【放言3連発】

◎馬脚を現した中山国交相

 緊張感をなくした政治家の素顔を見せ付けられた思いである。中山成彬国土交通相のことだ。
 農水相を辞任せざるを得なかった太田誠一氏の不規則発言が問題になったのはついこの前だ。それなのに、またも放言が飛び出した。
 閣僚就任の喜びと気負いがそうさせるのであろう。
 言わずもがなのことを不用意に話し、墓穴を掘る政治家ほどお粗末なものはない。中山氏が国交相就任後の会見やインタビューで語った、成田空港拡張工事に絡む「ごね得」、観光振興問題での「日本は単一民族」、そして大分の不当な教職員採用問題での日教組批判発言は、閣僚として云々する以前の、中山氏の政治家としての資質が問われる救い難い放言である。


 中山氏の発言は「失言」ではない。失言と放言は本質的に意味が違う。
 広辞苑によると、失言は「言ってはいけないことを、不注意で言ってしまうこと」だが、放言は「思うままに言いちらすこと」である。中山氏の場合は、明らかに後者であり、信念に基づく「確信犯」である。
 就任の喜びを味わう間もなく世論の批判の浴び、堂本千葉県知事や成田闘争の幹部、北海道のウタリ協会から面と向って厳重に抗議され、己の至らなさを恥じている姿は、これが民主党と食うか食われるかの戦い(総選挙)を前にした発足間もない麻生内閣の閣僚だとは、呆れてモノも言えない。日教組の抗議には本人は姿を見せず、事務方が代わって抗議文を受け取った。
 麻生首相が、日本の首相として晴れがましく国連総会で演説したその日に、霞が関では中山氏が釈明、謝罪に汲々としていたのである。
 中山氏は過去にも問題発言でやり玉に挙げられている。歴史教科書、従軍慰安婦、南京大虐殺に否定的な発言をしており、自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の会長を務める。
 中山氏は、誤解を与えた反省に立って職務を全うしたいと辞任の意思がないと言ったが、野党各党はもとより与党内からも辞任を求める声が出ており、首相の任命責任も問われ中で、自らの進退を決しなければ世論は収まらないだろう。

「反省に立って職務を全うしたい」と言ったところで、誰がその言葉を信ずるだろうか。釈明に追われる国交相が役所をリードする余裕などあるはずもない。国交省の官僚が、こんな中山氏をどんな目で見ているかは、旧大蔵官僚出身の中山氏が知らないはずはない。官僚の冷たさを十分知りぬいた政治家の発言とも思えない。
 国会が始まれば、中山氏が野党攻撃の矢面に立たされることは目に見えている。釈明、弁明を繰り返せば繰り返すほど政府が窮地に追い込まれることは間違いない。せっかく船出したばかりの「麻生丸」が座礁する前になすべきことは一つしかない。

08927日)