【地方分権改革推進委の中間的な取りまとめ】

 霞が関の中央省庁は、そろそろ自らの役割を見直し、時代にそぐわない権限 に固執するのはやめて地方に裁量権を移したらどうだろう。今さらこんな言い方をしなければならない程、地方分権改革は進んでいないということだ。
 地方分権改革推進委員会(委員長=丹羽宇一郎・伊藤忠商事会長)が公表した分権改革の「中間的な取りまとめ」を読めば読むほど、そう思わざるを得ない。
 地方分権改革は、2000年の地方分権改革一括法を根拠とした「第1期」が小泉内閣の三位一体改革で一区切りがつき、今は「第2期改革」に入っている。第2期の焦点は、第1期で積み残しになった財政問題が中心となるのだが,国が地方に「あれやこれや」と関与する仕組みも、まだまだ一掃されていない。例えば、国が地方に肩代わりさせている事務(機関委任事務)は原則廃止されたことになっているが、国の関与の道が巧妙に残っている。
 それだけではない、小泉改革の柱なった三位一体改革(補助金廃止、税財源移譲、地方交付税改革)は、本来の目的から離れて国の財政改革にすり替えられた。大部分の地方自治体が財政面で青息吐息となったのは、補助金廃止に見合うはずだった税財源の移譲が得られず、さらに自治体の「虎の子」である地方交付税が改革の名の下に大幅削減されたからだ。
 自治体の中には行政運営面で厳しく批判されなければならないところもあるが、大部分の自治体のスリム・合理化は年を追うように実施され、十分とは言えないまでも、それ相応の成果を挙げている。
 半面、霞が関の改革はどうかといえば、公務員制度改革の論議がにぎやかなわりには、目に見えるような改革はなされていない。
 こうした現状を指摘しながら、分権改革の重要性を説いたのが今回の「中間的な取りまとめ」である。
 「取りまとめ」は、地方が主役の国づくりをするため立法・行政・財政権を有する「地方政府」を確立するとうたった。そして肝心の財源については、「6対4」となっている国と地方の税源配分を「5対5」とするのが現実的な選択肢とした 。「6」の仕事をさせられながら、使える財源が「4」では割に合わない。せめて、「5対5」にしてくれというわけだ。
 前述した国が自治体の仕事の細部まで干渉する「義務付け法令の抜本的見直し」は、分権改革を推進すると歴代内閣が約束しながら、個別、具体的な分野では一向に改善されていないことへの注文である。「義務付け」が自治体の行政運営の裁量を狭め、自主性を削いでいる実態はとっくに指摘されながら放置されていた。1例を挙げれば、保育施設の設置基準がある。
 さらに「取りまとめ」は、「医療」「道路」「河川」「農業」など7つの重点項目で問題点を指摘、その改革案を08年3月末までに検討結果を報告するよう求めている。
 分権改革委は、「取りまとめ」を作成するにあたって全国7カ所で地方分権懇談会を開いて市町村長らから生の声を聞いた。そして、地方の実情を頭に叩き込んで霞が関からヒアリングを実施した。そこでは、地方から提示された「支障事例」、すなわち分権改革を進める上で障害となる具体例を官僚に示した。
 「取りまとめ」は、グローバル化、情報化の進展で「国を一つの単位とする 中央集権型の仕組みの有効性が大きく揺らいでいる。それでも日本だけが国の意向に沿って一色に塗り固められた国の姿を目指すとしたら、それは脆弱性を増すことはあっても、強さを発揮することにはならない」と警告している。
 この文言の意味を霞が関の官僚が気付かないはずはない。気が付きながら自己の権益を守ろうとするのが、悪しき官僚の性癖である。そんな悪習をやめないようでは、分権改革の進展は望めない。内閣の政治主導が一段と求められていることを福田首相は肝に銘じなければならない。
 分権改革委は08年春以降、福田首相に提出する勧告に、この「中間的な取りまとめ」を反映させる。(07年11月24日)