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Posted Apr. 20, 2015

The Japan Maritime Self-Defense Force in the Age of Multilateral Cooperation

Nontraditional Security

The Author: Captain Takuya Shimodaira, Japan Maritime Self-Defense Force

訳者前書

米海軍大学校のThe Naval War College Review Issue: 2014 - Spring で拾ったテキストを端折って訳すだけの簡単なお仕事。

執筆者は下平拓哉1等海佐。掲載当時は海上自衛隊幹部学校 戦略研究会メンバー, 米海軍大学インターナショナル・フェローであり同大学連絡官、NCMOには少なくともRIMPAC2010の時点で関わってるようです。

端折って訳したというのは半分か、もっと嘘で、上記のリンク先に掲載されているのは「多国間協力時代の海上自衛隊 - 非伝統的安全保障分野を中心に」 『海外事情』 第61巻第3号 (2013年3月)の英訳版で、それをもっかい日本語にしたという裏口入学的なアレ。海外事情は有料頒布物なので、まさか転載するわけにはいかないので。

そんな訳で翻訳に当たっては日本語版を大いに参考にしています。また、引用箇所の訳は但し書きがない限り、日本語版から拝借しています。

日本語版と英語版は殆ど同じで、日本語版にはないパラグラフが英語版にはあったりしますが、全体的にはちょいちょい表現が違うかなという程度。

海外事情はどこの図書館でも読めます(たぶん)

構成はほんの少し変えてあります。

下平1佐の「日米同盟の転換点 - 統合シーランド・アプローチ構想と日米同盟の深化」 『海外事情』 第60巻第7・8号 (2012年7・8月)は必読。

Typo, 誤訳の指摘は歓迎。- E-mail

目次

本稿で論ずる非伝統的安全保障とは、米海軍大学中国海洋研究所(CMSI)および防衛白書の定義に従う、前者は非伝統的安全保障を大量破壊兵器の拡散・海賊・環境危機・人道災害・民族不和・経済的混乱とし、後者は人道支援/災害救援・海賊対処・海上安全保障などと定義付けている。(日本語版文末脚注より抜粋、英語版では番号なしで文末脚注にアリ)

I. はじめに

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Isaiah Berlinのエッセイ『ハリネズミと狐』は「キツネはたくさんのことを知っているが、ハリネズミはでかいことを一つだけを知っている」との名句で知られ、一元的な防衛戦略の長短を言い当てている。[01] ハリネズミはボールのように丸くなって自らを守るが、元防衛大学教授の土井寛は『日本ハリネズミ防衛論』を提唱し、我が国の戦後の安全保障政策は「狡賢い狐」のような如何なる敵対国家も打ち負かせるとした。[02] とはいえ、複雑多様化するグローバルな安全保障環境において、「専守防衛態勢」は適応しないのではないか。果たして日本はハリネズミのままでいいのであろうか?

日本周辺の安全保障環境は、伝統的安全保障と非伝統的安全保障が今までになく絡み合い、かつてないほど複雑で多様化している。中国の台頭、接近阻止/領域拒否(A2/AD)能力の向上や北朝鮮の核兵器は日本の経済競争や国家にとって大きな脅威である。さらに、国際テロ・薬物密輸・サイバー領域への執拗な攻撃といった非伝統的脅威がアジア太平洋地域の平和と安定要因を脅かし、最近では地震・津波・台風・パンデミックのような自然災害が致命的なものとなりつつあり、人道的/災害救援(HA/DR)のように軍事的対応が求められている。もし、日本がこれらの問題に対処し、また「責任あるステークホルダー」としてその責務を果たそうとするのであれば、自衛隊の役割、任務、部隊編制を見直す必要がある。

