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Posted May 29, 2015

JMSDF & NGOs

A Review of the Great East Japan Earthquake

The Author: Captain Takuya Shimodaira, Japan Maritime Self-Defense Force

訳者前書

米太平洋軍災害管理/人道支援センターが編集しているLiaison Magazine Vol. VII 2015から拾ったテキストを端折って訳すだけの簡単なお仕事。

仮訳題: 海上自衛隊とNGO: 東日本大震災を振り返って

執筆者は下平拓哉1等海佐。掲載当時は海上自衛隊幹部学校 戦略研究会メンバー, 米海軍大学インターナショナル・フェロー兼連絡官, 同大学の中国海事研究所(CMSI)の一員。

内容的には、THE JMSDF'S RESILIENT POWER FOR CIVIL SOCIETY のダイジェストみたいな部分も多いので、訳の下敷きにしています。

構成はほんの少し変えてあります。

Typo, 誤訳の指摘は歓迎。- E-mail

目次

I. はじめに

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Barack Obama米大統領は、2014年の一般教書演説で、アジア太平洋地域の重視を継続し、同盟国を支援し、また将来の一層の安全や繁栄を実現し、災害で被害を受けた地域に手を差し伸べることを宣言した。 [01]

そうした被災地での支援の手は、2013年にフィリピンを襲い、未曾有の被害をもたらした台風30号(アジア名Haiyan/比名Yolanda)の後で見られた。米国は、Damayan作戦を開始 、[02] USS George Washington (CVN 73)を旗艦とする空母打撃群(CSG)を派遣して、初動救援活動に当たった。

日本にとっても過去最大の国際緊急援助活動となり、護衛艦「いせ」(DDH 182)・輸送艦「おおすみ」(LST 4001)・補給艦「とわだ」(AOE 422)およびヘリコプターなどを主力として派遣し、救援活動に加わった。

日米がフィリピン人の支援に協力する姿は、2011年の東日本大震災で日米同盟を深化させたトモダチ作戦を想起させた。それは、第二次大戦以来、日本を襲った最大の災害だった。東日本大震災への対応は日米同盟を主軸とした多様なコアリションの機能統合が示された。日本語でtomodachiは「互いに信頼しあう親しい友人」を意味するように、日本と米国は、強固な同盟であり友人として、アジア太平洋地域の安全と繁栄を維持する将来の平和を実現するため、共に働かねばならない。しかし、海上自衛隊が、そうした将来を達成するための自己の責任を果たすには、どのような役割を引き受けるべきだろうか。

アジア太平洋地域では、頻発する大災害に対処する際の多国間作戦が必須となっている。海上自衛隊にとって今出来る最重要の安全保障活動の一つは、初期の人命救助が最重要となる人道支援/災害救援(HA/DR)である。海上自衛隊が貢献するには、脅威を及ぼさない形で自己の経験や能力を共有するために、アジア太平洋地域各国との信頼関係を構築することである。

東日本大震災の重要な教訓の一つは、適切かつ時期を逃さずに、現在喫緊となっているニーズを判断するために、地方自治体とスムーズに調整することの重要性である。[03] 本稿では、既知の(民軍間の)ギャップを解決する可能性がある解答を提示する。多国間環境で民間と軍の長所を結合することで、どの組織にも提示できるはずである。

本稿は、執筆者がトモダチ作戦において最新鋭護衛艦「ひゅうが」(DDH 181)に、第一護衛隊群首席幕僚/作戦主任幕僚として乗艦し、被災地での日米共同作戦の調整責任者だった原体験から来ている。また、発言やリコメンドは、東日本大震災救援時の成功や難題に基づくものである。

II. 東日本大震災時のNGO

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東日本大震災のもたらした損害は想像を超え、政府機関にとっては対応が究極的な難題となった。そのような状況において、これまでに人道支援活動に参加した際の知識や経験を得ていたNGOが、迅速かつ効率的な支援を提供する原動力となった。

