【臨時国会】

◎財政健全化の旗を降ろしたか

 今月2日発足した福田改造内閣は、改造の狙いを財政健全化に置くことに腐心したが、5日掲載した本ホームページの「福田改造内閣」では、個々の人事では必ずしもその目標が確たるものではないことを指摘した。
 「背に腹は代えられない」ということか。秋の臨時国会には原油高などに対応して大型補正予算を編成する与党の攻勢が強まっている。
 今年4−6月の国内総生産(GDP、速報)は実質で前期(1−3月)に比べて年率にして2・4%減と、4四半期ぶりのマイナスとなった。
 好調といわれた景気も輸出に依存した外需が引っ張ってきたが、その外需がおかしくなり、元々GDPの半分以上を占める主力の個人消費が振るわなかったのだから、景気の足腰が見た目より弱いことは明確だった。

低迷がはっきりした景気を持ち直そうと、政府は総合経済対策の策定を決めたし、与党が補正予算を組もうという気持ちになるのは当然だ。福田首相も景気対策の優先度が高いことを公言しており、政府は本腰を入れて景気対策に乗り出したと見て間違いない。
 だが、この景気重視が総選挙を意識したものであることははっきりしている。GDPが落ち込んだのは、地域の経済が不振となっていることであり、地域経済の変調は既に政府の月例経済報告や日銀等の地域経済動向調査でも浮き彫りになっていた。
 「地方重視」「国民の目線」での政治を掲げる福田内閣が、こんな景況を見て見ぬふりするわけにはいかない。

問題は財政健全化路線との兼ね合いをどうするかだ。
 総合経済対策は「財政、税制などの政策手段を総動員」とされ、物価への総合的対策、燃料負担の大きい業種への構造改善支援、中小企業への金融支援などが柱となるという。
 そして、「旧来型の経済対策とは一線を画す」としているが、対策の「スローガン」を決めただけで、中身がどうなるのかは分からない。
 総合的な経済対策といえば、財政・金融政策、企業の設備投資の前倒しに加えて、地方自治体も動員した公共事業の前倒し発注などが通り相場だった。
 そうした手法を取らない、というより取れないのが現実で、では代わってどんな手法が可能なのか皆目見当がつかない。
 「後で面倒見るから」と地方自治体に景気対策を求めることはもはやできないし、後で面倒見ようにも、肝心の地方交付税が先細りでは地方が、おいそれとは乗ってこない。
 八方ふさがりだが、何とかしなければならない政府の苦衷が明らかだ。
 政治的に見ても、蜜月の関係にある公明党も大型の景気対策を打ち出すよう主張している。その公明党が最近では福田内閣との距離を考え始めている。
 総選挙の結果次第では政界に大きな変革の波が押し寄せることは間違いないとして、新たな戦略を模索し始めているとも言われている。

福田内閣の経済政策のキーマンでもある与謝野馨・経済財政担当相は、景気対策の必要性を認めながらも、「財政健全化の枠内での対策」との立場だ。
 解散・総選挙をにらんだ与党の要求をうのみにすれば、景気対策は「バラマキ」にならざるを得ない。
 臨時国会は景気対策に加えて、首相が熱心な消費者庁設置法案、自衛隊のインド洋での給油活動を継続する補給支援特措法の延長など重要問題が絡み合っている。
 政府の総合経済対策の中身を注目したい。盟友の公明党に「がぶり寄り」されたままで政権の延命ができるとも思えない。

08814日)