2012年5月1日、日米首脳が『未来に向けた共通ビジョン(A Shared Vision for the Future)』を発表、「日本と米国は、アジア太平洋地域と世界の平和、繁栄、安全保障を推進するために、あらゆる能力を駆使することにより、我々の役割と責任を果たすことを誓う」ことを確認した。[03] これは、日本が米国との緊密な同盟関係の下、アジア太平洋地域での平和と安定の促進に寄与することがますます期待されていることの証である。日本は国際社会において責任ある地位を占めるために、安全保障に関し、より一層の責任を果たすことが出来るよう行動が求められている。変化する国内外の安全保障情勢に応じて防衛省、自衛隊は日米同盟を深化させ、実効性を増す必要がある。日本の国益は海洋と密接に結びついている、柔軟性、即応性や持続性を有する海軍力である海上自衛隊は我が国防衛の最前線に立ち、日米防衛協力関係の中心的役割を担ってきた。従前の専守防衛戦略から新たな役割や任務を求めて海上自衛隊が時代の潮流に対応しなければ日米同盟は瓦解するといえる。

* 訳注, 未来に向けた共通ビジョンは外務省の仮訳から引用: 野田総理の米国訪問

海上自衛隊が果たさなければならない役割や任務は多いが、非伝統的安全保障分野の活動の検討は喫緊の課題である。なぜなら、そのような活動は今すぐ実施でき、憲法の制約を受けず、かつ日本が国際的な責務を果たすことに通じるからである。ここに提唱するNon-Combat Military Operation: NCMO(ノコモ)は日本が、より責任ある大国となるための最短で現実的なアプローチとなるだろう。[04]

先行研究において、『平成23年度以降に係る防衛計画の大綱』と東日本大震災の教訓を踏まえ、今日の日本に必要な防衛機能としてシー・ベーシング機能(水陸両用輸送、後方支援)を速やかに実現することを提言した。[05] 自然災害が多発し、島国で、非伝統的安全保障の問題を避けて通れない日本にはシー・ベーシングが重要である。しかしながら、これまでに海上自衛隊が、海上拠点によって、非伝統的安全保障分野で実際活動できる範囲についての体系的な分析はない。したがって、海上自衛隊が非伝統的安全保障分野で果たすべき役割を解答する必要がある。

本稿では急速に変化する安全保障環境下での海上自衛隊に必要な能力について説明し、シー・ベーシング機能に着目する。まず、米国の両用作戦機能を任務や役割を含めて分析し、次に日米同盟における日本の責務を考察し、最後に、シー・ベーシングを活用した海上自衛隊の新たな役割について提言する。

II. 海上自衛隊に必要な新たな機能

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まず、日本は安全保障問題に対して自国で対処する意志と能力を有する必要がある。それはすべての国家と軍の責務でもある。既に触れてきた多様な安全保障問題に取り組むには、アメリカでさえも一国の軍隊の能力では手に余る。したがって、特に海軍では多国間協力が不可欠である。つまり、強固な日米同盟のさらなる深化に加えて、平素からの海上自衛隊と各国海軍との多国間協力の推進が必要になる。

今日の軍隊は日常的に世界各地で自然災害の現場で災害救援に当たっているが、被害が広範に及んだ国では国民全体の救援する能力が根本的に不足する。日本にはそうした救援に加わる責務がある。日本も東京をはじめとした大都市圏での大地震の被害に単独で対処するには準備が全く十分ではない。そうした災害での国際的支援は重要であり、海上自衛隊は救援を送るため、他国の部隊とともに活動できなくてはならない。したがって、国内外の責務を果たすため、日本には自国のみか、各国との協力であるかを問わずHA/DR活動に備えて、高度な装備を維持し、よく訓練された隊員を有する海軍力が求められる。

海上自衛隊は、日本の厳しい財政状況を踏まえて、海上拠点および水陸両用機能を速やかに具現化する必要がある。最も現実的なアプローチは現有の防衛力を活かし、イノベーション・包括的な計画・訓練を重ね、米国との緊密な協力関係を通じて最大の効果をあげることだろう。さらに、軍隊、民間、政府・非政府組織を問わず、それぞれの特性を生かした重層的なアプローチが重要である。多国間協力を進めるために最も重要なことは、信頼の構築である。より具体的にはグローバル、特にアジア太平洋地域における信頼を構築するために、日本が他国の困難にシームレスに助け合って協力すること、また責任ある立場として外交的に自国の意見を主張し、行動を起こすことが重要である。それは2011年の東日本大震災、2013年11月にフィリピンを直撃した巨大台風Haiyan(台風30号)で明らかになったように、この地域において共通の脅威は間違いなく大規模自然災害だろう。双方において、軍事力が救援の提供に極めて価値あることが証明された。[06] つまり、平素からのHA/DR活動に備える訓練は、近隣諸国間の信頼関係の促進だけではなく、人道目的のために多国籍部隊がともに活動する際の運用に習熟することでもある。

