火水未済  ーー坎下、離上
「未完成。夜明け前。」
「未済」は整わないこと。全てにちぐはぐ、万事うまく行かないとき。
しかしやがて運気開ける。太陽の光りが今まさに射そうとする夜明けの時。
実力不足で失敗する象。慎重にことを進めるべし。

中吉
このページの左上の卦の形を見て下さい。卦は下から一爻、二爻、と数え、一番上が六爻です。また易では奇数は陽、偶数は陰、としています。
この卦は、奇数の1、3、5爻が陰で、偶数の2、4、6爻が陽と、爻の位置とその陰陽が全て逆になっています。だから「未済」すなはち、整わないのです。
しかし、陰と陽がしっかりと噛み合っている易の理想の形でもあります。そこで今はうまくいかなくても未来が有るのです。
なおこの卦は、64卦の一番最後に置かれ、完結することなく発展し続ける易の象徴とされています。
(概説)
「願いごと」ー急にはかなわぬが、努力すればやがてかなう。
「商ごと」ー困難は有るが、冷静に判断すれば利を得る。
「相場」ー徐々に上がる。
「受験」ー慎重に対応すれば好成績。
「病気」ー長引いた病も徐々に回復す。
「就職」ー急にはかなわぬが努力を続ければかなう。
「恋愛」ー初めは擦れ違いでもやがて成就する。
「天気」ー初め悪いが次第に快晴となる。
「旅行」ースタートに問題有るも、結果はよい。
「開業」ー冷静に判断すれば成功する。
「転業、移転」ー冷静に判断すればよろし。
「失物」ーよく探せば出る。
「方角」ー北、南。

「初爻変爻」の場合:
  功を焦ったり、力不足をわきまえずに進んで窮地に陥ることの無いよう、自制が肝要です。

「二爻変爻」の場合:
  時期尚早です。今しばらく我慢をすれば運気が開けるでしょう。

「三爻変爻」の場合:
  夜明けは間近です。慌てて飛び出さず、出発の準備を怠りなくすること。

「四爻変爻」の場合:
  これまでの努力が報いられる時です。運気も開けてきます。この機に一気に懸案事項を片付けること。

「五爻変爻」の場合:
  運気上昇です。周りの人も共に進むことで更に発展します。

「六爻変爻」の場合:
  成功、懸案問題の解決、で祝宴の時です、が気をゆるしては功を一気に失います。


未済は、享る。子狐のほとんど渡らんとして、その尾を濡らす。よろしきところなし。

彖に曰く、未済の享るは、柔中を得ればなり。子狐のほとんど渡るは未だ中を出でざるなり。その尾を濡らす、よろしきところなしとは、続いて終わらざればなり。位当たらずと言えども剛柔応ずるなり。

象に曰く、水上に火あるは未済なり。君子はもって慎んで物を弁じ方におく。

初六:その尾を濡らす。吝なり。
   象に曰く、その尾を濡らすとは、また極を知らざるなり。
九二:その輪を曳く。貞にして吉なり。
   象に曰く、九二の貞にして吉なるは、中もって正を行えばなり。
六三:未まだ済(な)らず。行くは凶なり。大川を亘るによろし。
   象に曰く、未済の行くは凶なりとは、位当たらざるなり。
九四:貞だしければ吉にして悔亡ぶ。震ひてもって鬼方を伐つ。三年にして大国に賞せらるることあり。
   象に曰く、貞だしければ吉にして悔亡ぶとは、志行わるるなり。
六五:貞だしければ吉にして悔なし。君子の光あり。孚ありて吉なり。
   象に曰く、君子の光ありとは、その輝吉なるなり。
上九:飲酒に孚あり。咎なし。その首を濡らす時は、孚あれども是を失う。
   象に曰く、酒を飲みて首を濡らすとは、また節するを知らざるなり。


役に立つ言葉

力不足を不運と間違えるな

「未済」とは未完成、未だことならず、今一歩力不足、といった意味です。
「昨日のゴルフはついていなくて散々だったよ。ショートカットで果敢に攻めたらもうチョッとのところで木に当たってOBだし、ロングパットはカップをかすめて4パット、」なんてことを言っているあなた、間違えてはいけません、それは不運ではなく力不足なのです。何事によらず自分の実力の程を知っておかねばなりません。「もうチョッとで、、、、」は言い訳にしかなりません。

「子狐のほとんど渡らんとしてその尾を濡らす。よろしきところ無し。その尾を濡らすとはまた極を知らざる也。」
狐が川を渡るとき、しっぽを濡らさないようにピンとたてて渡るのだそうです。
子狐が川を渡ろうとしてもう少しのところで力が尽き尻尾を濡らし、流されてしまいます。もう一歩だったのに、と慰めてみても、目的を達せられ無かったのだから良いはずがありません。自分の力の限界をわきまえないからそういうことになるのです。
しかし、自分一人では能力不足でも皆の協力を得ると困難を乗り切ることが出来ます。協力を得るためには、そうです、まずは一杯やることです。

「飲酒にまこと有り。とがめ無し。その首を濡らせばまこと有れどもこれを失う。飲酒に首を濡らすとは、また節するを知らざるなり。」
酒が必要な時があります。君、ひとつ協力を頼む、と酒をついでまわる、力不足を酒でなんとかしようというのは褒められたことではないものの、真面目であればとがめられはせぬでしょう。が、その結果、「首を濡らす程」飲むようでは、皆の顰蹙をかい、協力は得られますまい。
そんなに酔ってしまうのは自分の酒の限度をわきまえず、節度もわきまえぬからです。そんな人は信用も得られません。
左利きのあなた、気をつけてくださいよ。


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