山雷頤  震下、艮上
「養うことの難しさ。」
運気安泰をはかる時。
飲食、言葉など口に関する災いに注意すべし。

中吉
「頤(い)」は「おとがい、あご」の意味で、「養う」という意味も有ります。左上の卦の形を、上顎と下顎の間に歯が並んでいる形と見たものです。「君子もって言語を慎み、飲食を節す。」と有るように、この卦の時はとにかく口に関することに注意が必要です。
また、養うものは自分の身体だったり、教養だったり、あるいは家族だったり会社の社員だったり、いろいろですが、養い方にも、養う対象にも十分に注意し、選別することです。
「願いごと」ー成否は努力次第。
「商ごと」ー成否は心がけ次第。
「相場」ー伸び悩む。
「受験」ー今一歩。
「病気」ー油断が回復を遅らす。口に注意
「就職」ー決まらず。
「天気」ー不良。
「旅行」ー食べ物に気をつけること。
「開業」ー時期を得ず。
「転業、移転」ーしばらく待つがよろし。
「失物」ー近くにありて見つからず。
「方角」ー東、東北。

「初爻変爻」の場合:
  「せっかく良いものを持っているのに、他人のものを羨んでそれを失ってしまい、凶」とあります。
  とかく人のことに気を引かれたり移り気で失敗することに要注意。自分の良い点を再認識すること。

「二爻変爻」の場合:
  「養い方が逆」とあります。支援など得られなかったり、頼んだ相手が頼りにならなかったりします。
  もう一度しっかり事態を見直すことです。

「三爻変爻」の場合:
  養われる道に反している、十年は動くな、と書かれています。
  どうもよろしく有りません。道筋が違っているようです。無理をせず万事見合せて時を待つのが良いでしょう。

「四爻変爻」の場合:
  「養い方が逆」でもそれで良ろしい。運気が開けてくる頃です。進んでよろしい。

「五爻変爻」の場合:
  新しいことをしたりしないのがよろしい。一歩下がってやり過ごすのが賢明です。

「六爻変爻」の場合:
  人から頼られたりして苦労しますがやがて問題も解決するでしょう。


頤は、貞なれば吉なり。頤を観て自ら口実を求む。

彖に曰く、頤は貞なれば吉なりとは、正を養えば吉なるなり。頤を観るとは、その養うところを観るなり。自ら口実を求むとは、そのみずから養うところを見るなり。
天地は万物を養い、聖人は賢を養いてもって万民に及ぼす。頤の時大いなる哉。

象に曰く、山下に雷あるは頤なり。君子もって言語を慎み、飲食を節す。

初九:爾の霊亀を捨て、我を見て頤(おとがい)を朶(た)る。凶なり。
   象に曰く、我を見て頤を朶るるは、また貴ぶに足らざるなり。
六二:顛(さかしま)に頤(やしな)わる。経(つね)に払(もと)れり。丘において頤わる。往けば凶なり。
   象に曰く、六二の往きて凶なるは、行きて類を失えばなり。
六三:頤(やしない)に払(もと)る。貞なれども凶なり。十年用うるなかれ。利(よ)ろしきところなし。
   象に曰く、十年用うるなかれとは、道大いに悖(もと)ればなり。
六四:顛(さかしま)に頤(やしな)わるも吉なり。虎視眈々、その欲逐逐たれば、咎なし。
   象に曰く、顛に頤わるるの吉なるは、上の施し光(おお)いなればなり。
六五:経(つね)に払(もと)る。貞に居れば吉なり。大川を渉るべからず。
   象に曰く、貞に居るの吉なるは、順にしてもって上に従えばなり。
上九:由(よ)りて頤(やしな)わる。氏iあや)うけれども吉なり。大川を渉るに利ろし。
   象に曰く、由りて頤わる、獅、けれども吉なりとは、大いに慶びあるなり。


役に立つ言葉

虎視耽耽、其欲逐逐

虎が獲物を狙っている様は、如何にも欲深く、そのことに没頭している(虎視たんたん)。なんとか狙った獲物をものにしたいという欲望が次から次へと湧き出してくる(その欲ちくちく)。易では、虎が獲物を狙う様をこのように表現しています。

顛(さかしま)に養わるるも吉なり。虎視耽耽、其の欲逐逐たれば咎(とがめ)なし。

肉食動物は普通、自分よりずっと弱い動物を襲います。虎もそうです。虎のような強い動物が、兎のような弱い動物を捕えて餌にするのは何とも卑怯な気がしますね。もっと大きくて強い動物と渡り合って倒し、これを餌にするのが本当ではないか、と。
自分より弱いもの、目下のものに養われる、すなはち、顛(さかしま、本末顛頭の顛)に養われるのは、あまり褒められたことではないのですが、虎が獲物を狙うように、たとえ兎のように弱いものであっても、一所懸命になって取り組む態度であれば、咎められることはない、ということです。
また、そうでなければ、餌にされる兎もうかばれますまい。

社会の中での力関係からして、力の強い方が支配的になる、それはそれで仕方のないこと、としても、行きがけの駄賃のようにされたのでは、飲み込まれるほうはたまったものではありませんし、そんなことが続けばきっと批判や反乱がおきるでしょう。
「虎視耽耽、其の欲逐逐」、これが、強い側に求められる姿勢です。


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