また、あらゆる事態に備えて訓練しておくことは自国防衛の意志と決意を示すものとして、最も重要である。多国間協力が進む中でも、自国で主権を守る能力を維持する必要がある。

Ken Boothは海軍の機能を軍事的、外交的および警備的役割に分類した。[07] 将来の海上自衛隊には4つ目の機能 - 民生的役割が必要である。これは海上自衛隊が有事(times of duress)にあっても日本国民の生命と福祉に焦点を当てなくてはならないことを意味する。限られた国家資源の中で、平素において十分に活用できない能力は無駄に過ぎない、軍民問わず、市民の福祉への配慮が欠如した組織は民主主義の中での役割に反する。また、海上自衛隊が、軍事的役割とともに民生的役割を確実に果たすには、即応体制を維持しつつも新しい機能を取得しなければならない。

米軍の中核的存在である米水陸両用部隊の編制は大きな示唆を与えてくれる。日本が水陸両用部隊を獲得するには米国との協力関係を進めることと有事にあって機能する即応部隊が必要である。米上院議員J. Randy Forbesは、米国はイラクやアフガニスタンでの戦争の間十数年にわたって無視されてきた水陸両用作戦機能の一新が必要だと論じている。[08] それでも米海軍・海兵隊は、財政難下にはあるものの、過去10年で最大の水陸両用訓練となる”BOLD ALLIGATOR 2012”を実施した。この演習においては、軍・民生部門およびNGOの協力が重要であることが示された。また米海軍と海兵隊のシナジーも強調され、米国の国防戦略における水陸両用機能向上の重要性が改めて見直され、アジア太平洋地域でのシーパワー、特に水陸両用能力の重要性の増大は米国にアジア太平洋地域へリバランスさせることに繋がっている。[09] つまり、米国においても水陸両用作戦の有用性が見直されているのである。海上自衛隊は水陸両用部隊の強化のために陸上自衛隊とのインターオペラビリティの改善に努める必要がある。

米統合ドクトリンは水陸両用作戦を「水陸両用強襲」「水陸両用襲撃」「水陸両用陽動」「水陸両用撤収」「水陸両用支援」に分類している。[10] 日本にとって、これらすべての能力を米国と同レベルに整備することは現実的ではない、それでは日本の防衛や安全保障の優先させる余りに、国際社会に対する人道的責務に関する責任の分散(傍観者効果)が助長される。したがって、最低限に必要なのは島嶼の防衛および奪回に係る限定的な「水陸両用強襲」および「水陸両用支援」であろう。特に後者は紛争・軍事的脅威の抑止、非伝統的安全保障分野に取り組むためにも寄与するだろう。[11] 海上拠点機能もまたHA/DR活動において有益であり、これらの機能は海上自衛隊が平素から関与すべきものである。

III. 海上拠点の有効性と課題

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今日の日本が求める最も重要な防衛機能の第一である海上拠点については2004年のインド洋津波でのHA/DR活動から得られる教訓がある。国連、各国軍隊、NGO等が実施した大規模な共同作戦の教訓について、米海軍大学の『ニューポート・ペーパー28 希望の波(Waves of Hope)』は、”ハードパワー”の資産と”ソフトパワー”の効果について分析している。[12]

これらの教訓は、米国のアジア太平洋地域での外交・軍事戦略に無視できないインパクトを与えた。また、米海軍を多国間協力の重視に傾倒させ、外交におけるHA/DRのインパクトの大きさ、海上拠点からの戦力投射の有用性が認識された。

2012年1月17日、米統合参謀本部は効果的な統合作戦機能を推進する構想である「統合作戦アクセス構想(JOAC)を発表した。この構想では沿岸部での作戦における集結、機動および後方支援にとって海上拠点が重要であることが示された。[13] この構想を実現するため、米海軍は新型艦となる機動揚陸プラットフォーム(MLP)の整備を進めている。

