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Posted Jan. 24, 2017

Sea Control First

The Author: Vice Admiral Thomas A. Rowden, U.S. Navy

訳者前書

米海軍協会のProceeding Magazineで拾ったSea Control Firstを端折って訳すだけの簡単なお仕事。

Surface Force Strategyの公表を受けてProceedingに寄稿されたコメンタリー。執筆者は米海軍水上部隊/太平洋艦隊水上部隊の司令官、武器分散コンセプト提唱者の一人。Lethalの訳には非常に戸惑い、当面はリーサルで通す。

Typo, 誤訳の指摘は歓迎。- E-mail

目次

I. Sea Control First

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我が海軍が世界の何処であろうと戦力を投射するには、制海しなければならない。それでも、他のあらゆる海軍の作戦や我が国安全保障にとって制海が優先されるにもかかわらず、我々は時に、一般人だけではなく我々自身にとっての”この素晴らしくミステリアスなパワー”の定義に苦労する。この言葉を正しく理解することは重要だ、そうすることで我々は制海に戻る道を拓くことが出来る。

II. Talking about Sea Control

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海軍思想家はしばしば”制海権(command of the sea)”、あらゆる相手に対する一国の海軍の優勢についての一般的な条件としておく、について書いている。制海権は、対象となる時代や行使する国家に応じて地域的あるいはグローバルになる。また、それは平時にも紛争中にも存在する。それは史的分析には便利な用語だが、現代用語では使いにくい。

一方で”制海(sea control)”は一時的・地理的の双方で強いられる状況を示す。海軍が制海を確立すれば、そのエリア内で、あるいはエリアから可能な限りの全力作戦を実施出来る。制海を行使する際、海軍(もしくはその一部)は作戦に必須となる全ての空間、水中・水上・空中・電子、を支配する。

現代の聴衆に”制海”を使う際の課題は、聴衆がそれを海上紛争にのみ適切な用語とどの程度信じているかだ。海は標準状態では支配されることはなく、支配されていない海の占有を行使するか、戦闘によって他国の海軍を支配者の立場から追い出して支配を確立する必要がある。

筆者は対照的に、制海を脅威と所望戦闘目標を考慮した許容レベルのリスクの範囲で海軍部隊が全力の戦闘作戦を仕掛ける能力を持つ場合に存在する状況と提示する。制海は、戦闘作戦の発生や海上テリトリー(maritime territory)が占領される場合に実現されるか、優勢な海上部隊が万が一必要な場合の全力の戦闘作戦を実施可能と合理的に予想できる場合に想定される。

III. The Decline of U.S. Sea Control

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制海は冷戦中の米ソ間の争点だった。両国は必要な場所・時に制海を確立するために争った。ソ連崩壊時に、米海軍や彼らの制海の要求を邪魔するものはなくなった。如何なる国家も海上やその上空を支配する米国の能力に深刻な脅威を与えることは出来なかった。

この海上支配の地位から、米海軍は比類なき戦力投射部隊に進化した。艦上機は最新の防空網を持たない国家の沿岸部に近づき、制約なしに大規模空爆が可能になった。空母の防空は、冷戦中の複雑で多層的モデルから、空母に随伴護衛する最新鋭のイージス駆逐艦・巡洋艦といった”riding shotgun (助手席に乗る人)”に大きく頼ったシンプルで凝縮した概念に向かった。見通し線外の水上戦闘は、Arleigh Burke級 Flight IIA 駆逐艦が水上戦闘用のミサイルを持たずに艦隊と戦い、ソーナー員は潜水艦のタービン発電機をパッシブ音響ディスプレイで特定することより12.7mm機関銃や乗船チームの担当として熟達したように、水上部隊から航空団のものとなった。言い換えると、水上部隊の制海 - 統合防空(IAMD)・水上戦・対潜戦 – への参加を含めた主要任務分野は、海上治安や精密打撃よりも優先順位が下がった。

冷戦終結時、一層のリスクが予想され、部隊の集中は容認され、艦隊は小さくなり、作戦冗長性(目標達成の多様な方法)が失われた。しかし時代は変わった。グローバルな安全保障環境は水上海軍が再び制海に専念することを求めている。潜在敵の新たなグループが我々の制海権を拒否しようとしているからだ。

