雷火豊  ーー離下、震上
「正中の太陽。充足のなかの哀愁。花の命は短くて。」
運機盛大の象。今が最盛期で、今後は下降線を辿る。
慢心を戒め、努力を怠らず、盛運を保持する心掛けが必要。

中吉
「豊」は文字通り豊かなこと、大きく盛んなことです。やがて日は西に傾くように今の盛運も下りますが、心配せず今為し得る最善を尽くすことです。短期に達成出来そうもないことなどは着手しないのが得策です。
華やかに見えても内部に問題を抱えていることが有ります。
(概説)
「願いごと」ー順調に運ぶも慢心は禁物。
「商ごと」ー順調に進み大利を得るが、調子に乗りすぎぬこと。
「相場」ー盛況も天井近い。
「受験」ー好成績。慢心は禁物。
「病気」ー全快す。油断は禁物。
「就職」ー望みかなう。以後努力を忘れぬこと。
「恋愛」ーかなう。調子に乗りすぎぬように。
「天気」ー好天なるも後下り坂。
「旅行」ーよろし。調子に乗りすぎぬこと。
「開業」ーよろし。
「転業、移転」ーよろし。
「失物」ー出る。
「方角」ー東、南。

「初爻変爻」の場合:
  運勢盛んな時です。一人でやらずに仲間と共に進むのが良いでしょう。

「二爻変爻」の場合:
  思わぬ障害に遇ったりして思うように進みません。転居なども無理せぬ方が良いでしょう。

「三爻変爻」の場合:
  進むことより如何にうまく退くかを考える時です。

「四爻変爻」の場合:
  独断、自己に固執したり、独断で失敗せぬよう注意すること。

「五爻変爻」の場合:
  硬さばかりではうまくいきません。華やかさも必要です。発想も柔軟に。

「六爻変爻」の場合:
  大きな家の内部を覗ってもひっそりして人気が無い、と書かれています。
  豊かさも終りです。ひとまず幕引きを考える時でしょう。


豊は、亨(とお)る。王、ここに至る、憂うるなかれ。日中によろし。

彖に曰く、豊は大なり。明にしてもって動く、故に豊なり。王ここに至るとは、大を尊ぶなり。憂うるなかれ、日中によろしとは、よろしく天下を照らすべしとなり。
日、中すればすなはち傾き、月満ればすなはち欠く。天地の盈虚(えいきょ)は、時と消息す。しかるをいわんや人においておや、いわんや鬼神においておや。

象に曰く、雷電みな至るは豊なり。君子もって獄を定め刑をいたす。

初九:その配主に遇う。旬(ひと)しといえども咎なし。往けば尚(たっと)ばるることあり。
   象に曰く、旬しといえども咎なしとは、旬しきを過ぐれば災あるなり。
六二:その蔀を豊(おお)いにす。日中に斗を見る。往けば疑い疾(にく)まるるを得ん。孚ありて発若たれば吉なり。
   象に曰く、孚ありて発若たりとは、信もって志を発するなり。
九三:その沛を豊いにす。日中に沫(ばい)を見る。その右の肱を折る。咎なし。
   象に曰く、その沛を豊いにすとは、大事に可ならざるなり。その右の肱を折るとは、終に用うべからざるなり。
九四:その蔀を豊(おお)いにす。日中に斗を見る。その夷主に遇う。吉なり。
   象に曰く、その蔀を豊(おお)いにすとは、位当たらざればなり。日中に斗を見るとは、幽(くら)くして明(あき)らかならざるなり。
   その夷主に遇う、吉なりとは、行けばなり。
六五:章を来せば、慶誉あり。吉なり。
   象に曰く、六五の吉とは、慶(よろこび)あるなり。
上六:その屋を豊(おお)いにし、その家に蔀す。その戸を覗うにゲキとして人なし。三歳まで観ず。凶なり。
   象に曰く、その屋を豊いにすとは、天際に翔けるなり。その戸を覗うにゲキとして人なしとは、みずから蔵(かく)るるなり。


(解説)

「日、中すればすなはち傾き、月満つればすなはち欠く。天地の盈虚(えいきょ)は、時と消息す。しかるをいわんや人においておや。」
 正午、天中の太陽は仰ぎ見ることも出来ないほど煌々と輝き、生きとしいける万物に惜しみなくエネルギーを降り注いでくれます。それは誠に盛大であり、ただ偉大であります。しかし、その太陽も刻々と動き、やがて西に傾くことは誰もが知りすぎるほど知っていることです。
 太陽が中天に昇りつめればつぎには傾き、満月になればつぎには欠けて来る。天地の満ち欠けは時間と共に移り変わるのが大自然の法則である。ましてや人間の勢いの満ち欠けが時と共に移ろうのは当り前ではないか、ということですが、まあ、ここまではよく言われること。易の面白いのはその次ぎです。

「いわんや鬼神においておや。」
 ましてや鬼神の勢いが時とともに盛衰するのは当り前ではないか、、、と。鬼だって神様だって、自然界の大法則の下にあるのは人間と同じです。調子の悪い神様にお願いしても効果のないことだって有りますぞ。

「日中によろしとは、よろしく天下を照らすべしとなり。」
 さて、人間、天中の太陽のような勢い有る状況は短いのだから、そんな時こそ自己のことではなく天下に貢献するべく行動をしなさい、ということです。どうも威勢の良い時には自分の利益になることに力を注ぐ人が多いのも困ったものです。


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