グレイラインを駆け抜ける電波 by BILL COX ZL2BIL

(要約)JA6DFN/ZL3IS

訳者前書き

電波は電離層に反射されて地球の裏側にまで届く。電波の周波数が高いと電波は屈折はされるが、反射までには至らず、電離層を通り抜けてしまい地球に戻ってこない。

周波数が低いと電離層で吸収されやすくなり、ある周波数以下の電波は地上に戻ってこない。その辺の変化は電離層の消長により変わってくる。

電離層は太陽の活動によってできるものなので、その強さは時間により、季節により、また、太陽活動の周期的変化(11年)により変わってくる。

時間的変化について言えば、太陽が照っている日中と、そうでない夜間とでは電離層(D,E,F1,F2層)の様子はガラッと変わる。その中間の昼夜の境目はどうかというのがこの記事の題目である。

地球上の昼夜の境目(グレイライン)に沿って電波が予想外に良く伝播することはグレイラインパスとして知られている。事実、日没直後、あるいは夜明け前に予期せぬような遠方の局と小電力で交信できることがあり、この時の感動は大きいものがある。

このグレイラインパスに関する記事"Running down the Grey Line "がBreak−In(NZART機関誌)2000年1・2月号に掲載されたので翻訳して勝手に掲載する。

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Heathkit HW-7

11月のNZART第69支部即売会が開かれる数日前、ヒースキットHW7が搬入前の点検のためセットされた。

その古いリグは何度もつながれたりはずされたりして、カバーする3バンド(40,20,15mバンド)で、ほんの数回ではあるがVK(オーストラリア)と交信できたものだが、首尾よく入手できさえしたらそんな日も来るように思われた。

その夕方、さらにもう一局VK(オーストラリア)と交信して、その日はそれまでだった。

しかし翌日の夕方、再びスイッチを入れ最後のワッチをすると日本のJE7局が信号強度7で入感した。実際に交信できるという期待はしてなかったが、コールサインを連打しK(どうぞ)と打った。

何と、JE7MFIは応答しこちらの信号は529というレポートだ。14MHzのすばらしい交信になった。後ほど交信時間をチェックして、ニュージーランド(NZ)−日本間のグレイライン時間帯にあたり、少なくともここから初めてのグレイラインパスによるDX(遠距離)交信であることが判った。


そこでグレイラインの不思議について本やインターネットで少し研究してみた。ここに結果を示す。

1982年版ARRLハンドブックとRSGBハンドブック第5版には目新しいことは何もなく、この種の伝搬について何の参考にもならないか或いは、少なくとも大したことのない過去の参考書だった。

大いに参考になったのはジョン・デ・ボルデール(ON4UN)のLow Band DXingの一節で、グレイラインとは何か、どのような働きがあるのかの判りやすい説明があった。

正確なグレイラインとは何か。それは薄明時(twilight)の日の出/日の入り両方の明暗界線の暗い方の地域を言い、明暗界線は夜と昼を分ける線として地球の周りに存在する。しかし、信じようが信じまいが太陽の中心が地平線下どのくらいの位置にあるかによって3種類のtwilight(薄明時)がある。

(1)常用的薄明時: 太陽中心が地平線下6°ニュージーランドでは30分で終わる。この記事で使われる「薄明時」はこれである。
(2)海事的薄明時: 太陽中心が地平線下12°で約1時間で終わる。
(3)天文学的薄明時: 太陽中心が地平線下18°でニュージーランドでは約2時間で終わる。

もちろん、ニュージーランドで日没の時、地球の反対側では夜明けであり、そこもまた30分の薄明時間帯がある。そういうわけで我々の目的に対して薄明帯は1時間の幅がある。

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太陽が沈み常用的薄明時から海事的薄明時になるとD層とE層は消え、F1層とF2層は1つになる。そして天文学的薄明時には、もはや太陽はF層(1つになっている)には影響せずD層、E層は消え、吸収限界周波数(ALF:Absorption Limiting Frequency)は下がる。しかしF層は最高使用可能周波数(MUF:Maximum Usable Frequency)が低下するほど十分には弱まっていない(高いところにあるから)。

D層による吸収がないので信号は薄明帯に沿った明確な通路(パス)を持ち、その30分間に明暗界線が動くにつれて、日没時間の同じ両地点では、新しい国が急に聞こえ始めたり、聞こえなくなったりするのである。

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NZにおいて、薄明帯の幅は約1時間だが、少し季節変化があり、夏がわずかに長く、冬は短い。地域差もあり赤道に近い方が数分短い。

多分、電波信号はグレイラインに沿った弦線を伝搬してくる。その場合、電波は送信機から低角度で発射される。しかし、地球に跳ね返ってくる代わりに、F層の弧に沿って何回か反射して薄明層を駆け抜け、希望を持って地球上の正しい地点に戻ってくる。