IV. The Imperative for Sea Control

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冷戦終結以降の海軍の通常抑止力についての国家のセオリーは、大抵は地域の平和を乱しがちな中小国を対象とした強要(compellence)の一種となっていた。このセオリーの下では、地域的な侵略に対応するだけの十分な時間があり、それを保つことで米海軍が反攻する大部隊がどれほどでも集結を可能にするという展開部隊による安心感があった。抑止は拒否や懲罰があまり問題とされず、その後に続く脅威が注目された。このアプローチはしかし、比肩ないしそれに近い相手、同様に地理的に有利な地域の脅威に対して有効かは疑わしい。幾つかの国家は、相当狭く限定された目標の支援において無視出来ない戦闘力を発揮することが可能な比較的遠方(near-abroad)での作戦を実行する能力がある。この種の短期で激しい作戦は、一部の地域の軍事力のバランスが変わる中でますます危険なものになっている。これらの状況は米国の権益を保護する我が能力に深刻な課題を突き付けるだろうが、我々はそれらに対処するため前進している。

V. Impact of Distributed Lethality

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制海のために前方に派遣される部隊は、パワフルであり、発見が困難で、沈めるのが困難で、リーサルでなければならない。これらは、2015年1月にProceedingの”Distributed Lethality (武器分散)”で紹介されたコンセプトである武器分散の基盤的な信条だ。

武器分散では、水上部隊の各ユニットは攻勢を担当するものとされ、既存の兵器やセンサーの改良によって部隊の攻勢能力を向上させる。そこに存在することで、リーサルで、強靭で、重武装な水上艦艇は戦うことを可能とし、侵略者に対して彼らの当面かつ限定的な目標を拒否し、初期の時点でそうした侵略のコストを引き上げる。

我々はこの2年で武器分散の実現に大いに前進した。これには、リーサルに統合された火器管制ループにネットワーク化されたセンサーや兵器によって対空戦(AAW)能力を再び外周航空戦(OAB)に押し出す初の海軍統合射撃管制対空システム(NIFC-CA)を備える空母打撃群の展開を含む。この能力は、我々に敵爆撃機が兵装を発射する前に撃墜し、大部分が防御戦(AAW)になってしまったものを再び攻勢に戻す選択肢を与える。

我々は、Tomahawkミサイルの対艦バージョンへの投資・成功したSM-6対空ミサイルの水上交戦のテストによって我が対艦兵器のリーチを拡げている。広範囲の高精度なターゲティングデータを提供する我が能力が劇的に向上したため、これら兵器の長大な射程は肝要となる。また高精度の追跡は数分足らずで得られるため、利用可能なターゲティングが得られている際に飛翔経路(downrange)を移動する兵器の撃破が可能なことは重要だ。

対潜戦(ASW)において、我が艦艇はAN/SQQ-89(A) V15 信号処理システムを装備して、冷戦中の潜水艦ハンターが持っていた範囲の水中視界で現実世界の目標とのコンタクトを維持している。加えて、多機能曳航アレイの普及は、アクティブ送信機が受信アレイから切り離し可能で、ターゲティングデータの配布手段を提供し、我が艦艇を被探知のままにすることを可能にするネットワーク化・共同ASW環境を作り出している。

我が艦艇の攻勢的なリーサリティーを向上させる取り組みは大いに注目を集めているが、防勢的な強靭性 - 競合環境で敵と間近に対峙する能力 – が武器分散の重要なパートだ。特に2つのシステムが我々をこの方向に動かしている。1つは、リーサルな対空ミサイルと実証されたPhalanxシステムを組み合わせたSea-RAMだ。このシステムは、地中海に展開して悪化する脅威に対抗する我が駆逐艦に迅速に配備された。もう1つは間もなく配備が開始されるESSM Block IIだ。これはクアッド・パック(quad pack)VLSを含めた各種システムから発射可能でアクティブシーカーを持つ対空ミサイルである。

これらの対策のポイントは、敵に我が艦艇の攻勢力や追加されたミッション・キルの(命中可能な兵器で判断した)困難さを考慮させることにある。両方とも、通常抑止の一層効果的なブランドを確立させるために必要である。

V. Closing the Sea Control Gap

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今日我々が持つ制海能力と将来必要となる制海能力の間には”ギャップ”がある。我々は何処にギャップがあるのか、それらに対処する計画(米国防産業と共に)を有していることは良いニュースだ。我々が精力的に取り組んでいる分野には以下がある。

