山水蒙  坎下、艮上
「ものごころつかぬ幼児。たちこめる霧の中」
蒙昧の蒙。気運渋滞。能力不足で適切な判断が出来ず、迷い進退を誤る。
幼児の様に、純粋な心で目上の意見に従えば次第に運気が開ける。


「蒙(もう)」は「覆う」と言う意味で、覆われるから「うす暗い」と言う意味も有ります。知識や経験不足で世の中がハッキリ見えない状態です。こんな時は良い先生にどうぞ教えて下さい、とお願いして勉強しなければなりません。
この卦の時はどうしたらよいか対処の仕方が判らない時です。自分一人では解決困難です。真摯な気持ちで人に協力を求めることです。
「願いごと」ーかなわず。忍耐し時節を待つべし。
「商ごと」ー順調にいかず。時期を待つこと。
「相場」ー当面は混迷。先は上がる。
「受験」ー不成績。
「病気」ー原因不明で長引く。養生に励み、鍛練すれば健康を得る。
「就職」ー望みなし。時期を待つこと。
「天気」ー曇り。
「旅行」ー難渋する。見合わすべし。
「開業」ー時期を得ず。見合わす方がよろし。
「転業、移転」ー時期を得ず。
「失物」ー何かの下に隠れている。丁寧に探せば出てくる。
「方角」ー北、東北。
「色」ー黄灰色
「初爻変爻」の場合:
  このままではどうにもなりません。問題解決には相当厳しい方針で臨まねばなりません。

「二爻変爻」の場合:
  向こうから求められたことではうまく行きますが、こちらから仕掛けるのは不可です。

「三爻変爻」の場合:
  自分をしっかり守ること。「女をめとるに用いる勿れ」とあります。色恋沙汰に注意。

「四爻変爻」の場合:
  孤立無援でどうしようもありません。しばらくは我慢です。

「五爻変爻」の場合:
  良い先生や先輩などの指導を得れば成果をあげることが出来ます。

「六爻変爻」の場合:
  蒙の極みです。余程気合いを入れないと困難な状況を突破できません。


蒙は亨(とお)る。
我より童蒙に求むるにあらず。童蒙より我に求む。初筮は告ぐ。再三すれば涜(けが)る。涜るれば告げず。貞(ただ)しきに利(よ)ろし。

彖に曰く、蒙は山の下に険あり。険にして止まるは蒙なり。
蒙の亨(とお)るは亨るをもって時に中するなり。我より童蒙に求むるにあらず、童蒙来たりて我に求む、志応ずるなり。
初筮は告ぐ、剛中をもってなり。再三すれば涜(けが)る、涜るれば告げず、蒙を涜すなり。
蒙は以って正を養う、聖の功なり。

象に曰く、山下に泉を出すは蒙なり。君子は以って行いを果たし徳を養う。


初六。蒙を発(ひら)く。用って人を刑し、用って桎梏を説くによろし。以って行けば吝。
   用って人を刑するによろしとは、以って法を正すなり。
九二。蒙を包む。吉なり。婦(つま)を納(い)る、吉なり。子にして家をおさむ。
   子にして家をおさむとは、剛柔接(まじ)わるなり。
六三。女をめとるに用うるなかれ。金夫を見れば身をたもたず。よろしきところなし。
   女をめとるに用うるなかれとは、行い順ならざればなり。
六四。蒙に困(くる)しむ。吝なり。
   蒙に困(くる)しむの吝は、独り実に遠ければなり。
六五。童蒙、吉なり。
   童蒙の吉なるは、順にしてもって巽なればなり。
上九。蒙を撃つ。冦(あだ)をなすによろしからず。冦(あだ)をふせぐによろし。
   もって冦(あだ)をふせぐによろしとは、上下順なればなり。


我より童蒙に求むるにあらず。童蒙より我に求む。

幼い子供は世の中判らないことだらけです。判らないから何でも知りたがり、「なに?」「どうして?」と人に聞きます。そして教えられ、知識を吸収し、成長をしていきます。そうしなければまともに生きていくことが出来ないことを本能的に知っているからです。
大人になってからも、自分が判らないことは、頭を下げて人に教えを乞うものです。
大切なことは、無知な側が、どうしても知りたいと、知識の有る側に教えを乞うのであって、頼みもしないのに、わざわざ教えてくれる者はいない。逆に、頼まれもせぬのに教えるのは間違い、知ろうとしないものにはいくら教えても無駄、ということです。

童蒙の吉なるは、順にしてもって巽なればなり。

何も知らぬ子供のようであって、なおかつうまく行くためには、従順で謙虚でなければなりません。さもないと、蒙に困しむ、おのれの無知に困窮することになります。

初筮は告ぐ。再三すれば涜(けが)る。涜るれば告げず。

ところで、ここに、占いの心構えが書かれています。心を込めて、最初に占って得た答えは正しい指針となりますが、気に入らぬからとやり直しても、もはや正しい答えは得られない、ということです。
<最初のページに戻る>