火雷噬盍(ぜいこう)  ーー震下、離上
「口中のせき肉(骨付きの固い肉)を噛み砕け。」
障害があって物事が思うままにならぬ状態。
口の中にある固い食物をかみ砕けば上下の歯が合わさりすっきりするように、果断に障害を排除して進めば運気が開ける。

中吉
この卦の形が、上顎と下顎の間に固いものが挟まっている形と見て、このような解釈になります。更に言えば、それが上歯にくっ付いているから余計に気持ちが悪く、噛み砕き難いのです。
対策ははっきりしています。障害となるものを見つけだし、それを取り除けばいいのです。
獄を用いるに利(よろ)し、とあるように、強硬手段をとる必要もあります。
ただ、何が何でも噛み砕こうとやみくもに頑張るだけでは歯を折るようなことになりかねません。理論、知略も必要です。
(概説)
「願いごと」ー妨害に会いかなわず。敢然とこれを排除すべし。
「商ごと」ー障害有りて進まず。
「相場」ー活況。
「受験」ー難問に苦しむ。ここを突破すればとおる。
「結婚」ー何かと邪魔があり、整い難い。
「病気」ー危険な状態。手術などにより回復の見込みあり。
「就職」ー困難。必死に頑張れば望み有り。
「天気」ー嵐後晴れ。
「旅行」ー難渋覚悟で出立つする象。用心すれば後はよろし。
「開業」ー障害あるも果断に実行すれば道は開ける。
「転業、移転」ー決然と目的を目指すときのみ吉。
「失物」ー見つかり難い。
「方角」ー南、東。
「色」ー赤
「初爻変爻」の場合:
  「足枷の刑で足首が傷つく。その程度の刑で反省すれば咎はない。」とあります。
  今のやり方は早めに中止し、傷を最小限にくい止めることです。

「二爻変爻」の場合:
  手強い相手です。ここは何とか深傷を負わないように策を考えることです。

「三爻変爻」の場合:
  「かたい肉を噛んで毒にあたる。」とあります。
  あなたが思っている以上に問題は難しく、苦労の割に成果が上がりません。無理せぬことです。

「四爻変爻」の場合:
  「かちかちの肉を噛んで金矢を得る。」とあります。手強い相手ですが、ここは踏ん張りどころです。
  諦めず突き進めば運気が開けてくるでしょう。

「五爻変爻」の場合:
  「乾燥肉を噛んで黄金を得る。」とあります。多少の困難はあっても努力により成果が上がります。

「六爻変爻」の場合:
  「首枷の重刑で耳が傷つく。」とあります。足枷の刑で反省しなかったツケが回って来たのです。
  今じたばたしても仕方ありません。自省することです。


噬盍(ぜいこう)は亨る。獄を用いるに利(よろ)し。

彖に曰く、頤(おとがい)中に物あるを、噬盍という。噬(かみ)盍(あわせ)て亨る。剛柔分かれ、動きて明らかに、雷電合して章(あきらか)なり。
柔は中を得て上行し、位当たらずといえども、獄を用いるに利(よろ)しきなり。

象に曰く、雷電は噬盍なり。先王はもって罰を明らかにし、法を整う。


初九:校(あしかせ)を履いて趾(あし)を滅(やぶ)る。咎なし。
   象に曰く、校を履いて趾を滅るとは、行かしめざるなり。
六二:膚を噬(か)みて鼻を滅(やぶ)る。咎なし。
   象に曰く、膚を噬みて鼻を滅とは、剛に乗ればなり。
六三:せき肉を噬(か)み、毒に遇う。少しく吝なれども咎なし。
   象に曰く、毒に遇うとは、位当たらざればなり。
九四:乾しを噬(か)み、金矢を得。艱貞によろし。吉なり。
   象に曰く、艱貞によろし、吉なり、とは、いまだ光(おおい)ならざるなり。
六五:乾肉を噬(か)み、黄金を得。貞なれども危し。咎なし。
   象に曰く、貞なれども危し、咎なし、とは、当を得ればなり。
上九:校(くびかせ)を荷いて耳を滅(やぶ)る。凶なり。
   象に曰く、校を荷いて耳を滅(やぶ)るとは、聡明ならざるなり。

「噬盍は亨る。獄を用いるに利し。」「先王はもって罰を明らかにし、法を整う。」とあるように、この卦は刑罰により社会の悪を正す、という意味に重きを置いています。
少し長くなりますが、この卦に係る「繋辞伝」の文章を紹介します。
子曰く、小人は不仁を恥じず、不義を畏れず利を見ざれば進まず、威(おど)さざれば懲りず。少しく懲らして大いに戒むるは、これ小人の福なり。易に曰く、校(あしかせ)を履(は)いて趾(あし)を滅す、咎なしとはこれの謂いなり。
善積まざればもって名を成すに足らず。悪積まざればもって身を滅ぼすに足らず。小人は小善をもって益無しと為して為さざるなり。小悪をもって傷(そこな)うなしと為して去らざるなり。故に悪積みておおうべからず、罪大にして解くべからず。易に曰く、校(くびかせ)を荷いて耳を滅す、凶なりと。
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