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Posted Jan. 24, 2017

Surface Force Strategy

Return to Sea Control

Published from Commander, Naval Surface Forces

訳者前書

2017年1月9日に公表された米海軍水上部隊のSurface Force Strategyを端折って訳したもの。また、パンフレット化されたPDFも同時に公表されています。パンフレット版にあるSurface Forceの項はウェブ版にはなく、パンフの目次にも同項の記載自体はない。まぁいいやと思って省いた。

武器分散コンセプトの始まりについてはDistributed Lethalityを参照。

Expeditionaryは米海兵隊の公式日本語訳は機動展開、ただし彼ら自身も遠征と訳すことも多く、馴染みもあるので後者の訳を採用した。

Typo, 誤訳の指摘は歓迎。- E-mail

目次

I. Preface

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我々はシーパワーの新たな時代に突入している。米海軍の四半世紀に渡るグローバルな海洋支配は大国の力学の復活に試されている。米国及びその同盟国の安全保障上の権益は、ますます比肩に近い競合相手・対立的な外国政府・良く装備された非国家主体の武装集団の挑戦を受けている。我々は、この70年に渡って我々の世界を形成してきた国際的規範を軽視する可能性があるこれらの国家・非国家主体の挑戦に駆り立てられている。歴史は、自国の海軍が変わっていく安全保障環境の挑戦に適応出来ない時に、海洋国家の安全保障や繁栄が危ういことを教えている。欧州からアジアに至る歴史は、グローバルパワーとなった国家が、時の経過と共に或いは決戦で、シーパワーの欠如によってその地位を譲った例で溢れている。

今日の主導的な海軍力である我々は、我が国家のシーパワーの優勢を失うわけにはいかない。米海軍は海軍作戦部長(CNO)の指導の下でグローバルな挑戦に対応し、また”海上優勢を維持するための構想(Design for Maintaining Maritime Superiority)”の指針を受けている。“海上の、また海上からの海軍力の強化”の求めに応えて。米海軍水上部隊は”水上部隊戦略(Surface Force Strategy)”を提出する。この戦略は、制海(sea control)への回帰と随意に制海を達成・維持する作戦上・組織上の原則である武器分散(Distributed Lethality)の実施について説明している。制海は我々が海軍としてやるべき他の全てのことの前提条件だ。武器分散は戦闘空間に跨る協力・統合を後押しする艦隊構想を強化する。武器分散は水上部隊の攻勢・防勢能力の向上を求めており、また近代化や将来部隊に向けて熟慮された資源投資を導く。水上部隊の全域に一層の能力を付与することは平素・戦時に地域司令官にとって一層の選択肢をもたらす。

この戦略で意図する成果を達成するため、我々は部隊を制海の実現維持に再び専念させ、最良かつ最も聡明な人材を保持し、先進的な戦術訓練を開発提供し、攻勢兵器・センサー・ハードキル/ソフトキル能力を我が艦艇に装備しなければならない。それらの目標を追求することは、我が能力や資質を強化して、さらに攻勢的なものとし、多様な攻撃を打倒する。より強大な抑止を提供することで、我々は侵略の初動を制止する。またそれが及ばなかった時には、敵対行動の停止を強要し、次の侵略を不可能にするような大きな損害を負わせることで、同種の攻撃に対応するだろう。

T.S. Rowden
Commander, Naval Surface Force

II. Responding to a Dynamic World

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水上部隊戦略の目的は、遠方で本土を守り、グローバルな安全保障を構築・維持し、米国の国力を投射し、決定的な勝利を得るために、任意の時や場所で制海を達成・維持することにある。我が国の安全保障や繁栄にとって重要なことは、我々がグローバルに海上機動し、他国が米国や同盟国の権益に対抗して海上を利用することを阻止する技量を維持することだ。さらに、制海はあらゆる空間へのアクセス・抑止・戦力投射・海洋安全保障といった海軍の目的を達成するための必須条件である。

II-a. Pressures on the Global Order

米国は海洋国家である。また我々の繁栄は直接的に米海軍がもたらす海洋の自由と繋がっている。ローエンドの海賊から良く装備された非国家主体の武装グループ、ハイエンドの国家主体の海軍に拡がる脅威が、水上部隊が対抗し、求めがあれば打倒に備える挑戦を突き付ける。

