天風逅
ーー巽下、乾上
「ふとした出会い。女王蜂のような女。」
正しくは「女」辺に「后」と書いて「こう」、逅と同音同義であるが、逅が単に道でひょっこり出会うのに対しこれは女に出会う意味がある。
今は盛運であっても衰運が忍び寄る象。心を引き締めて備えが必要。
思いがけず飛び込んできたうまい話、ふと出会った魅力的な女性など、要注意。
女難の象。何事によらず女に気をつけろ。
小吉
この卦は、「陽」ばかりの一番下に「陰」がひょこっと顔を出した形です。
「陰」は女でもありますが、易では陽がプラスの意味で考えられるのに対し陰は災難など運勢のマイナス事象で考えられます。これが思いもかけず向こうからやって来た、これが、この卦の意味です。
それが才色兼備の女性であったり、好調な運勢に思わぬ災難であったり、ということです。
しかも陽ばかりの中に一人で飛び込んでくる陰ですから、並々ならぬ強さを秘めています。五つの陽がこの陰に安易に気を許したりすると次第に勢力を伸ばして陽にとって代わられるぞ、という気持ちがこの卦には込められている、と言っていいでしょう。
「女の壮(さかん)なり。もって女を娶(めと)るにもちうるなかれ。」とも書かれています。
(概説)
「願いごと」ーかなわず。小事は思い掛けず通ることあり。
「商ごと」ー思わぬ支障があり、不首尾。
「相場」ー先行き下り。
「受験」ー不成績。
「病気」ー悪くなるおそれあり。ちゃんとした治療が必要。
「就職」ー思わぬ障害あって望みかなわず。
「恋愛」ーかなわず。無理に進まぬ方がよろし。
「天気」ー下り坂。
「旅行」ー思わぬ障害のおそれあり。中止がよろし。
「開業」ー見合わすべし。
「転業、移転」ー慎重を要す。
「失物」ー思いもかけぬところにあり。
「方角」ー西、西北。
「初爻変爻」の場合:
誘惑にかられても動かないこと。特に女に惹かれてことを起こすな。
「二爻変爻」の場合:
動かぬこと。隠し事、裏の話に気をつけろ。
「三爻変爻」の場合:
甘い話は断念すること。しばらくは好事少ない。
「四爻変爻」の場合:
邪魔されてうまく行かぬときや、うっかり好機を失うも自重を旨とすること。
「五爻変爻」の場合:
寛容の精神で、今少し時を待つこと。
「六爻変爻」の場合:
待切れず問題を起こすことがあるが、まあ、なんとかなるでしょう。
病気は要注意です。
逅は、女の壮(さかん)なり。もって女を娶(めと)るに用(もちう)るなかれ。
彖に曰く、逅は遇なり。柔剛に遇(あ)うなり。女を娶(めと)るに用(もちう)るなかれとは、ともに長がかるべからざればなり。天地相い遇いて、品物ことごとく章(あき)らかなり。剛中正に遇いて、天下大いに行なわるるなり。逅の時義大いなるかな。
象に曰く、天の下に風あるは逅なり。后をもって命を施し四方に告ぐ。
初六。金じに繋ぐ。貞なれは吉なり。往くところあれば、凶をみる。るい豚まことに滴躅(てきちょく)たり。
象に曰く、金じに繋ぐとは、柔の道、牽(ひ)けばなり。
九二。包(つと)に魚あり。咎なし。賓によろしからず。
象に曰く、包に魚ありとは、義として賓におよばざるなり。
九三。臀に膚なし。その行くこと次且(じしょ)たり。危うけれども大いなる咎なし。
象に曰く、その行くこと次且たりとは、行きていまだ牽(ひ)かれざるなり。
九四。包に魚なし。起(た)てば凶なり。
象に曰く、魚なきの凶とは、民に遠ざかればなり。
九五。杞(き)をもって瓜を包む。章を含めば、天より隕(お)つることあり。
象に曰く、九五の章を含むは、中正なればなり。天より隕(お)つることありとは、志、命を捨てざればなり。
上九。その角にあう。吝なれども咎なし。
象に曰く、その角にあうとは、上窮まりて吝なるなり。
(解説)
逅とは、勢いのある女。結婚の相手とするにはふさわしくない。
彖伝(たんでん)に曰く、逅とは(偶然に)遇うという意味である。、柔が偶然、剛に遇うのである。
女を娶(めと)るに用(もちう)るなかれとは、共に末永く暮らしていくことが出来ないからである。
しかし、天地、陰陽が出会って初めて万物が生まれ、この世界を美しく彩る。剛なるものが中心になる(遇う)ことで世の中が治まっていく。
逅の時、その意義は誠に重要である。
象伝(しょうでん)に曰く、天の下に風があるのが逅。風が天下に吹き渡り万物を養う如く、君(あるいは后)はその命令を天下にあまねく施行し国を治めなければならない。
初六。勢いに任せて走り出さないように金属の車止めにしっかり繋ぎ留めておく。
このように貞正であれば吉。進めば凶を見ることになる。
やせた豚でも全く飛び跳ねる。(まして大きくなれば手に負えなくなる。)
象に曰く、金じに繋ぐのは、そのままにすれば柔(小人)の道が君子の道を引きずることになるからである。
九二。苞(藁で包んだ)に魚がある。しっかり包み込んであるのは咎めがないが、それを客に出すのはよろしくない。
象に曰く、苞に包んで押し込んである魚は義として外の者に供するものではないからである。
九三。臀部に肉が付いていない。落ち着いて座っていることも出来ず、進み行くのもぐずぐずしている。
しかし大きくは進めないから大きい咎めはない。
象に曰く、その行くこと次且たりとは、初六の陰の方に行く気はあるが心惹かれているのではないからである。
九四。苞に魚が無い(目的のものが得られない)。行動を起こすのは凶である。
象に曰く、魚なきの凶とは、人と親しく接していないからである。
九五。柳の篭で瓜を包み込む。章(美しさ、魅力、才能、)を包み込んでおけば、思いがけぬ天の恵みがある。
象に曰く、九五の章を含むとは、その立ち位置も心も正しいからである。
天より隕つることありとは、天命を忘れず志を通すからである。
上九。角を突き合わせる。褒められたことではないが咎められることもない。
象に曰く、その角にあうとは、剛健すぎるのが褒められたことではないのである。
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