地火明夷  ーー離下、坤上
「艱難汝を玉にす。昼行灯の時も必要。」
明らかなるもの、正しきものが覆い隠されて、暗闇、邪悪が支配する象。
聡明さが傷つけられ、暗愚がはびこる象。
正しきものが艱難辛苦を強いられる。禍、障害の多い時。隠忍自重、時を待つこと。


「明夷(めいい)」とは明るさが傷つき破れる、と言う意味です。明るいのが正常と考えれば正常で無い状態です。しかも上に立つ者、組織のトップに立つ者、権力を持つ者、が暗愚であるため、その下に居る能力の有る者が冷遇され、或いは危害を加えられる時です。
こんな時は有能の者はその能力を圧し隠し難を避け、正常な状態が戻るのを待つことが賢明です。
古代、殷の紂王によって幽閉されながらじっと耐えて殷が倒れた後に周を興した文王、危険を承知で紂王を諌めた箕子、の例を引いています。
「願いごと」ーかなわず。時を待て。
「商ごと」ー不首尾。時を待つべし。
「相場」ー低迷。
「受験」ー不成績。
「病気」ー重症。養生し回復を待て。
「就職」ー当面望みなし。
「恋愛」ー反対多く不首尾。
「天気」ー悪い。
「旅行」ー災難の象。見合わすべし。
「開業」ー見合わすべし。
「転業、移転」ー見合わすべし。
「失物」ー出ず。
「方角」ー南、南西。
「初爻変爻」の場合:
  危険が迫れば飛び立つ鳥のように、邪悪からはさっと逃げるのがよろしい。
  しかし「三日食らわず。主人言あり。」ですから暫くは適切に処遇されることもなく、いろいろ非難もされるでしょう。

「二爻変爻」の場合:
  「股を傷つけられるが元気な馬に乗れば逃げることができる」とあります。
  なかなか逃げ難い時ですが、逃げるのがよろしい。

「三爻変爻」の場合:
  逃げるのでなく果断に立ち向かい現状を打開するのも良いでしょう。「于きてその大首を得たり」ですから、悪の首領を倒すことが出来ます。
  慎重にことを運ぶ必要があります。

「四爻変爻」の場合:
  これまでのつながりを断ち切り速やかに退去するのがよろしい。

「五爻変爻」の場合:
  大いに難儀する時。それでも正しい方針を貫き現状を守ること。

「六爻変爻」の場合:
  「明夷」の極みです。無理をせず、成果を挙げることは断念し早々に切り上げるのがよろしい。


明夷は艱貞に利(よ)ろし。

彖に曰く、明の地中に入るは明夷なり。 内文明にして外柔順、以って大難を蒙る。文王之を以ってす。
艱貞に利(よ)ろしとは、その明を晦(くら)ますなり。 内難にしてよくその志を正す。箕子之を以ってす。

象に曰く、明の地中に入るは明夷なり。君子は以って衆に莅(のぞ)み、晦(かい)を用いて而も明なり。

初九:明夷(やぶ)る、于(ゆ)き飛びてその翼を垂る。君子于き行きて、三日食らわず。往くところあれば、主人言あり。
   象に曰く、君子于き行くとは、義として食(は)まざるなり。
六二:明夷(やぶ)る、左股を夷る。もって拯(すく)うに馬壮んなれば、吉なり。
   象に曰く、六二の吉は、順にしてもって則あればなり。
九三:明夷(やぶ)る、于(ゆ)きて南狩して、その大首を得たり。疾(と)く貞(ただ)しくすべからず。
   象に曰く、南狩の志は、すなはち大いに得るなり。
六四:左腹に入り、明夷の心を獲て、于(ゆ)きて門庭を出づ。
   象に曰く、左腹に入るとは、心意を獲るなり。
六五:箕子(きし)の明夷(やぶ)る。貞に利ろし。
   象に曰く、箕子の貞は、明息(や)むべからざるなり。
上六:明らかならずして晦(くら)し。初めは天に登り、後には地に入る。
   象に曰く、初めは天に登るとは、四国を照らすなり。後には地に入るとは、則を失うなり。


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