火風鼎  ーー巽下、離上
「安定。まつりごとの象徴。」
鼎は王の権威の象徴で、神を祭る三本足の器。運気盛大で諸事安定を得る。
とくに公の面での運勢が強い象。

中吉
鼎はもともとは、中に材料を入れ下で木を燃やして煮炊きする調理道具です。この卦は、鼎の形から安定という意味がありますし、食材を煮炊きして食べられるようにするその機能から、素材を役に立つように仕上げると言う意味や、人をもてなし喜ばせる意味もあります。
また祭事に使われることから高い社会的地位という意味もあります。
鼎が三本足で安定しているように、独善的にならず、人と協調して事にあたるのがよいでしょう。
この卦を180度ひっくり返した卦は「革」で、鼎をひっくり返して中身を全部外に出し、新しい食材で料理をつくり直す、ということです。
「雑卦伝」には「革は古きを去るなり、鼎は新しきを取るなり」とあります。旧習を改めるにしても鼎を代えるのではなく鼎の中身を新しくする、という意味を参考にすると良いでしょう。
(概説)
「願いごと」ーかなう。
「商ごと」ー成功して利を得る。
「相場」ー上がる。
「受験」ー好成績。
「病気」ー全快する。
「就職」ー願いかなう。
「恋愛」ー順調に進展する。
「天気」ー晴天。
「旅行」ーよろし。
「開業」ーよろし。
「転業、移転ーよろし。
「失物」ーすぐ見つかる。
「方角」ー南、東南。

「初爻変爻」の場合:
  調理を始めるにあたり、まず鼎をひっくり返して古い滓を捨てる、とあります。
  身辺に変化が起る時です。新しいことを始めるのに、まず過去の整理から始めることです。
  妾をとって後継ぎの子を得る、その行為の善悪は別として結果として咎めは無い、とありますが、参考までに。

「二爻変爻」の場合:
  過去のしがらみや身近な人の問題など何か障害が有って、力を発揮出来ないことがあります。
  まずそれを片付けてから新規課題に着手です。

「三爻変爻」の場合:
  火が強すぎて鼎の取っ手が潰れ料理が取りだせない、とあります。
  火力をゆるめて熱を冷ますことが必要です。

「四爻変爻」の場合:
  量や火力が過ぎて鼎の足が折れ、御馳走がひっくり返り、責任をとらされることになる、とあります。
  自身過剰や強引さに十分気をつける事が必要です。

「五爻変爻」の場合:
  これまでの努力が報いられる時です。偶発事故などに気をつけること。

「六爻変爻」の場合:
  盛運の時です。その維持に努力が必要です。


鼎は、おおいに享る。

彖に曰く、鼎は象なり。木を以って火にいれ、ほうじんするなり。聖人は享(ほう)して、以って上帝に享して、大いに享(ほう)して以って聖賢を養う。
巽にして耳目聡明、柔進んで上行し、中を得て剛に応ず。ここを以っておおいに享る。

象に曰く、木の上に火有るは鼎なり。君子もって位を正し、命をなす。

初六:鼎趾(あし)を顛(さかしま)にす。否を出すに利(よ)ろし。妾を得てその子に及ぶ。咎なし。
   象に曰く、鼎趾を顛にすとは、いまだもとらざるなり。否を出すに利ろしとは、以て貴に従うなり。
九二:鼎に実あり。我が仇疾あり。我に即(つ)く能(あた)わず。吉なり。
   象に曰く、鼎に実ありとは、之(ゆ)くところを慎むなり。我が仇疾ありとは、終に咎なきなり。
九三:鼎の耳革(あらた)まり、その行塞(ふさ)がる。雉の膏食らわれず。まさに雨降らんとして悔いを欠き、終に吉なり。
   象に曰く、鼎の耳革まるとは、その義を失うなり。
九四:鼎足を折り、公のそくを覆す。その形渥(あく)たり。凶なり。
   象に曰く、公のそくを覆す、まことに如何せん。
六五:鼎黄耳金鉉(きんげん)あり。貞に利ろし。
   鼎黄耳ありとは、中をもって実とするなり。
上九:鼎玉鉉(ぎょくげん)あり。大吉にして利ろしからざるなし。
   象に曰く、玉鉉上にありとは、剛柔節あるなり。


「鼎の軽重を問う」という諺があります。
権力者などがその実力を問われる、疑われる、という意味で使われますが、この出典は春秋左氏伝で、BC303年、勢いに乗る新興勢力の荘王が周の使者に対し、代々周に伝わる王の象徴である鼎をこちらに寄越せと言わんばかりに、その大小軽重を問うたのに対し、使者が「鼎の軽重は徳により決まるもの、力が有っても徳の無い者のところへは重くて動きません。」と答えた故事によります。
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