グローバルな競合者は、最新鋭の対艦弾道弾や巡航ミサイル、統合・多層センサーシステムや照準(targeting)ネットワーク、長距離爆撃機、先進的戦闘機、潜水艦、機雷、先進的な統合防空、強化された電子戦、サイバー・宇宙テクノロジー、非対称戦術といった海上拒否テクノロジーの配備や拡散を通じて、海洋移動の自由の阻止を狙うだろう。これらの能力は、前方で活動する我々の能力や意志に対する友好国や同盟国の信頼を低下させるために、米軍のリスクを上昇させることを狙っている。水上部隊は、許容レベルのリスクの範囲内で競合環境での確信に満ちた作戦を可能にする意義ある形で、適応しなくてはならない。対処する水上部隊にとって最重要の挑戦は、米国に重要海域にアクセスされることを抑止・拒否するために我々の競合者の進んでいくテクノロジー・システム・ネットワークである。これらのテクノロジーは海底から宇宙に及び、多軸・多次元の挑戦を抱えている。

これらの先進的な海上拒否テクノロジーに対抗するには改良された戦術、水上部隊の兵器・プラットフォーム・センサーの増分適応(incremental adaptations)、これらのシステムを運用・維持・利用する訓練を適切に受けた適正な人材を必要とする。これらの要求を達成するには、我々はどのように水上部隊を編成し、準備し、維持するかについて別々の考えた方をしなくてはならない。

II-b. Distributed Lethality

武器分散コンセプトは我々の任意の時や場所で制海の目標を実現する。それは、個々の艦艇の攻勢・防勢能力を向上し、地理的に広く拡散した分散(dispersed)陣形でそれらを動かし、分散火力を生み出すことで達成される

武器分散には戦術・作戦レベルに大きな特徴がある。戦術レベルでは、ユニットのリーサリティーを向上し、軍艦の探知・照準に対する感受性を低減する。作戦レベルでは、任務志向的で、広域分散作戦能力を持つ攻勢的な任務に応じた最適な部隊(adaptive force package)のエレメントとして軍艦を利用する。任務に応じた最適な部隊は、作戦指揮官に脅威レベルに基づく部隊能力の調整機能を与える。この利用要領は敵の照準に不確実性・複合性を挿入するために、戦闘空間を拡げ、また隠密と欺瞞を可能にするようデザインされている。

II-c. DL is composed of three tenets
あらゆる軍艦の攻勢的リーサリティーの増大

我が艦艇は非常に有能な敵と戦い、打倒するために必要な手段を装備しなくてはならない。適正比率の能力と戦術と組み合わせた時、このコンセプトは信頼に足る戦闘力で敵を抑止し、作戦空間に挑戦し、後続の統合部隊の作戦上のアドバンテージを獲得することが可能な水上部隊を実現する。

地理的に分散した攻勢能力

多くの戦略家が米国の長大な作戦線は脆弱と指摘する、しかし武器分散は地理を長所とする。艦隊の戦闘力を拡散し、目標を多数の攻撃軸からのリスクの下に置き、敵がより多くの目標を守るように強いる。これは、敵に多様な空間からのリーサルな脅威に対する考慮を強制することで、敵の意思決定サイクルや資材投資スキームに挑戦する。

戦闘を継続する資源の適正比率を艦艇に付与する

我々が、宇宙・サイバー・空中・水上・海中空間からの攻撃を潜り抜けて戦う技量を増大させるには我が艦艇の防勢的な強靭性をアップグレードしなくてはならない。進化したネットワークや戦術を通じて艦艇間の向上した相互防御を利用しなくてはならない。最後に、我々は戦闘による損害を受けても戦い、低下した指揮管制環境での作戦維持が可能でなければならない。

III. Improving the Combat Capability of Surface Forces

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我々は、戦術(tactics)・人材(talent)・手法(tool)・訓練(training)の4つの柱(T4)からなる枠組みによって、水上部隊を最大限に編成し、訓練、装備する。この枠組みは、水上部隊の能力(capability)と資質(capacity)を強化し、あらゆる戦闘空間へのアクセスの維持を達成するようデザインされている。これは海上優勢を維持するための構想と歩調を合わせ、この構想の一連の取り組み全てを強固にする。この包括的で組織的なアプローチは、制海及び戦力投射のために、短期(2017-2012), 中期(2022-2030), 長期(2013-2040)に作戦従事艦艇を供給する方法(way)と手段(means)を組み合わせる。

III-a. T4 Organizing Surface Forces For Enhanced Combat Power

戦術: 我々は戦術的卓越の獲得に努力し、我が国に対する制海の提供に我々自身を再び捧げなくてはならない。海軍水上及び機雷戦開発センター(SMWDC, スミディクと読む)の下、我々は迅速かつ一貫した戦闘の開発のため、思想と行動を統合する効果的な戦術を開発・教育していく。また、我々は自己の戦術の継続的な批判的分析によって我々の戦士達の専門知識を深め、日常の艦内生活に戦闘及び戦術の優れた手腕を根付かせる。

