【安倍内閣、最後の閣議】(2007年9月25日)

◎政治の現実

 安倍首相が、内閣総辞職を決めた最後の閣議に出席した。
 首相の在任期間は366日と、戦後登場した28人の首相のうち9番目の短さだった。政争に巻き込まれたり、スキャンダルで退陣したわけでもない。登場したこと自体に疑問はあったが、それを、何のてらいも無く実現させた自民党の旧態が責められなければならない。もちろん、安倍氏の政治家としての資質が問われなければならないのは当然である。
 安倍氏は年金、格差、テロとの戦いなど内外に山積する課題をそのままにして去ることに断腸の思いを吐露したという。
 昨年9月に内閣発足以来、「美しい国づくり」を掲げ、成長戦略を進めるとともに、教育、公務員制度、そして地方分権改革など、戦後の諸制度を大胆に見直す「戦後レジーム(体制)からの脱却」を進めてきた。その政治目標を自らの手で実現することが、この日であえなく潰えたのである。
 午前10時、花束を贈られ官邸を後にする安倍氏を官邸職員は寂しげに見送ったという。テレビに映し出された安倍氏の表情には全く精気が感じられなかった。最高指導者から一転、気弱な1人の政治家になってしまった。
 安倍氏は前日の24日、入院先の東京・信濃町の慶応大病院で短時間だったが記者会見し、「国民に多大なご迷惑をおかけした」と陳謝している。痛々しいほどの憔悴ぶりが、本人が言った「体力に限界を感じた」に表れていた。
 政治とは厳しいものだ。永田町は「福田新政権」に向けて走り出しており、安倍氏を振り向く様子はほとんどない。政治の冷徹な実相を示して余りある。(2007年9月26日)