【道路特定財源の流用】

◎乗せられた女性たち

 「女性の視点から道路の大切さを語ってほしい」

 土木工事の現場に女性の感性を取り入れて道路の大切さを訴える、こんな政治家や官僚の言葉にほだされたわけでもないだろうが、道路の建設・整備を主張する女性団体が全国に約70団体もあるという。
 この団体が世論の批判を浴びている。
 ホームページを開設して運動の成果を誇っていた団体の幾つかが、最近相次いでホームページを閉鎖した。一連の道路特定財源問題で批判の対象となったからだ。
 後ろめたさがないのであれば、堂々と批判と渡り合えばいいと思うのだが、そうもいかないと内部事情を知る関係者から連絡があった。

電話連絡をくれた知人は、涙を流さんばかりの声だった。
 「私たちは手弁当で活動しています。官庁さんからおカネをもらって運動しているわけでは決してありません」
 「確かにフォーラムが開かれるときの交通費は、実費だけいただきました」
 「分相応な会場設営に『何でこんな立派な場所で(フォーラムを)しなければならないの』と〃行政さん(国交省の地方整備局)〃に言いました」

彼女の言い分はよく分かった。
 役所の丸抱えの団体とは違い、一生懸命「生活道路」を良くするよう頑張っていることもそのとおりだ。だから、役所から「補助金」をもらって優雅な運動をしている団体とは全然違うことも理解できた。
 ならば、「自分たちの運動は違う」ことを一般の人に堂々と訴え、道路に名を借りたインチキ団体を批判すればいいのだが、それはできないという。

「今は何を言っても弁解がましく聞こえ、マスコミも聞いてくれそうもない」

自分たちを疑いの目で見ている一般の人に分かってもらうのは簡単ではない。彼女が属する団体が「行政と近い組織」であることは事実だし、行政との関係を断ってしまうことは今後の運動を難しくさせてしまうかもしれない。
 行政との関係に「後ろめたさはない」だけに、悩みも多いというわけだ。

道路特定財源の不正流用が次々と明るみに出る中で、全国的な道路整備の推進を狙う国土交通省や自民党道路族議員に「うまく利用された」(政府筋)ことがはっきりした。
 不適切な例を挙げるとこんなこともあるという。
 東京で開催された全国大会への参加は、「東京見物に行けるから一緒に行こう」とか、選挙時に団体名が入った法被を着て特定候補の選挙カーに乗って応援することは当たり前だ。NPOの形態を整えた女性団体が、多額の補助金を手にして羽振りを利かせる事実もある。
 シンポジウムや講演会に与党幹部や国交省の高級官僚がゲストとして出席、道路整備の必要性を会場に詰めかけた女性らともども誓い合う光景はどこでも見られる。
 与党幹部や高級官僚の参加は、女性団体のプライドを刺激、「政治参加」意識をいやが上にも高揚させるという。

 中心市街地での不必要な駐車場建設、道路啓発事業を名目にした「未知普請」(みちぶしん)の一環となるミュージカル公演、全国各ブロックでの女性団体によるシンポジウムや全国シンポジウムの開催には惜しげもなく特定財源が充てられていた。
 道路特定財源問題が噴出して以来、このホームページで職員旅行費や癒し系機器の購入、職員宿舎の建設、カラオケセットの購入など、信じられないカネの使われ方を紹介した。
 このところ出てきた道路啓発事業など広報活動費は、いわゆる特定の事業者やNPOを相手とした随意契約。どこまで自由気ままに道路財源が使われてきたか分かったものではない。

 女性参画の時代だ。女性が日常生活にかかわる分野に乗り出して、大いに行動、発言することは好ましい。
 だが、「○○みちの会」といった各地の女性団体の中に、国民の血税が惜しげもなく本来の目的とは程遠い使われ方に加担したものがいるようでは、せっかくの女性のエネルギーが悪しき使われ方がされたとしか言いようがない。
 掛け替えのない女性の役割を十分認識し、ゆめゆめ、政治家や官庁の巧妙な仕掛けに乗せられないよう願いたいものである。08325日)