人材: 我々はエンゲージド・リーダーの強力な影響力を活用し、戦闘戦術専門家の重要性にコミットしていく。我々は、将来に向けて奥行き・幅広さ・経験を構築するために我が水上部隊内の非凡な人材を管理する。明日の挑戦は、我々に最も創造的で影響力のある人物と交流し、最も優秀な人々を呼び込んで維持することが求められる。

手法: 我々は、水上艦艇の戦闘能力を向上させるため、現行の艦艇建造プランの他に、将来艦隊をデザイン・取得・構築する。我々は優先順位のロードマップを適用して、長距離攻勢兵器の我が艦艇への搭載と戦闘における強靭性向上の投資を同期させる。

訓練: 我々は現実的で統合された訓練に投資し、複合的なシナリオで軍艦を運用・維持する困難を再現する環境を作り出す。これは水兵が戦闘遭遇(a combat encounter)中に任務を遂行する戦闘練度と自信を獲得することを可能にする。

III-b. Surface Force Investment Objectives

制海を達成するために武器分散を実行するには、立案(planning)・計画(programming)・予算編成・実施プロセスの巧みな管理が求められる。優先付けと調整がされた投資プランは多様なリソースの提供者に計画決定を通知する。水上部隊投資プランは、新たな”空間本位(domaincentric)”の計画プロセスによって一層必須のものとなっている。このプロセスは空間を跨いで、また空間内に能力や機能を割り振る。我々は動的(kinetic)・非動的(non-kinetic)な効果を得るには水上・海中・空中・地上・サイバー・電磁気空間で作業しなくてはならない。水上部隊は戦術・人材・手法・訓練の柱に跨る4つの投資目的を持つ。

1つ目の投資目的は、水上艦艇の攻勢火力の増強である。我々は既存兵器の近代化を継続し、改良された艦載対艦・艦対空・艦対地ミサイルの取得を拡大する。これらの改良は、駆逐艦/巡洋艦(CRUDES)部隊・沿海域戦闘艦(LCS)・両用及び遠征部隊に適用される。また、我々は長射程対潜兵器の能力拡大も進める。水上部隊も、制海やあらゆる空間で既存の・新たな脅威の打破を実現するため、海軍統合射撃管制対空システム(NIFC-CA)のような先進型キル・チェーンの開発・配備を継続しなければならない。

2つ目の投資目的は、海軍の長期建造プラン及び近代化戦略の支援である。これには設定された部隊組成目標を達成する長期近代化・新規建造を通じた強化先進型の統合防空(IAMD)能力が求められる。また、この目的には巡洋艦近代化プログラムによるCG 47 (Ticonderoga)級の艦齢延長によって既存の防空指揮能力の向上も要求される。向上したLCS・フリゲイト・両用艦艇のリーサリティーや能力もまた将来の成功の基礎になる。

2030年までに、LCSやフリゲイトは展開する水上戦闘艦艇の半数を占めるようになる。これらの艦艇はリーサルで、高性能で、有人艦らしく(manned appropriately)なくてはならない。また優先順位は、近代的で進化する脅威への艦隊の信頼性・継戦能力(sustainability)・妥当性を確固とする水上・両用戦闘の維持・近代化も焦点とする。

3つ目の投資目的は、戦闘空間認識(battlespace awareness)の向上である。これには、任務計画立案ソフトウェア・戦闘指揮官用の戦闘管理ソフトウェア・部隊/集団(unit and force)レベルの電波管理ツールによる戦闘システムの能力の継続的な開発を含める。この包括的目的の取り組みもまた、水上電子戦改良プログラム(Surface Electronic Warfare Improvement Program, SEWIP)のような先進的な電磁操作戦(EMW)テクノロジーの利用を意図している。

* 電磁操作戦の訳は米海軍が訳した「21世紀の海軍力のための協力戦略」から。

4つ目の包括的投資目的は、水上部隊全体での高速学習の実施である。これには水上戦と遠征戦の訓練プランを切れ目なく整えることが求められる。また、この目的には兵器システムデザインのフィードバックを提供し、戦術・技術及び手順(TTP)を評価するオペレーター介在型(operator-in-the-loop)で、戦闘システムのテストベッド機能を持つバーチャル戦闘研究施設への将来投資を含む。