巡洋艦近代化及び長期防空指揮能力: 水上部隊による比類ない防空指揮管制(C2)能力の提供を確保することは依然として非常に重要である。我々はこの基盤的能力をどのように更新するか検討しつつ、同時に巡洋艦を改修し、艦齢を延長している。

攻勢的水上戦闘(SUW): 我が水上艦艇は見通し線外(OTH)の水上艦艇を積極的に狙い、交戦可能でなくてはならない。我々は選抜された両用戦闘艦艇の更新を念頭に置きながら、同時にLCS OTHミサイルプログラムにこのアプローチを適用している。

F-35/水上部隊の統合: F-35B, Cは対空・水上目標の追尾情報を艦隊に提供する。戦術的に適切な方法でF-35から目標を引き離して水上艦艇を含む他のプラットフォームがそれらと交戦を可能とすることが、一層分散し、リーサルな部隊の成功の鍵である。

情報・監視及び偵察(ISR): 水上部隊には専門の中高度・長距離無人ビークルが必要となる。さらに、ISR状況図(picture)とネットワーク化され、水上部隊の指揮管制下にある無人水上艇は、アクティブ・パッシブ双方の電子戦や音響データを提供し、著しく部隊のISRの拡張が可能である。ACTUV (ASW Continuous Trail Unmanned Vessel)プログラムはこれを確約する。

戦闘管理: 我々はプラットフォーム・水上戦闘群(SAG)・打撃群・艦隊レベルで戦闘システムを完全に統合しなければならない。比肩ないしそれに近い相手との現代戦闘は、我々に兵器を温存し、大量の備蓄弾薬と共に国家からの攻撃に対して賢明に利用されることを確固とするように要求する。効果的に成功する確率が高いハード・ソフトキルの最善のコンビネーションを決定するネットワーク化され、拡張可能な戦闘管理機能が求められる。この機能は危地にある単独艦を支援し、次に水上戦闘群・打撃群の共同作戦の支援に高め、艦隊全体の活動の誘導までが可能でなければならない。

次世代ASW: 潜水艦発射対艦ミサイルは、目標に接近し、魚雷を命中させる能力が過酷に争われるだろうことから、敵水中部隊が選択する可能性がある兵器になってきている。戦域ASWの大幅な進歩を考えると、水上部隊が要求するのは、飛翔経路に向かう兵器を迅速に撃墜するために、確実に瞬時目標データに基づいて行動可能で、潜水艦が艦隊の照準情報の取得が可能になる前に直ちに防勢状態にするペイロードがある兵器である。

低コスト/高性能弾薬: 我々が2つの課題 - (1) その産業基盤の多くを兵器備蓄の生産に振り向けられるハイエンドの敵 (2) 兵器とその目標とのより良いコスト調整の必要性 - に対処するため、(より)低コストで、(より)高性能な弾薬に向かって前進することが必須だ。レーザー兵器は選択された目標に対するこれらの課題双方の対処に有望である。またレールガンの技術は遥かに高価なミサイルに対して比較的低コストの投射体で対抗することに見込みを与える。さらにVLSからの発射に適した低コストの”quick-strike”対地兵器は、我々により低コストの兵器で軽防御の地上目標を破壊する能力を与えるだろう。2016年10月、USS Nitze (DDG 94)がフーシ派のレーダーサイトを狙った際、比較的短距離からTLAMミサイルを使用した。そこそこに防御された目標に適したもう少し安価な兵器が有用だっただろう。

マンパワーや訓練への投資: 我々は最高かつ優秀な人材の維持や現実的な訓練システムで個人また部隊の訓練に投資する必要がある。これらのシステムには複合的な作戦環境を模擬する能力がなければならない。我々の集団の核である我が人材は最高の賞賛に値する。また我々は、彼らに危地へ向かうことが求められるなら、成功に向けて彼らを準備するリソースを提供する必要がある。

V. Conclusion

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武器分散は、米海軍の制海能力を向上し、米国の通常抑止を拡大する。戦術・人材・よりリーサルで分散した部隊を配備する手段に投資することは、我々が他の海軍作戦で必要とされる場所で、我々が海を利用することを拒否する敵の能力と競合する時に制海を確立することを可能にする。

- end -

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