1番艦のUSNS Montford Point (T-MLP 1)は水線長(Waterline Length) 785ft≒約242m、満載排水量(Full displacement, Long tons) 78,800英トン≒800,645メトリックトン、最大幅(Waterline Beam) 164ft≒50m、速力15ノットで、タンカータイプの船体であり、軍艦構造ではなく商船構造で建造されていることが特徴の一つである。先進的なダメージコントロールシステムはないものの、軍艦構造と比べて格段に低コストとなり、3隻のLCACを支援可能としている。加えて、上陸地点を離れて補給艦(connector vessels)等から補給物資を受けることができ、沿岸部での作戦を支援する。LCACでのすべての物資を揚陸させた後は、MLPは安全な海域へと移動し補給を受けるか、沿岸からの撤収に備える。[14] 米海軍は3隻のMLPの整備を計画中と伝えられている。[15]

* 訳注, USNS Montford Pointの要目は速度を除き、Naval Vessel Register, NVRに従った: USNS Montford Point (T-MLP 1). なお、NVRでは数種類のクラスを除いて満載排水量は英トン表記が用いられている。

また、米海軍海洋システムコマンド(NAVSEA)ではメガフロートタイプの「洋上中間兵站拠点(IFS)」の計画が進められている。この洋上プラットフォームは複数の艦艇が接岸可能で、コンポーネント同士が連接すれば、航空機の発着も可能となる巨大洋上基地となる。またLCACの発進基地、ヘリコプターや飛行艇の発着パッドとしても使用できる。[16] さらに米海軍研究局(ONR)は、海上拠点のコンセプトを、より実用的にするため、高速、長大な航続距離かつ大輸送力のTransformable Craft(T-Craft)を開発中である。[17]

では米海軍の海上拠点構想を参考に、どのような海上拠点を日本は整備するべきであろうか。その中核は「海洋安定艦隊」であり、低コストで、既存の自衛艦艇・官用船からなり、任務部隊を構成し、拡張性と迅速な展開能力を有し、自衛隊・防衛省内や省庁間、NGOの活動の支援に適した合同部隊である。[18]

* 訳注, 執筆者は「日米同盟の転換点 - 統合シーランド・アプローチ構想と日米同盟の深化」 『海外事情』 第60巻第7・8号 (2012年7・8月)で地理を活用して、機動力を有し、分散化され、柔軟性を備えた兵力を投射する「地政学的スマート・パワー投射」戦略が中国に対して劣位にある日本の有利を作り出すとし、この戦略を実現するための統合シーランド・アプローチ構想を提唱した。そして、この構想にはシー・ベーシングを軸として海上の自由を担保する「海洋安定艦隊」と海上優勢獲得の鍵となる「戦力投射艦隊」が必要だとしている。

対応策の第一としては、メガフロートを活用したMLPの整備が挙げられるだろう。メガフロートは2002年に羽田空港再拡張事業をどのように新技術で実施するかを実証するために作られた。その後、メガフロートは分割され、静岡県清水市、兵庫県南あわじ市、三重県南伊勢市に移送された。[19] メガフロートはHA/DR活動のために本土および周辺で海上拠点として容易に使用可能である。第二は、民間活力、特にNGOの活用である。民間資金等活用事業(PMF)によって、NGOの多様性や柔軟性が公共施設の整備やメンテナンスなどに活かされているが、これを用いて、政府がNGOに民間船舶、フェリーやRoRo船の運航を委託することである。これならば、限られたリソース・人員・設備・資金という制約下でも、相乗効果が期待できる。特に、これまで海上自衛隊との関係が限定されていたNGOが、インターオペラビリティを改善し、民軍関係(CIMIR)を推進する起爆剤となることが期待できる。

IV. 戦力投射機能の有効性と課題

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海上拠点からの揚陸(amphibious lift)も、日本が効果的にNCMOを実施するために重要な機能である。2012年1月5日、Barack Obama米大統領は、戦力投射の重要性を強調した新たな戦略ガイダンスである『国防戦略ガイダンス - 米国のグローバルなリーダーシップの維持: 21世紀の国防における優先課題』を発表した。[20]