これら4つの投資目的は多様なリソースの提供者や複数の主要な予算計画に跨っている。水上部隊戦略の投資順位は親密なパートナーシップを通じて、戦術・訓練・人材・訓練の4つの柱全体を構築し、武器分散コンセプトにある任務能力を現実のものとし、ひいては完全な水上部隊の戦闘力を利用する。

IV. Reinvigorating Sea Control & Power Projection

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武器分散は拒否・競合環境に突きつけられた戦術・作戦・戦略的な挑戦に対する効果的な対応を提供する。制海の作戦概念は指揮官が敵を欺瞞し、狙い、撃滅することを可能にする戦術訓練や能力を軸としている。これらの作戦機能は地域司令官に紛争様相の全体で水上部隊を用いる選択肢を提供し、制海に対する我々のコミュニティのアプローチの基本的なパラダイムとなる。前方即応の通常水上部隊は侵略の抑止、侵略者の目標達成の見込みの拒否、制海・戦力投射の確立と維持が可能でなければならい。

IV-a. Deter Aggression with Forward and Ready Conventional Forces

我が国を遠く離れて作戦を維持する実力は米国に明確なアドバンテージを与える。信頼するに足る戦闘力を背景にした継続的な前方プレゼンスは侵略を防ぎ、地域危機の全面戦争へのエスカレートを抑制することが可能である。

水上部隊は恒常的に世界中に分散している。水上艦艇は移動の自由を守り、グローバルな貿易と経済成長のためにシーレーンを確保し、米国の重要な権益を保護し、敵が我々に対抗して世界の海を利用するのを防ぐ。武器分散は最も必要となる場所で信頼に足る戦闘力を提供して指揮官に選択肢を与える。

よりリーサルで、より広範囲に分散した部隊は、敵の監視や照準を困難にして敵のアドバンテージを奪う。同様に、水上部隊は敵の次の侵略を不可能にし、敵対行為を停止させ、武力を最終目標の達成が可能な手段として見做すことがなくなるほどの大損害を負わせる位置から攻撃する能力と資質の双方を持つことになる。

IV-b. Deny an Aggressor Prospect of Achieving Objectives

海上拒否テクノロジーを利用する国家は前方展開部隊の抑止力の価値を減らそうとする。これは米国がパートナーや同盟国に与える保証に対して負の影響がある。武器分散は効果的に対応して海洋拒否テクノロジーを利用する侵略者が求める利益の見込みを拒否する。また、敵の意志決定にも影響を及ぼし、彼らが国益の拡張手段として洋上部隊の利用を選択することで求める利益を拒否する。武器分散は水上部隊の戦場(playing field)を拡散し、敵の照準を困難にし、要求された場所での戦力投射に有利な環境を作り出す。

IV-c. Establish and Maintain Sea Control

武器分散の目的は制海を確立し、また敵が同じことをするのを防ぐことにある。武器分散のコンセプトや編成原則は我々の任意の時と場所で海洋空間を制する能力を持った水上部隊を提供する。水上部隊には強化された防御システムが供給され、信頼に足る水上発射型スタンドオフ兵器が装備され、競合環境及び低下した通信環境の双方で高い生残性を備える。また、海上テリトリーの確保を支援し、後に続く戦力投射のために部隊を送り込むことが可能になる。

制海は常時のあらゆる海の制海権(command of all the seas)を意味しない。むしろ、他の目標を可能にし、それらの目標を達成するために必要な期間に渡って海域を保持するために、求められる時期・場所で特定海域の制海を付与する能力や資質である。水上部隊は、この物資の自由な移動のためにシーレーンを確実に開かれたままにし、米国やパートナー国家の権益を守るための必須条件となる重要な役割を果たすことが可能だ。

IV-d. Project National Power

武器分散は抑止のためにシーパワーの全エレメントに適用され、危機・侵略・紛争に対応し、多数の戦域で侵略を拒否あるいは打破する戦力投射の用意を整え、洋上から奇襲して目標を打撃する高い技量を提供する。

V. Conclusion

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水上部隊は戦略投射する統合部隊のために任意の時と場所で制海するため、洋上で、また洋上から信頼するに足る海上戦闘力を我が国家に提供する。我々は、敵部隊を欺瞞し、狙い、撃滅する戦術・人材・手法・訓練を我が艦艇に提供し、我が軍艦を動かすクルーにこの戦闘精神を浸透させて、これを行う。

武器分散は我が艦隊を変革している。この戦略は今日、明日、将来に戦い、勝利する水上部隊を整備し、編成し、訓練し、装備するために行動すべき理由である。

- end -

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