山風蠱  巽下、艮上
「皿の上にうごめく虫。禍を福に転じる好機。」
運気停滞し、諸事思う様に運ばず。内に問題多し。
心気一転、内部一新して膿を出し切り、新たな一歩を踏み出す好機。


「蠱(こ)」は腐った物にわく虫であり、惑わし乱す、という意味も有ります。「人に喜んで付いて行った結果問題が生じた状態」と書かれています。何ごとによらず長い間ぬるま湯に浸かるような状態でやって来た結果、虫がわいたのです。
これまで続いて来たことが壊れますがその方がよろしい。また大掃除をして旧習を一掃するチャンスです。ただ、十分な準備が必要です。
「甲に先だつこと三日、甲に後るること三日」。面白い文言ですが、甲は十干の始めで、事を起こす時。準備はその三日前から慎重にし、事を起こしたら三日後には仕上げる程速やかに行動しなさい、と解説されています。
「願いごと」ーかなわず。方針を一新し出直すこと。
「商ごと」ー停滞して進まず。一からやり直し。
「相場」ー低迷。
「受験」ー不成績。
「病気」ー危険状態。治療法一新すべし。
「就職」ー成功せず。全く別の方向を当たること。
「天気」ーぐずつく。
「旅行」ー難渋続きとなる。見合わすがよろし。
「開業」ー見合わすべし。
「転業、移転」ー決然と現状打破を目指すときのみ吉。
「失物」ー出ず。
「方角」ー東南、東北。
「色」ー青、緑、黄
「初爻変爻」の場合:
  「父の蠱を受け継ぐ」とあります。あなたが受け継いだ方なら改革です。
  あなたが父なら引退して子に任せることです。

「二爻変爻」の場合:
  「母の蠱を受け継ぐ」とあります。父より根が深く、潔く無いのでやっかいです。
  理屈一本で押し通そうとしても上手くいきません。

「三爻変爻」の場合:
  更に深刻な状態で問題を引き継ぎますが改革を断行して大丈夫です。小しく悔あれども大咎なし、です。

「四爻変爻」の場合:
  このまま進めばますます悪くなります。過去にこだわらず撤退すること。

「五爻変爻」の場合:
  改革が功を奏し新たな一歩が始まる時です。喜びがあります。

「六爻変爻」の場合:
  「王侯につかえず」。何とか改革しようと努力をしたが埒が開かず、宮仕えは止めた、というところです。
  何かにつけケリがつかず投げ出すようなことになります。良い悪いは別として、まあそれしかないでしょう。


蠱は、大いに亨る。大川を渉るによろし。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日。

彖に曰く、蠱は、剛上りて柔下る。巽(したが)いて止まるは蠱なり。蠱は元(おお)いに亨りて天下治まるなり。大川を渉るによろしとは、往きて事あるなり。
甲に先だつこと三日、甲に後るること三日とは、終われば始めあり、天行なるなり。

象に曰く、山下に風あるは蠱なり。君子もって民を振(すく)い、徳を育(やしな)う。

初六:父の蠱を幹(ただ)す。子あれば考(ちち)も咎なし。氏iあや)うけれども終には吉なり。
   象に曰く、父の蠱を幹すとは、意(こころ)考に承くるなり。
九二:母の蠱を幹(ただ)す。貞にすべからず。
   象に曰く、母の蠱を幹すとは、中道を得るなり。
九三:父の蠱を幹す。小しく悔あれども、大咎なし。
   象に曰く、父の蠱を幹すとは、終に咎なきなり。
六四:父の蠱を裕(ゆる)やかにす。往けば吝を見る。
   象に曰く、父の蠱を裕やかにすとは、往くもいまだ得ざるなり。
六五:父の蠱を幹す。もって誉れあり。
   象に曰く、父の蠱を幹し、もって誉れありとは、承くるに徳をもってすればなり。
上九:王侯に事(つか)えず。その事を高尚にす。
   象に曰く、王侯に事えずとは、志則るべきなり。


ところで、漢和大辞典によれば、「蠱」の字は皿に虫を入れて蓋をする形で、「呪いに用いる虫」と書かれています。
器の中で数匹の虫を飼うとそのうちに喰い合いをして最後は一番強い一匹だけ残る、その残った一匹を「蠱」と言います。
この虫をそなえて呪詛すると虫はその相手に取り憑いてたたる、そういう呪詛(巫蠱・フコ)があったそうです。
現在でもその効果があるかどうかは判りませんが、虫を何匹も狭いところで飼うのは、余り楽しいことではなさそうですね。
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