* 訳注, 新国防戦略ガイダンスはサイト内に掲載: Defense Strategic Guidance

このガイダンスではエア・シー・バトル(ASB)構想における海軍の戦力投射機能に触れている。続いて2012年3月に米陸軍と海兵隊が、『アクセスの獲得・維持 : 陸軍・海兵隊コンセプト(GMAC)』を発表、この構想ではA2/AD環境下での戦力投射の必要性を強調している。[21] その中核となっているのは米陸軍と海兵隊間の作戦領域間(cross-domain)の相乗効果である。

米陸軍と海軍がA2/AD環境下で実施する「侵入作戦(entry operation)」は、海上拠点からの限定目標への攻撃・強襲、A2/AD基盤の破壊、奇襲攻撃(coup de main)、港湾・空港の占領、後続する作戦のための遠征拠点の確保等であり、侵入部隊は強襲部隊(assault force)と後続部隊(follow-on operations)に分類される。

強襲部隊は海兵空陸任務部隊(MAGTF)、陸軍空挺部隊および陸軍ヘリボーン強襲部隊の三つからなる。揚陸作戦は「艦艇から目的地への展開(STOM)」と「垂直機動(MVM)」を特色とし、強襲揚陸・エアボーン等で実施される。[22] これらの手段によって敵を混乱させ、敵の地理的優位を減じる。侵入作戦の成功は海上優勢・航空優勢の効果的な獲得と相乗効果をもたらすことに繋がる。

21世紀に向けた海兵隊の水陸両用作戦における新たな挑戦は、1996年の「海からの作戦機動(OMFTS)」で始まった。[23] 2011年5月、中核となる作戦概念であるSTOMの検討文書が提出された。[24] この文書では、STOMを特徴とした揚陸作戦の教義を以下のように概略している。

* 訳注, GMACやSTOMに関しては防衛研究所の東アジア戦略概観2013 第8章で解説されている。

つまり、この戦力投射機能の有効性はMAGTF・空挺部隊・ヘリボーン部隊を複合して、互いに補い合い、相乗効果を得ることにある。そして、陸軍と海兵隊がアクセスを確保し維持することで統合作戦に寄与することが可能になる。Robert Work米海軍次官は米海軍と海兵隊の長距離兵器と戦力投射能力が、将来の米国の軍事力の中核となると述べている。[25]

これらを念頭に、日本はどのような戦力投射機能を有するべきだろうか。米国の戦力投射機能は長い実績を有し、絶え間なく洗練され続け、世界最高であることは間違いない。また、米国が現在の日本にとって、最も信用できる同盟国であることも疑いない。ここに自衛隊が米国の戦力投射能力を参考にすることが、如何に重要かが見出される。

最大の成果をあげるため、自衛隊としては有事において米国の戦力投射機能を支援するための現有装備を生かすべきだろう。このためには、MAGTFのように、STOMやMVMのため、日本はヘリコプター・LCACを活かし、これをエアボーン・ヘリボーン部隊と組み合わせ、現有部隊を統合することが重要である。それには最も重要なのは、有事よりも平素においてこそ、現有の海上兵力と陸上兵力の相乗効果を高めることを構想することである。

課題は、単純な各コンポーネントの総計よりも結果が求められている中で、コンポーネントをどのように柔軟に組み合わせ、作戦の相乗効果をあげるかを認識するかにある。海上自衛隊は多様な現場で、能力の発揮に努力しているが、求められる将来の能力は防衛省・海上自衛隊単独では実現不可能である。現今の安全保障環境では、持てる国家の総力を挙げての全周的な対応が求められる。同様に、非常時には、国家が国のリソースだけではなく、地方自治体の資産を使用することも重要なこととなる。このように、国家と地方を問わず、平素から知見や経験を蓄積するために繰り返して共同で訓練や演習を繰り返すことが重要になる。

グローバルな責務を有する米国では、米海軍と海兵隊は国家の安全保障において重要な位置を占める存在である。[26] 海上からの複数作戦領域(multidomain)での作戦には多くのアドバンテージがあり、米海軍と海兵隊は前方プレゼンスを維持し、何時、世界の何処にでも必要で強大なシーパワーを送り込める。[27] 海上自衛隊は、多国間協力を通じて、アジア太平洋地域での共通の非伝統的安全保障の脅威に対処するため、新たに求められている水陸両用支援機能を十分に発揮し、併せて、シーパワーの中核である前方プレゼンス、抑止力、制海権、戦力投射能力および海洋安全保障への影響力を維持することも必要である。[28]

