【東国原知事の所信表明】

●東国原知事デビュー


 2月15日に始まった宮崎県2月定例議会の東国原英夫知事の所信表明は、まずまずの出来栄えだ。
 「新しい宮崎県のため全身全霊をささげる」は、官製談合で悪評を振りまいた反省に立ってのことで、そのためには「県民が一つになって」協働の実を上げようと呼び掛けた。
 「『てげてげ』では駄目だ」。「てげてげ」とは宮崎の方言で「ほどほど」という意味だそうだ。「てげてげ」と、曖昧にした結果が県政の信頼失墜につながった教訓を生かそうというものだ。
 県議会での晴れ舞台で緊張は想像以上のものであったろうと思うが、方言を多用した所信表明は聞く側を引きつけたようだ。
 「(宮崎県の)セールスマンとして全力をあげる」と言ったのは、自らトップセールスの先頭に立とうとの気概を示すものだ。
 知事の日々の仕事は分刻みに組み立てられている。庁内の仕事は幹部会議、庁内連絡・調整、関係部署からの説明などが連日続く。
 これに、外部からの訪問者のあいさつ、陳情もあるし、県内視察は、幹部職員を連れての地域住民との対話の場も各地で行わなければならない。一つひとつ、あげ切れないほどある。
 トップセールスは、県外向けの重要な仕事だ。企業誘致もあれば、地場産品の売り込みだってある。
 宮崎は、そもそも観光立県で名を馳せた。
 かつては「新婚旅行のメッカ」と言われたが、いまではその名もすたれてしまった。プロ野球の春季キャンプ地としても、後発の沖縄県に追い越されてしまった。
 国のリゾート法の指定第一号となった豪華施設も運営のまずさから経営が破たん、外資に買い叩かれてしまった。
 保守大国、惰性の県政が県の勢いをすっかり削いでしまった。官製談合事件も、そんな土壌で生まれたのである。
 宮崎県の借金総額は膨大な額に達している。国の景気対策に引きずられてつくった債務、そして手のひらを返したような地方交付税の削減など、借金の理由は様々だ。知事は、それをどうしようと言うのか。
 東国原知事は所信表明で、単年度350億円の歳出削減を行うと言った。知事の給与は20%カット、副知事は10%カットするという。
 350億円の削減は容易ではない。
 だが、削減ができるかどうかではない。
 いまや財政は削減しなければ、財政再建団体になって国の直接指導がなければ何もできない宮崎県になってしまう。
 歳出の大幅削減は、住民生活にかかわる政策に影響を与えることは避けられない。
 県民は県財政の厳しさを十分理解していないかもしれない。厳しい選択を突きつけられたとき、どう受け止めるのか。
 もう一つの問題は県議会である。
 総野党の議会は、その気になれば東国原県政を潰すことは可能だ。しかし、よく考えなければならないのは県民が東国原氏を圧勝させた事実である。
 県政に「是々非々で臨む」のは当然だし、「執行部と緊張関係を保つ」のも正論だ。その態度が、県民に分かるよう、納得できるようでないと、単なる「いじめ」と映ってしまう。
 所信表明が行われた15日の本会議場は傍聴者で埋め尽くされた。傍聴希望が多く抽選の入場となったが、外れた人は別室でテレビ中継で本会議の様子を見た。
 宮崎県の2月定例議会は異例ずくめだった。(07年2月16日)