NGO・日本政府・経済界が協力して創設した国際人道支援組織であるジャパン・プラットフォーム(JPF)は、第一には、国内のNGOが国外での災害救援において、迅速に緊急支援活動に加わることが出来るように、彼らに対して財政支援を提供している。

34のNGOと提携するJPFは、東日本大震災の救援時に良く機能した。大規模災害救援を実施してきた彼らにとって、十分な資金や活動拠点もないまま初の国内活動となった。

発災後3時間ほどで、JPFは、メンバーのNGOや民間企業に救援活動開始を通知した。第一陣は5時間で東北に進発し、6時間で最初の寄付がJPFに寄せられた。JPFには想定外の早さで寄付が集まり、一ヶ月で20億円を超えた。JPFは最終的に一年で、約70億円の寄付を3,000の企業、4万人の個人から受け取っている。また、その80%がメンバーのNGOの救援活動を通じて使用された。

国内での災害救援を主導しているシビック・フォースも、迅速に対応し、状況把握のためにヘリコプターを被災地に派遣した。その後、こうした組織は、物資配布、炊き出し支援、災害ボランティアセンターの運営など多種多様な災害救援活動を共同で実施した。 [04] シビック・フォースは、行政・経済界・他のNGOや非営利団体と協力して、緊急対応システムを構築しており、それが災害時に「素早く多くの命」を救助することを可能にしている。その原則は、このシステムに関わるすべての団体が、人材・物資・資金・サービスを調整・協力しながら提供することである。特に、水・食糧・衣類・日用品(物資)に関して経験豊かなNGO(人材)との調整や、ヘリコプターでの救援・トラックでの輸送支援・保健医療支援・仮設住宅などのロジスティック支援(サービス)を提供することを狙っている。

シビック・フォースの創設者である大西健丞は、知識と経験に加えて情報・マンパワー・資金やリソースを組織化するプラットフォーム機能を有するシビック・フォースが海上自衛隊に代わって緊急物資を集結する主体になれると主張している。また、シビック・フォースは、物資・衣類・シェルターを被災者に提供するために、1,000余りの国内企業と提携している。 [05]

III. 海上自衛隊の強靭さ

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2011年6月4日、北澤防衛大臣(当時)は、シャングリラ対話において参加国に対して、東日本大震災における支援への謝意を表明、また、原子力事故のような不測の事態に対応するため、防衛当局間の協力に関する協議を持つことを提案した。 [06] これは、日本が、アジア太平洋地域で、より積極的な役割を果たすことが可能と期待される分野である。同地域内で緊急救援が必要とされる中、多国間協力の必要性が増している。日本としては、責任ある大国として、特に平素から同地域の平和と安定の維持を支える能力を提供しなくてはならない。

海上自衛隊の能力的な限界があったにも関わらず、民間との協力が大規模自然災害後の未曾有の状況から立ち直らせた。物資不足の原因となる救援の遅れは、正確で信頼できる情報の不足による不安を助長する。したがって、海上自衛隊としては、最大限に、経験を積み重ねてきた民間との協力体制をつくることが必要になる。海上自衛隊は民間との協力を通じて、被災者の実際のニーズを主観的に把握し、適切な支援を提供し、可能な限り正確な情報を提供しなくてはならない。以下に述べる海上自衛隊の強靭さは、そうした民軍関係(CIMIC)に寄与するだろう。

* 訳注, CIMICを民軍関係と訳すのは抵抗あるけど、ひょっとすると執筆者はあんまり拘ってないんじゃないかな。THE JMSDF'S RESILIENT POWER FOR CIVIL SOCIETYでは民軍関係をCIMICとしているし, The JMSDF in the Age of Multilateral CooperationではCIMIRだかんね。

訳者が拘る理由はコチラ - 国際平和支援活動(PSO)における民軍関係 - CMO、CIMIC、CMCoord、ICRCガイドライン - (国会図書館)

