沢火革  ーー離下、兌上
「革命のとき。大人虎変、君子豹変。」
現状ががらりと変わるとき、あるいは、変えるとき。
大人虎変、君子豹変、という言葉は、ここに出てくる。改革のときは、躊躇せず、一気に進むことが肝心。
同時に大変な危険な状態にある時でもある。正道を持するところのみ道が開ける。

中吉
革は単に新しくする、ということではなく、古いものを捨てて一新する、という意味です。この卦を180゜ひっくり返して上下逆さまにした卦は「鼎」で、鼎をひっくり返して中に溜ったカスをかき出す、だから革と言う、とあります。易もなかなか面白いですね。
また革命は二者対立したなかから新しいものが生まれる意味で、勢力や意見の対立という意味も有ります。
現状をひっくり返し、強く進むことで運勢が開ける卦ですが、困難や危険が伴います。
(概説)
「願いごと」ー容易にはかなわず、相当の決断を以って進めばかなう。
「商ごと」ー従来のやり方を改め、覚悟して進めば好進展する。
「相場」ー波乱。
「受験」ーおもはぬ結果になることあり。
「病気」ー危険な状態。油断禁物。
「就職」ー方針変更がよろしい。
「恋愛」ー正面突破で様変りする。結婚は難しい。
「天気」ー荒れ模様。
「旅行」ー波乱の旅となるも、その覚悟なら出立つよろし。
「開業」ー決断をもってすればよし。
「転業、移転」ー決断をもってすればよし。
「失物」ー出ない。
「方角」ー西、南。

「初爻変爻」の場合:
  まだ時期尚早です。慎重に機の熟するのを待つことです。

「二爻変爻」の場合:
  まだ早いが、進むべき時ではあります。一歩一歩前進です。

「三爻変爻」の場合:
  行動の時期を見極める時です。時を失わぬように。

「四爻変爻」の場合:
  今実行の時です。気を緩めず進む時です。
  小さい功利の為に大きい目的を失うことの無いように。

「五爻変爻」の場合:
  発展の時です。大いに進むことができます。

「六爻変爻」の場合:
  収束を考える時です。


革は、已日(いじつ)をもって孚(まこと)とせらる。おおいに享り。貞によろし。悔亡ぶ。

彖に曰く、革は水火相息す。二女同居し、その志相得ざるを、革という。
已日(いじつ)をもって孚(まこと)とせらるとは、改めてこれを信じるなり。文明を以ってよろこび、大いに享りて以って正し。改めて当たれば、その悔い乃ち亡ぶ。
天地改まって四時成る。湯武の革命は、天に順い人に応ず。革の時、大いなる哉。

象に曰く、沢中に火有るは革なり。君子はもって暦を改め、時を明らかにす。

初九。鞏(かた)むるに黄牛の革(かわ)を用う。
   象に曰く、鞏むるに黄牛を用うとは、もって為すあるべからざるなり。
六二。已日にしてすなはちこれを革(あらた)む。征けば吉にして咎なし。
   象に曰く、已日にしてこれを革むとは、行きて嘉あるなり。
九三。往くときは凶なり。貞なれども氏iあやう)し。革言三たびなるときは、孚あり。
   象に曰く、革言三たびなるとは、またいずくにか之(ゆ)かん。
九四。悔亡ぶ。孚ありて命を改む。吉なり。
   象に曰く、命を改むるの吉とは、志を信ずればなり。
九五。大人虎変す。いまだ占わずして孚あり。
   象に曰く、大人虎変すとは、その文炳(へい)たるなり。
上六。君子豹変す。小人面を革(あらた)む。征(ゆ)くときは凶なり。貞に居るときは吉なり。
   象に曰く、君子豹変すとは、その文蔚(うつ)たるなり。小人面を革むとは、順もって君に従うなり。


(解説)
「大人は虎変す。君子は豹変す。小人は面(つら)を革(あらた)む。」
改革を断行するときの心得について、易はこのように教えております。
「大人」は一国の最高責任者、昔なら国王、今なら大統領か総理大臣でしょう。勿論盛徳の人です。
「君子」は諸候、高官。さしずめ大臣、次官といったところ。有徳の人です。
「小人」とは庶民。
会社で言うなら、「大人」は会長、社長。「君子」は役員。「小人」は一般の職員、といったところです。

虎や豹は夏から秋にかけて毛が生え変わり、その様は誠に鮮やかと言います。これが「虎変、豹変」です。豹より虎のほうがより鮮やかだということでしょう。

さて、改革に当たり、「大人」は虎のごとく鮮やかに、またその変わり様は虎の模様の変わる如く鮮明に、全てを一新しなければなりません。又それが出来るものこそ「大人」の器であります。このとき「君子」も、豹の模様の変わるが如く鮮やかに改革を推進して行かねばなりません。以前はこうだった、とか、誰がこう言ったとか、いろいろしがらみがあってどうのこうのとか、つまらぬことにとらわれずにパッと一新するのが「君子」の器量です。さすれば、「小人」も指導者のほうを向いて改革についてくるのです。
改革は常に強力な反対者があり、危険も伴います。しかしやらねばならない時にはこのように鮮やかに断行しなければなりません。問題は、何時やるか、です。

「革は已日(いじつ)にしてすなはち孚(まこと)とせらる。」
改革は時至り、機熟した時に実行してこそ人々の賛同を得て成功するのです。そして、今がその時、と的確に判断出来るものこそ「大人」であります。


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