V. 日米同盟における日本の責務

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日本の海上拠点および揚陸機能(amphibious lift capabilities)の構築ためにも日米同盟が重要だと言っても過言ではない。この同盟は日本の平和、安全、独立を確保するために重要な役割を果たしてきた。しかしながら、歴史は、同盟の性格が時代と共に変容していくことを教えている。アジア太平洋地域のパワーバランスは、中国の台頭とアメリカの凋落によって不安定化し、相互の国際協力と摩擦の可能性を示唆してもいる。[29]

2001年、シカゴ大学のJohn J. Mearsheimerは米中衝突を予想し、「『潜在覇権国』が登場しそうになると、同じ地域にある他の大国が自分たちの手で自動的にその今日を封じ込める働きをする」として同盟の役割が重要になることを指摘した。[30] 冷戦後、中国の台頭・朝鮮半島の不安定化・台湾海峡の緊張緩和に対処するために、日米協力関係の強化の必要性が高まった。

こうした日米の一致した思惑が1996年4月の「日米安全保障共同宣言-21世紀に向けての同盟-」の発表に繋がった。さらに、1997年には新たな「日米防衛協力のためのガイドライン」が策定され、武力攻撃事態および日本の平和と安全に重大な影響を及ぼす周辺事態に対応するため、日米相互協力の強化が打ち出された。2002年、日米安全保障協議委員会が設置されて協議が加速すると、2011年6月21日、日米共通の24の戦略目標が提示された。[31] これらの目標は現実に照らして実現しつつ、日米同盟を深化させる努力がなされなければならない。

今日の日本の安全保障環境においては、多国籍のアクターが複雑な立場から絡み合っている。したがって、将来の事態に備えるどころか、現在の安全保障の状況を完全に理解することさえ困難である。日本がこの歴史・地理・リソースが絡む難問題に取り組むには、どのように将来に対応し、変化するべきだろうか。

第一に、非国家主体の視点である。青山学院大学教授の菊池努は、アジア太平洋地域をリアリズムとリベラリズムが並存する地域と捉え、国家の核心的価値(国家安全保障、経済的繁栄、政治的自律)の優先順位が複雑な交渉ゲーム(bargaining game)のなかで変化しているとしている。[32] 両者を結び付ける共通ファクターは、中央政府を持たない国際システムにおける、秩序の形成・維持の追及にある。この概念は国家に限定されず、非国家主体との緩やかな協力の想定もでき、その厚みと広がりの着実な成長の可能性を示唆している。レジームやガヴァナンスは国家中心の国際社会が直面する多様な問題に解決策を提示できる範囲を裏付ける研究はないものの、非国家主体、例えば国際的な機関・企業・NGOの参加や国家との協力が、将来の国際安全保障問題を解決する糸口を示すかもしれない。各参加機関の長所を生かした多層的な協力関係を通じて、そうした関係の厚みを増し、視点を持つことが重要である。

第二に、非軍事的手段(ソフトパワー)の効果的な活用である。日本周辺の安全保障環境は軍事力の効果があるとは限らない、新たに複雑な様相を見せている。日本を取り巻く海洋問題は海賊対処、WMD拡散、国際的組織犯罪、大規模自然災害、環境破壊、資源開発などである。日本としては、海上通商のため、海上交通路(SLOC)への自由なアクセスの維持を確保しておくことが必須である。言い換えれば、日本の国益はグローバルな海洋安全保障にある。2010年7月のASEAN地域フォーラム閣僚会議において、Hillary Clinton米国務長官は「米国は、他国と同様、航行の自由、アジアの海洋コモンズに対する自由なアクセスに国益を有している」と強調している。[33] これらの国益はますます脅威に晒されており、一国のみで対処することは出来ない。これらの脅威の顕在化は、軍事的手段より非軍事的手段を通じて防止することが望ましい。言うまでもなく、平和や安全保障への直接的な挑戦に対しては厳とした対応がされるべきである。

国家主体は依然として、現行の国際システムの主要なアクターではあるが、非国家主体の存在も無視できない。その利害や政策は多様で、オプションも様々である。したがって、新たな安全保障の課題への現実的な対応には、多様なアクター・多国間協力によって維持される秩序というグローバルな観点からアプローチすることになる。