III-a. 海上拠点の提供

海上自衛隊が米海軍・NGOとHA/DRを実施する際に派遣する第一のアセットが沿岸プラットフォームや海上拠点である。 [07] 大規模災害における混乱時には、地方自治体の機能喪失、沿岸施設の破壊、被災地へのアクセスが制限されており、海上からのアプローチが極めて有効である。東日本大震災の経験から、海上拠点を有することが島嶼・半島・冠水や漂流物によって孤立した地帯などへのアクセス確保に有効であることが証明されている。こうしたアクセスがあって、海上自衛隊は初動の人命救助に全力を挙げることができた。特に、ヘリコプター護衛艦「ひゅうが」は日常生活の必要基盤を搭載して活動できる。これは災害時には最も重要な機能である。これは、HA/DRの初動時において、指揮管制(C2)センターとして活動に関わるすべての団体を調整する際に極めて有効だった。また、自衛隊のみならず警察や消防のヘリコプターの航空基地としても活用でき、NGOの連携にも役立つ。 [08]

III-b. 情報共有

大規模災害時には、混乱のために、至急に必要な調整部門の立ち上げに非常に時間がかかる。これは、初動において大きな不利である。したがって、海上自衛隊の第二の役割は、その指揮管制能力による他のアクターとの情報共有となる。これは海上自衛隊にとって、多様な知識や能力を有する米海軍・NGOの迅速な初動を万全し、それによって、被災者からの正確な情報を掴むために極めて重要である。つまり、海上自衛隊には初動に全力を挙げ、可能な限り迅速に状況調査(fact-finding)を実施することが決定的に重要だということである。このためには、要望のある全アクターに連絡幹部を派遣しなくてはならない。また、こうした情報を救援活動中のすべての組織に拡散することも、海上自衛隊には可能である。

III-c. 海上自衛隊の現場力(gemba power)と地域力(chiiki power)の融合

海上自衛隊の作戦能力は、即応性・柔軟性・自己完結性・機動性といった海軍力の特性を生かし、災害救援活動で活動する非軍事組織と協力することで、いかんなく発揮される。そうした力はいわば現場力(gemba power)と呼べるものである。現場力と同時に、被災地コミュニティーの潜在力、すなわち地域力(chiiki power)を活性化することが重要となってくる。行政活動へのボランティア参加や行政機関と市民団体の協力活動を推進する原動力となっている地域力が、今日ますます注目されてきている。

* 訳注, gembaやchiikiが日本語で何を意味するかの解説は結びで出てくるけど、訳してる間に埋没したw

軍とは中立を保ちながら人道支援を提供するNGOには、そうした現場力と地域力を融合することが期待されている。しかしながら、現実世界を考えると、軍との協力関係は避けられない。NGOは、初動の早さ・膨大な経験などのアドバンテージを有する。彼らは、災害救援時には、医療関係者や建築士のような訓練されたスタッフの派遣、救援計画策定・救援物資輸送のためのヘリコプターや船舶の手配、軍が提供できない部分のカバーなどに貢献できる。軍が救援活動から復興活動に移行する際にも、NGOが地域力と現場力を推進することで被災者支援を続けられる。

III-d. 訓練

明記されるべき最後の点は、平素から備える軍や、その能力の有用性である。軍の有用性が、本来の役割である戦争や国際的な安定化まで広範囲に及ぶ一方で、HA/DRは本来の役割ではなく、軍単独で解決されるものでもない。重要なことは、軍単独での災害救援は不可能であり、軍と民間の協力が不可欠ということである。とはいえ、大規模災害では、多様なアクターが救援に関わり、さらには民軍のコミュニケーションラインを構築することになる。だからこそ、MPAT(Multinational Planning Augmentation Team)のような多国間訓練のような多国間の取り組みを一元化するシステムを通じて、平素から各国軍隊間の強固な意思疎通を確保することが必要である。 [09] したがって、国連・国際組織・NGOや関連組織が一体となって協力しなくてはならない。

