民主党と全国知事会代表による道路特定財源・暫定税率問題に関する公開討論会.。右から東国原宮崎県知事、麻生・全国知事会長、菅・民主党代表代行(08年2月19日、東京・紀尾井町のホテル)

【道路問題の公開討論】@

宮崎は道路の空白地帯

 道路特定財源とガソリンの暫定税率の扱いを巡って19日、東京・紀尾井町のホテルで開かれた民主党と全国知事会による公開討論は、結局、互いに正当性を説くだけで議論がかみ合わないまま終わった。
 全国知事会を代表した麻生渡会長(福岡県知事)と、話題性のある東国原英夫宮崎県知事の主張は、道路整備に懸ける地方自治体の苦悩をにじませ、一方の民主党の菅直人代表代行は道路の必要性は認めながら、その整備決定の仕組みに問題があると指摘した。
 双方の主張は、それぞれに正しいし、聞いたものを納得させる。一概に「間違い」とは言えない説得力もある。だが、問題は仕組みの問題と地方が直面する個別問題をぶつけ合うだけでは、何の問題解決にはならないということだ。
 双方の言わんとするところを紹介しながら、問題の先を考えてみたい。(
回続き)

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 東国原知事は「宮崎は道路の空白地帯、高速道路の空白地帯」だと、全国的に見て道路整備が遅れている実態を具体的な数字を挙げた。

 「私たちは何十年も(ガソリンに関わる)税金を払ってきた。そのカネを使った道路整備は都市部で進み、今度は私たちの番だと思っていたら、財源は一般財源化する、暫定税率も廃止する。しかし、必要な道路を造ると民主党は言うが、信用できない」

 宮崎県が用意したデータによると、高速道路の整備計画のうち、供用開始、つまり利用できるようになった高速道は40%で、都道府県レベルでは43番目。宮崎県がいの一番に挙げる、東九州自動車道(北九州市から大分県を経由し宮崎県の沿岸部を通って鹿児島市まで)にいたっては、宮崎県内の4分の1が開通しただけ。残りは工事中と開通時期やルートさえまだ決まっていない状態。
 これでは「宮崎には高速道路はない」と言われても仕方がないと地元では言う。
 国道、県道の改良率は全国平均を10ポイントも下回る62%だ。
 こんな状態なのに道路財源を何にでも使える

一般財源化されでもしたら、新たな国・県道の整備に着手できないばかりでなく、現在整備中の個所の完成が遅れたり事業ができなくなる恐れがある、というもの。
 具体的には、暫定税率の廃止で県の道路予算714億円が278億円に減り、道路以外の予算を回せば医療や福祉に影響が出る。車の利用者がなぜ、一般財源に税金を払わなければならないのか、というわけだ。
 民主党が主張する「直轄事業の地方負担の廃止」があったとしても、暫定税率の穴を埋めることはできず、しかも、市町村分は直轄事業負担がほとんどなく、暫定分の減収は賄えないと切り捨て、もっと説得力のある具体的な対案を示せと不信感を露わにした。

 東国原知事の具体的な懸念に民主党の反論は、確かに総括的、全体的で、当事者の首長の不満を鎮めることはできなかった。知事の指摘に、会場に詰め掛けた知事会が陣取る席から応援の拍手が何度か上がったが、あまり元気のいい拍手でもない。それ以外の聴衆からの反応は特にない。聴衆の反応がもっと熱いのではないかと期待していたのだが。

 菅代表代行の言わんとしたのは、道路整備計画の透明性、公正さが現行制度では全く期待できないということである。その制度を今後10年間、総額にして59兆円の資金を使うことは、昨年暮れに閣議決定した道路整備中期計画の中身を黙認して、国交省が言うままを追認することだとかわした。

 道路特定財源が、道路整備とは全く無縁の使われ方をしていることが次々と明らかになっている。その都度、冬柴国交相は釈明、改善を約束させられている。金額は大したことはないとはいえ、カラオケセットや癒し機器の購入が職員慰安のためだったり、何百億円もの資金を投入した地下駐車場の建設などは、道路整備を本来の目的とした特定財源の対象ではなく、その不明朗利用頻度、付近の民間駐車場との兼ね合いを考えても、無駄遣いであることに変わりはない。
 国民の感情を逆なでしたのは、そういった施設が国交省の天下り人事の受け皿となっている事実である。
 社会保険庁のデタラメぶり、苦し紛れの言い訳を私たちは嫌やというほど聞かされた。社保庁は「解体的」な出直しをすることになっているが、どれ程の国民がまともに聞いているか疑わしい。そうした霞が関に対する不信感が充満する中で、道路特定財源問題が火を噴き、財源の悪しき流用が次々と露見したのである。(
08223日、続く)