「屯」と言う字は種子から小さい根が下に伸び小さい芽が地表に出る形です。大変な危険や困難に進路を遮られた状況で、望むこともなかなか叶えられません。しかし進もうとする方向は正しいのです。初志を曲げず努力を続ければやがて運勢が開けて来ます。この卦は四大難卦の一つです。
慎重に時期を窺い、体制を固め、十分な根回しをする必要が有ります。
「二爻変爻」の場合:
進むべきか待つべきか進退に迷うことがあれば、今暫く待つべきです。
「三爻変爻」の場合:
鹿を追いかけて道案内もなく森に飛び込み進退極まる、と書かれています。
早く方向転換し、元へ戻ることが肝心です。
「四爻変爻」の場合:
迷う時には人に従い進めば良い結果が得られるでしょう。
「五爻変爻」の場合:
まだ力不足ですが程々のことはうまく行くでしょう。無理せぬように。
「六爻変爻」の場合:
大変厳しい状況です。今が苦しみのどん底で、今後は徐々に運勢が上向くでしょう。
彖に曰く、屯は剛柔はじめて交わりて難生じ、険中に動くなり。
大いに亨(とお)りて貞なるは、雷雨の動き満盈(まんえい)すればなり。
天造草昧、よろしく候を建つべくして、いまだ寧(やす)からず。
象に曰く、雲雷は屯なり。君子もって経綸す。
六二。屯如たり、てん如たり、馬に乗りて班如たり。寇するにあらず、婚媾せんとす。
女子貞にして字(あざな)せず、十年にしてすなわち字す。
六二の難は、剛に乗ればなり。十年にしてすなわち字すとは、常に反(かえ)るなり。
六三。鹿に即(つ)くに虞なく、ただ林中に入る。君子は兆しを見て止むにしかず。行けば吝なり。
鹿に即(つ)くに虞なしとは、もって禽(えもの)に従うなり。君子はこれを止む。
行けば吝なりとは、窮すべければなり。
六四。馬に乗りて班如たり。婚媾を求めて行けば、吉にしてよろしからざるなし。
求めて行くは、明らかなるなり。
九五。そのめぐみを屯(とどこお)らす。小貞なれば吉、大貞なれば凶なり。
そのめぐみを屯(とどこお)らすとは、施すこといまだ大いならざるなり。
上六。馬に乗りて班如たり。泣血漣如たり。
泣血漣如たり、なんぞ長かるべけんや。
「屯(ちゅん)」は種子から出た芽が、土を突き破ろうとして苦しんでいる状態です。生まれ出る悩み、とでも言いますか。
種から出たての小さな芽が、土を突き分け、地上に顔を出そうと奮闘しています。薄い表土でも柔らかい芽にとっては悪戦苦闘しなければなりません。地上に出れば出たで踏みつけられたり霜にやられたり、危険が一杯です。ですが、ひとたび蒔かれた種子は、困難を承知でも、芽を出し、成長し、花を咲かせる、これが大自然の摂理です。
赤ちゃんが生まれるとき、お母さんも大変ですが、赤ちゃんも死ぬような苦しみを味わいながら生まれてくるそうです。生まれてきたら、今度は病気や怪我や事故や、心配が絶えません。だからといって、お母さんのお腹のなかに何時までも居る訳には参りません。時が来れば苦しんでも生まれ、成長するのが自然の摂理です。
何か新しいことを始めるとき、邪魔が入ったり手違いがあったり、なかなかうまくいかないものです。しかし、あなたがひとたび事を始めたなら、何かを生み出そうとするのなら、スタートの時期には困難や危険があっても前進せねばなりません。いま躊躇したら何にもなりません。始めから順調にいくようなうまい話しはめったにありません。今の苦労は飛躍の試練と思い、誠実に進んでいけば必ずいい結果となります。
しかし、危険な状態であることは間違いないのです。準備や作戦、気配りは欠かせません。
「天造草昧、よろしく候を建つべくして寧(やす)からず。」
創造蒙昧の時期、新しい会社とか新組織を創るとき、あるいは新しい計画を立てようとするとき、要所々々に腹心のものを配するとか、十分な根回しが大切です。
「君子もって経綸す。」
経はタテ糸、基本理念や体制など基本となるモノ。綸はヨコ糸、あるいはキチンと撚り合せた紐。
国家創建の時、君子はまず基本理念や体制を確立しそれに沿って諸々のことをキチンと整えるように、まず方針、体制を固めることが必要です。