな問題になるかもしれない。東南アジア各国の海軍の潜水艦の勢力増大は中国海軍の部隊防護を対等にすることを従前より困難にする。

他の関連要素は、中国海軍の敵対脅威環境において強襲揚陸(opposed amphibious landing)を実施する能力である。現在、米軍のみがそれを実行する能力を持つ。米海軍と海兵隊のチームは、この種の作戦を戦術・装備を含めて、第2次大戦中の太平洋における飛び石作戦や、朝鮮半島やベトナムでの紛争を通じて確立し、洗練させてきた。しかし、米海軍と海兵隊のチームが太平洋戦争中にその能力を取得するために莫大なコストがかかることが考慮され、実際そうなった揚陸戦闘部隊になるまでには長い時間がかかった。

中国海軍のこの種の作戦を実施する能力は注意深く検討されるべきだ。南シナ海の島嶼での強襲揚陸作戦は米海軍が同エリアにいないのであれば、中国海軍にとって大いに容易になるだろう。これは中国が米海軍を同エリアから排除しようとする自国海軍のA2/AD戦略を開発した理由の1つである。

VI. Fast-Attack Craft

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近年、中国海軍の最新高速攻撃艇(FAC)である紅稗/Houbei級ミサイル艇が地域海軍及び米海軍の注意を引き付けている。紅稗/Houbei級は、ステルス構造・形状、ウェーブピアサー式カタマラン船型、35ノット以上の最高速度、4連装2基のYJ-83対艦ミサイル用ランチャー(射程100海里、速度マッハ1.5)といった多くの新機軸を設計に取り入れている。本級は来攻するいずれの敵水上部隊に対する最終防御アセットとして最も適している。中国海軍はこれまでに本級を60隻以上建造している。

しかしながら、海上自衛隊の研究や経験を考慮すると、この新装備の作戦能力に関しては考慮すべき様相が幾つかある。なお、海上自衛隊は日本の領土、特に北部、に上陸する可能性を持つソ連陸軍に対抗する強力な沿岸防御部隊の構築を目標に掲げた。同時に高速攻撃艇は沿岸防御の実施や海峡阻止作戦の支援に効果的であるように思われていた。1980年代後半、海上自衛隊は数種類の高速ミサイル艇をこれらの任務を実施する有力な候補として選択していた。

その中で、上陸作戦は別としても海上自衛隊の戦略的任務の1つは3つの海峡(対馬・津軽・宗谷)の支配だった。その支配は海峡をVladivostokのソ連太平洋艦隊のボトルネックに変える。海上自衛隊は長年に渡って、詳細かつ緻密な机上演習、科学的研究、同様に数学的分析や運用分析を実施してきた。その結果、高速攻撃艇が航空脅威に対して脆弱であり、戦闘状況における生残性は極めて低いと結論付けられている。

さらに、幸運にも生き延びた少数のミサイル艇にとって作戦成功の鍵となる敵艦艇のターゲティング情報が新たな問題となる。それは、多くの戦闘シナリオで海上自衛隊が擁する100機のP-3C部隊が充分なターテゲティング情報を提供出来なかったことで明らかだ。

同盟下での沿岸防御を遂行するため、海上自衛隊は3つのエリアに6隻からなる部隊を3個揃える計画を立てた。しかしながら、上述された研究・検討では(6隻のうち)約4隻のミサイル艇は射撃地点に到達する以前に殲滅されることが示された。残存する2隻は辛うじて敵戦闘艦艇に8基のミサイルを発射可能だが、基地に帰投する間に殲滅されるだろう。つまり6隻の部隊は1ソーティーで姿を消すことになる。監視及びターゲティング任務を実施するP-3Cも作戦中に大損害を受けることになるだろう。

海上自衛隊がこの種の小型高速攻撃艇への欲求は速やかに消え去っていった、1990年代初頭に3隻のハイドロフォイルミサイル艇を建造すると計画を停止してしまった。その後2000年代初めに、海上自衛隊は滑走型の6隻の高速ミサイル艇を建造した。しかしながら、後者の主任務は敵上陸部隊に対する対艦攻撃ではなく、北朝鮮による日本の沿岸水域に隠密浸透しようとする試みに即応するものだった。

勿論高速攻撃艇には、特に平時の沿岸哨戒のような、他の能力がある。中国海軍は野心的な高速攻撃艇の量産プログラムを開始したと思われる。しかしながら、高速攻撃艇は運用が最も難しい海上アセットの1つであり、また中国海軍が海上自衛隊のように緻密な分析に着手したかは疑わしい。

近年の中国海軍は野心的な水上部隊の建設プログラムを追求している。しかしながら、向こう10年余りの中国海軍水上部隊の勢力では、3個地方艦隊に対する中国海軍の要求全てを満たすことさえ厳しいだろう。水上戦闘部隊建設に時間がかかることは今日の米海軍を含めた世界中のあらゆる海軍にとって間違いのない現実だ。中国海軍は3つに分けられた艦隊を維持しなくてはならないため、水上部隊の建設に充分な水上艦艇を供給し、空母の護衛部隊を提供し、インド洋への展開を支援するには20年或いはそれ以上を要するだろう。とはいえ、我々は将来の中国海軍の能力を過小評価することも過剰評価することにも注意するべきである。

- end -

VII. NOTES

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