写真・カメラの基礎知識と理論
こんなこと誰も教えてくれなかった

名古屋で写真教室の講師を勤めています。
写真の基本的な知識についてまとめてみました。

◆ピントについて NEW!!
 カメラまかせの顔認証では、思いどおりにピント合わせができません。任意のフォーカスエリアを自分で選択するモードに切り替えることから始めましょう。
 また、動く被写体を追いかけながら撮影する場合を除いて、通常はフォーカスが固定されるモード(canonならONE SHOTモード)で撮影します。

(1)ピントはどこに合わせるか
 通常では、主役となる被写体に合わせます。風景の中に人物がいる場合、人物が主役なら人物に、建物などの背景が主役なら建物に合わせます。人物なら目に合わせます。向きが斜めなら、近い方の目に合わせます。動物や昆虫も目に合わせます。
 ただし、これは絶対ではありません。通常写真はピントが合ってる部分に鑑賞者の目が集まります。このことを理解しながらもあえて脇役にピントを合わせて、主役をぼかすような作品もあり得ます。また、そもそも何を主役にするかも、作者の意図によって変わってくることもあります。

(2)ピントはどこで合わせるか
 オートフォーカスのカメラでは、有効なフォーカスエリアを合わせたい被写体に持ってきて、シャッターボタンを半押しします。するとレンズのモーターが回転して自動でピントを合わせてくれます。合焦すると半押し続ける限りピントが固定されます。これをフォーカスロックと言います。ロックした状態のまま、カメラの角度を変えて最終的な構図を決めたらそのままシャッターボタンを全押しするとシャッターが切れます。このとき至近距離だとカメラの角度を変えるのを最小限にしないと、微妙にピントが後ろにずれてしまいます。ですから、合焦後の構図変更を最小限にするため、端の方のフォーカスエリアを選択して合わせたりします。被写体が十分離れてる場合は、ど真ん中のフォーカスエリアを使って合わせても大丈夫ですが、至近距離で寄って撮る場合は、合焦後の角度変更が最小限になるよう、だいたいの構図を決めたら一番近いフォーカスエリアを選択して半押しします。

(3)マニュアルフォーカスの場合は
 マニュアルフォーカスの場合は、ファインダー(フォーカッシングスクリーン)のどの部分でもピント合わせが可能です。構図を決めたら最後にピント合わせをして、そのまま構図を変えずにシャッターを切ります。特に至近距離の撮影では、ピント合わせをしてからカメラの角度は変えないように気をつけます。
 ピントは、中央のスプリットイメージやマイクロプリズムに頼らずに、周辺のマットな部分でピントの山を自分の目で判断するのがベストです。視力が悪い場合は、ファインダーの視度補正ダイアルか眼鏡等で補正する必要があります。

(4)オートフォーカスが苦手な場面
 撮影をしていると、どうしてもオートフォーカスでピントが合わないときがあります。
 @天体写真のように被写体が極度に暗い場合
 A明るくても明暗差のない均一な被写体
 B被写体の手前にガラスや格子などがあるとき
 C逆光
 以上のような状況では、マニュアルフォーカスに切り替えてピント合わせをするしかありません。普段からオートフォーカスしか使わない人は、いざというときのためにマニュアルフォーカスの切り替え方や合わせ方を確認しておいた方がいいでしょう。
 オートフォーカスでは通常合焦しないとシャッターが切れませんが、マニュアルにすればいつでも切れます。逆光はマニュアルでも合わせにくいですが、オートではシャッターが切れないことが多いので、その場合はマニュアルで何度も合わせ直しながら沢山撮っておくべきでしょう。

◆色々な設定について NEW!!
 デジタルカメラの場合、撮影前に確認すべき設定項目がいくつかあります。

(1)画像の保存形式
 画像の保存形式として最もポピュラーなものはJPEGです。JPEGは保存の際に、適度に均等にデータを破棄するので、モニターで見る分にはほとんど劣化させずに軽くすることができます。SNSなどネット空間で表示するのに向いています。
 一方で、全くデータを破棄せず、まるごと生の状態で保存してしまうのがRAWです。厳密にはRAWは保存形式の名称ではなく、保存状態(生)を表す言葉で、保存形式はカメラごとに様々です。RAWデータは、RAW現像ソフト(Photoshop Light Roomなど)で画質を調整して画像を完成させます。高画質に印刷したいときはRAWで、画質にさほどこだわらずネットで見せたいだけならJPEGに設定します。この場合、JPEG画像はカメラが自動的に作った画像、RAWデータは自分で画像を作り込む原データと考えてください。RAWから作り込んだ画像をJPEGで保存することは可能です。
 RAWは画像が非常に重いので、PCのスライドショーやプレビューで画像を表示させて選択するにはJPEGがいいので、通常は単独にしないで、RAW+JPEGに設定した方が便利です。また、高画質に印刷しないなら、JPEGだけで十分です。

(2)画像サイズと画質
 画像サイズ(画素数)を目的に応じて選択します。SNSなどにUPするだけならば、最小のサイズでいいでしょう。ハガキサイズぐらいに印刷するなら中くらいのサイズに。A3ぐらいのサイズに印刷するなら、最大サイズに設定します。Canonでは、L・M・Sという言い方をします。
 JPEGの場合、高画質か低画質かを選べます。ファインとかノーマルとかメーカーによって言い方が違いますが、JPEGは軽いので通常は高画質でよいと思います。

(3)ISO感度
 ISO感度は、撮影するときの明るさに応じて感度を設定することです。これもカメラまかせのオートにしないで、状況に合わせて自分で設定することをお勧めします。
 ISOは、低感度ほど高画質で、高感度ほど粒子が粗くなってノイズが発生します。メーカーにもよりますが、最近のカメラは800ぐらいまでは画質の劣化がわかりにくくなってます。夜景や花火の撮影では、暗くても三脚を使ってISO100で撮影するのが基本です。"流し撮り"など、わざとブラしたいときは低感度にします。明るくても、わざと粒子を荒らしたい場合は高感度にします。

(4)その他
 ホワイトバランス(色温度)は、カメラまかせのオートで十分です。ピクチャースタイルなどJPEGの色調補正は、ニュートラルか忠実設定など余計な味付けをしない方がお勧めです。モノクロにするのはお勧めしません。後からでも簡単に変更・調整できるからです。これらの設定は、RAW画像には全く影響ありません。
 その他、印刷時の画質にこだわるなら、色空間(カラースペース)はAdobe RGBに設定します。色空間とは、簡単に言えば、色を座標軸で表現する空間のことです。デフォルト(初期設定)では、sRGBになってます。ネット空間ではsRGBですが、印刷時にはより広い色域が表現できるAdobe RGBにした方がいいでしょう。Adobe RGBの方が、緑や青がより深い色が表現できます。ただし、最近のインクジェットプリンターは対応してるものが多いですが、モニターはある程度高価なものじゃないと対応してません(プリンターさえ対応してればいいと思いますが…)。またネット空間では対応してませんので、SNSに上げるときはsRGBに変換する必要があります。
 また、縦位置画像回転表示は、カメラではしないでPC上でのみする設定にしてください(できないカメラもあります)。デフォルトではどちらもする設定になってますが、カメラでしてしまうと画像が小さくなってしまいピントの確認などがしずらいです。カメラ自体を回転させればいいことですから。

(続く)

2020年4月1日更新 無断転載を禁じます