東日本大震災は、HA/DRにおいては軍隊間の調整が重要であることを明らかにした。したがって、紛争シナリオのみならず、HA/DRのようなnon-combat military operations (NOCOMO or ノコモ)の共同軍事演習の実施が必要である。[10] こうした協力関係には、日米同盟や他国軍および地方自治体やNGOなどが含まれる。

* 訳注, ノコモについてはサイト内に同執筆者の論文訳を掲載済み - The JMSDF in the Age of Multilateral Cooperation

IV. 海上自衛隊の新たな挑戦

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東日本大震災の被害は未曾有のものであったが、他国に目を向けると同規模の緊急事態が世界各地で発生していることが判る。また、東日本大震災を契機に、開発途上国を重視していた日本の国際NGOが、国内のニーズに意識をむけるようになった。その結果、NGOの活動は、より多方向的になってきている。

JPFの設立は、NGO・経済界・日本政府が緊密に協力する一体的な緊急支援の枠組みを実現し、それぞれの特性やリソースを活用するNGOのユニークな力である「繋ぐ力」生み出した。JPFが国際プラットフォームとして創設されたが、国内活動においても良く機能した。また、国内NGOのプラットフォームであるシビック・フォースも、東日本大震災への対応で経験したような「パートナーシップの力」を活用するため、海上自衛隊との関係を構築して、国際災害救援活動に備えている。 [11]

海上自衛隊が自身に対する一般の理解や信頼を得るためには、そうした枠組みとの協力関係を構築し、緊急支援に重要な役割を持ち、「繋ぐ力」や「パートナーシップの力」を有するNGOとの団結を深めることを真剣に考慮しなくてはならない。

V. 前途

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日本のASEAN地域フォーラムでのメンバーシップや、HA/DR活動でのリーダーシップは、ASEAN・中国との友好関係の維持に貢献する。また、日本にとっては、北朝鮮も含めた各国との対話の機会になる。したがって、日本は安全と安定において地域を主導する道を模索することになるだろう。

未曾有の大災害の時には、個々に支援するのではなく、国家を挙げて対応しなくてはならない。仮に東日本大震災を凌ぐ被害となる大災害の場合には、その支援の必要性も未曾有の規模となるだろう。HA/DRの基本は「必要な人に必要な支援を」であり、[12] それは海上自衛隊のみで解決できるものではないことも明らかである。将来においては、無限の可能性を有するNGOや民間企業が、HA/DRの分野に新たな可能性を拓くことが期待される。また、その多様性からHA/DR活動に関わる組織の接着力としての重要な役割を果たすことになるだろう。

海上自衛隊・米海軍・NGOのHA/DRでの協働は、民間と軍が協力してギャップを克服した時に、海上自衛隊の現場力(gemba)と被災地の潜在的な地域力(chiiki)を融合できるという意味で真に有益となる。民軍双方の組織にとって、刻々と変化するニーズを正確に捉え、政府全体で一丸となった活動を最大限に投入するためには密接に役割を分担することが欠かせない。

海上自衛隊に期待される活動の第一は、長きに渡って培ってきた現場力(gemba power)の発揮であり、その根源は海上プラットフォーム(offshore platforms)にある。今後は、アジア太平洋地域の大規模災害発生エリア発生時には、各国の民間企業・NGO・政府機関が、組織の壁を越えることで、より迅速かつ効率的に支援を提供するためにリソースを共有・使用することを目指して、互いに協力する枠組みを構築することが重要である。

また、HA/DRにおける軍同士の関係・民軍関係の効率改善には、現実での調整・協力のために組織を準備する共同訓練が鍵となる。災害時の機能を最大限に活用や互いの手順を各団体に習熟させるため、これらの演習にはNGOの参加が欠かせない。そうすることで、災害時に民軍活動がスムーズに実施できるだろう。

この数十年、特に2004年のインド洋津波以来、災害対応は大いに進歩した。しかしながら、海上自衛隊が国内および各国軍と非政府組織を主導して改善する余地が大いにあることが、上記のように示されているのである。

- end -

VI. NOTES

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