これがJE7MFIとの交信時にたまたま起こったのであろう。こちらのダイポールアンテナはわずか地上高4mで理論的には低角度発射には役に立たないことになっている。交信相手もまたダイポールアンテナを使っており、かなり地面に近かった。私はその時の走り書きノートをなくしてしまったので彼のアンテナの高さは判らないが大アンテナではなかった。

信号はこの場合、ショートパスで9300Km、又はロングパスで多分30900Km行ったであろう。何れにしても1.5ワットそこそこの信号がどのようにして日本にまで行ったかという説明はこれしかない。この課題についてはなおまだ多くの研究がなされるべきである。

通常の4又は5段の跳躍だと、そこに行くまでに信号は過度に減衰されてしまっただろう。しかし、信号強度(S)2の電信は容易に判読できる。


 

グレイライン伝搬を使うために必要な1つの重要な情報は日没と日の出の時間であり、それは地方新聞や図書館の日記帳や航海歴で見られよう。その月の任意の日の時間を知りたければインターネットの http://www.sunrisesunset.com に行けばよい。

あなたのQTH(住所)と緯度、経度などを入力すれば素晴らしく整った1カ月のカレンダーが毎日の日没、日の出時刻+薄明時間帯の長さ付きで得られる。1年の好きな月のカレンダーを手に入れることができるが、数カ月分印刷したところでプログラムは不意に終わってしまうので再コネクトしなければならない。

しかし、日没の正確な時間は真の時間と1分やそこいらの違いである限り重大ではない。約30分前から約30分後まで聴きなさい、正確な日没時間はその中のどこかにに入っている。そして、特に電信では、聞こえたらすぐ返事をすること、さもないとQRP(ミニパワー)の時はパイルアップの中に巻き込まれるか混乱の中に埋もれてしまう。

インターネットで2つの有用なプログラムが見つかりダウンロードした。「Grayline」は世界時計機能とNZが日没時に日の出を迎える国と逆のNZが日の出時に日没を迎える国のリストを与える。

これはどの国が実際NZ日没時に日没を迎えるかは示さない。位置のパラメーターは対蹠地のそれとして変えられ、そこの日の出がNZの日没時に日没を迎える国を与える。しかし、与えられた地球上のNZを通る日没線上の国は多くない。

何れの場合もDXのためには日の出/日没の反対側のコールサインを探しているのだ。

他の有用な道具は「Miniprop」で、交信可能周波数表を作ることとは別に、これ又日の出・日没時間、ショートパスとロングパスの距離、電波の跳躍数、発射角度、周波数割当表、周波数羅針図等々本当に多くのことを与えてくれる。

12月始め、Yaesu・FT101B/4Wの電信で挑戦し、もう一局日本と交信できた。JA4SZ・Kan/山口県でS3のレポートだった。この交信はまたグレイラインパラメーター内だった。

もう1つのグレイライン交信の成功例は100W近い出力だったがSH1AP(Ivan)との交信で、スエーデンのレーセの局だ。通常、ヨーロッパのこの地域からのレポートは100W出力でほとんどS5以下である。

何が急に聞こえてくるか判らない。薄明時に聴いてみよう、そして電鍵の上に手を置いて構えておこう。しかし思い出そう、日の出の交信時、世界の反対側にハムが居てそれも早朝夜明け前に聴いていなければならないことを。

他方、こちらの日の出時には、向こう側は日没で夕方のDX稼ぎに多くのハムがそこで耳を澄ましているのだ。QRPで素晴らしいDXを、そして私にブレークして下さい。

参考書:
@”The Twilight Corridor”「薄明回廊」, John Gabites ZL2AQ Break−In Jan/Feb 1989 P8−9
A”80m DX and other solar activity”,by John Seakins ZL1BDY Break−In Oct.1995 P4−8
B”Low Band DXing” by John de Voldere ON4UN
C”The Joy of QRP”, by Adrien Weiss W0RSP


訳者あとがき

原文”Running down the Grey Line”には、図や写真は皆無でしたが、ここでは理解を助けるために訳者が勝手につけ加えました。ヒースキットHW7の写真以外は、同じBreak−In(NZART機関誌)2000年1・2月号の記事"Mysteries of the ionosphere  by IAN POOLE G3YWX (reprinted from RadCom January 1999)"のものです。

また、地図上のグレイラインをリアルタイムで表示するMartin MinowのSimpleSunSphere を見ながら書きましたが、この地図から、夏の早朝、NZ−日本−Euがグレイラインでつながる時間帯のあることが分かります。さらに、太陽が南側にある冬はどうなるのか考えてみて下さい。冬に初めてこの記事をお読みになる人は、逆(南→北、冬→夏、早朝→夕方)を考えてみて下さい。The working of your mind is limited only by the bounds of your experience and the power of your imagination. 73 es GUD DX !  de JA6DFN/ZL3IS/K3IS

追記 上記 SimpleSunSphere は2009.01.24現在閲覧できないようです。Grey Line Mapをご覧ください。グレイライン概要Glance over Grey Line

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