そこでは、複雑多様な国際的活動の調整能力や国際経験に対する深い理解が求められる。この能力やノウハウの獲得が日本の能力を開拓し、危機対応能力を強化することになり、日本はアジア太平洋海域の安定と安全保障のために応分の責任を果たし得る。

中国が南シナ海や東シナ海でのプレゼンスを伸張させている中、日本の現実的なアプローチは、海洋領域での多様なアクターや多国間での協力促進を主導することである。日本は、地域での主導的な立場を得て、軍事的・非軍事的手段を問わずに国益を保護するだろう。今まさに、アジア太平洋地域の平和と安定を確保する最善の道は、日米同盟を基盤として、日本での軍民の緊密な調整・協力を促進することである。これにより、日本は新たに重要な役割や責任を果たすことで、日米同盟もより深化するだろう。日本にとって、米国との協力関係を向上させるには、これが喫緊の課題となる。

VI. 海上自衛隊の新たな役割:NCMOアプローチ

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日米同盟の強化のために海上自衛隊がなすべきは何か。 米国のエア・シー・バトル概念のため、海上自衛隊として具体的な作戦計画を確立しておくことは重要である。現在の環境を踏まえると、多くの非伝統的安全保障分野の問題を抱えながら、安全保障に対する姿勢が従来通りに受動的では、国際社会に受け入れられないだろう。これらの新たな課題に対処に応分の責任を果たさない限り、日本は孤立することになるだろう。この危機感の下で、より現実的に「今できること」を追求しなければならない。

第二次世界大戦の負の遺産に対する認識から、日本は近隣諸国との歴史的問題の解決に努力し、平和国家としての姿勢を表明してきた。安倍晋三首相は、日本が「積極的平和主義の国」であり続けることを主張している。[34] また、政権就任以来、普通の国家としての外交・防衛政策を含めて日本の再活性化に不断の努力を払い、日・ASEAN友好協力40周年の2013年12月、東京で開催された日・ASEAN特別首脳会議においても「我々は、この地域の平和、安定及び繁栄を維持するとの誓約を再確認した。」と共同声明が出されている。[35] 海上自衛隊にできる協力関係への関与を強化する方策の一つとしては、国際的な災害対策(disaster management)の推進が挙げられるだろう。

* 訳注, このパラグラフは日本語版にはない、訳語等は日本政府や外務省のサイトから引用: ハドソン研究所 ハーマン・カーン賞受賞に際し, 日・ASEAN特別首脳会議 (平成25年12月15日)

統合ビジョン2020(JV 2020)は、世界中に展開する米統合軍の戦場におけるフルスペクトラム・ドミナンスに関する概念モデルである。[36] 表 1にあるように、JV 2020では、軍事作戦は戦争(war)と戦争以外の軍事作戦(MOOTW)に大別されている。[37] MOOTWには、戦闘分野と非戦闘分野が含まれる。戦闘分野と非戦闘分野が混在する領域としては、平和執行・対テロ・襲撃を含むプレゼンスの誇示・非戦闘員退避活動等が含まれ、MOOTWの純然たる非戦闘分野には航行の自由・人道支援・船舶の防護等があり、これらの活動は単独ないし併行で実施されるとしている。

* 訳注, Full-spectrum dominanceの意味合いは、全方位優越とか、そんなの。

表 1 NCMOのイメージ

そこで、NCMOを「戦闘を伴わない軍事作戦」と定義付けした上で、海上自衛隊が多国間協力の促進・国益の保護・航行の自由・米国との関係の深化のため、MOOTWにおける純然たる非戦闘分野、つまりNCMOにおいて、主導的な役割を果たすことを提唱する。前述のようにMOOTWには戦闘分野が含まれ、日本の参加が法的に制限される場合があった。対照的に、NCMOは法的な枠組みの範囲で実行可能なものと整理でき、海上自衛隊が平素の作戦において主導することができる。NCMOの活動には、平和貢献のために展開中の部隊への支援、国際秩序の維持管理、大規模災害時の人道支援等が考えられる。

