【福田首相の所信表明】―分権改革の見通しはどうか(07年10月1日)

 福田首相が衆参両院本会議で行った所信表明は、小泉、安倍両内閣の改革路線を穏やかに修正する「温もりのある政治」を前面に押し出した。「改革疲れ」と「格差拡大」が表面化した中では、政治の目線を下げた穏やかな路線を選択せざるを得なかった。
 改革万能の小泉政治、理念を先行させたまま政権を放り投げた安倍政治の信用回復には、地味でも国民を安心させる必要があったからだ。それ故、全体的に見れば具体性に乏しかった点は否めない。そんな中で具体性はともかく、地方に目を向けた「地方重視」の考えを示したことは評価していいだろう。
 首相は格差問題について「実態から目をそらさず、きちんとした処方せんを講じることに全力を注ぐ」として、人口減少など地方が直面する諸々の問題に向き合う意欲を語った。
 生活の場としての魅力が薄れ、さらに人口が減る悪循環に見舞われている地域の活性化に何が必要なのかと自問し、地域再生の実施体制を統合、戦略の一元化や国と地方の定期的な意見交換の必要を訴えると同時に、地方と都会がともに支えあう「共生」、国から地方への権限、財源の移譲を指摘している。その上で、地方分権の総仕上げでとして道州制の実現に向け検討を加速させると明言した。
 これらは、これまでの政権が掲げてきた方針とさほどの違いはない。問題は、地方に対して、温もりのある政治や共生が具体的にどのように提示されるかである。総論は何とでも言えるが、各論は中央省庁との調整、ぶつかり合いを避けて通れない。機に応じて、政治判断を示し官僚機構の「守旧性」をたださなければ、期待は失望に変わる。
 福田内閣の「安定感」は永田町、霞が関レベルであってはならない。国民レベルで実感できなければ、単なる自民党内での権力のたらい回しとなってしまう。(07年10月2日)