NCMOを主導することは五つの点で有益である。

これらには課題が二つある。第一に、意識改革が重要である。つまり、従来の法的制約にあって「できない」という考え方は既に通じなくなった、そこで、現行憲法下で適法の活動を整理し、「できる」という考え方を進めていくことが必要である。

安定した安全保障環境が、日本の存続や発展に不可欠である。地域の安定が続く保証もなく、自由な海上貿易を維持することはできない。日本が、将来もこうした恩恵を得たいのであれば、積極的平和主義国家として、こうした恩恵を生み出す環境を確保することが必要である。これには国際社会が安全保障のために負担している責務を、日本が応分に果たすことが求められる。そのためには、日本は防衛力の活用が必要である。平素の活動において、実践し、訓練することで、平素においては国家資源を有効活用し、不測の事態に対応する能力を高める。それはHA/DRにおける米軍を見れば明らかである。東京大学名誉教授の山本吉宣は、現在の国際システムを受けて、軍の任務が多様化し、その結果、人道支援や災害救援において、よりダイナミックな活動が必要になったと指摘している。[38] 日本は安全保障の姿勢を「待ちの視点」から「行動の視点」へ、「他者に与えられる安全保障」から「他者と共に果たす安全保障」へ転換しなくてはならない。国際社会においては、平和への貢献が十分とは言えない国は、国際秩序維持に応分の責務を果たしていないといっても過言ではない。

第二に、グローバルな、特にアジア太平洋地域での安全保障環境構築のため、日本の防衛の最前線に立つ海上自衛隊がNCMOを主導すべきである。この地域の緊張状態にあっては、即座に実現することは困難だが、これを果たす必要がある。このため、日米は、アジア太平洋地域の平和と安定が両国の利益になるという共通認識の下に、より適切に役割と責任を分担する必要がある。

より具体的には、日米間で見直す役割は表 2で示したとおりである。こうした役割は国際的治安維持(警戒監視、国際不法活動の取り締まり、船舶の防護、航路の安全確保、海上阻止活動等)、国際的後方支援活動(補給提供、整備・修理、輸送、医療等)、国際的人道活動(災害救援、非戦闘員の保護、医療輸送、捜索救難等)が考えられる。

表 2 NCMOの主な活動

NCMOに海上自衛隊が積極的に主体的に参加することは、日本が地域のみならずグローバルな安全保障におけるステークホルダーとして、応分の責任を果たすことに繋がる。NCMOは行動思考的(action-oriented)なアプローチであり、平素から取り組むことが出来る。近年、米国では安定化作戦の重要性が増す中、平時の交戦(engagement during peacetime)である「フェーズ・ゼロ(Phase Zero)」が最重要視されるトピックである。[39] ここに、日本の防衛力を活用し、国際的な軍事作戦に積極的に関与することが示唆される。日本は、NCMOアプローチによって活動し、「今、何ができるか」や「何をしなければならないのか」といった疑問について主張し、議論しなければならない。また、海上自衛隊がこの概念を率先して行動することが必要であり、「できる」というスタンスへの意識改革が重要である。同様に、海上自衛隊は、憲法の制約下にあっても地域の安全保障環境に貢献するために、国際社会に対して積極的にできることを提示しなければならない。NCMO活動を推進・主導し、責任を有する国家像を示すことは、国際社会における日本の存在感を高める。

* フェーズ・ゼロについては、脚注39にある論文の片方の訳文をサイト内に掲載。 - Phase Zero

コアリションでの作戦の重要性が増していることを踏まえて、海上自衛隊は、 アジア太平洋地域の安全保障の基礎をなす日米同盟に新たな意義を提示しなければならない。日米同盟は「価値と利益」の実績を積み上げてきたが、ここに、相互に益する「行動」を加えた同盟へと進化させる必要がある。

国際政治学者の泰斗E.H. Carrは「新しい国際秩序の形成および新しい国際的調和の成立は、寛容であり圧倒的でなく、実際に選択できるものの中から選び出すことができるものとして、一般に受けとめられ受け入れられる支配力に基づいてはじめて可能である」と言い当てている。[40] 複雑多様化する多国間協力の時代にあって、国際秩序の構築に海上自衛隊が果たすべき役割は大きい。

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VII. NOTES

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