内閣支持率】

◎「秋の日は釣瓶落とし」のようだ

 発足してまだ3カ月だというのに、福田内閣の支持率が急落している。主要メディアの世論調査は直近の前回調査から軒並み10ポイント以上も落ち、30―35%程度にとどまっている。もちろん不支持はこれを大きく上回り、ひいき目に見ても内閣が末期症状を呈していることは明白だ。
 新政権は、少々問題があっても発足から100日間は国民も大目に見てくれると言われるが、何故、こんなことになってしまったのか。

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 今年9月下旬、「体調不良」で突然政権を放り出した、いかにも未熟な「ツッパリ」の前任者の後を引き継いだ福田氏が、周りの意見をよく聞いて調整型の政治を始めたことへの安心感は、確かにあった。
 その安心感は、政界の世代交代の振り子を戻す安堵感を与党の領袖や幹部のベテラン議員にもたらしたことは間違いない。だが、この安堵感が、民主党代表の辞意表明というハプニングはあったものの、7月の参院選勝利の余勢を駆る民主党の攻勢に対して、さらなる勢いを許す甘さを持っていた。

 インド洋での多国籍軍への給油を可能にする「補給支援別特措法」の取り扱いに加えて、防衛省の武器調達に絡む贈収賄事件や参院選での公約順守を疑わせる「年金記録問題」、さらには「薬害肝炎問題」と、福田内閣を矢継ぎ早に難問が襲った。
 
政権が磐石であれば、こんな問題はタイミングを捉えた政治決断で乗り越える力量を示すのがこれまでの保守政治の強みだった。だが、「官邸主導」「政治主導」を言いながら、その実、霞が関の官僚を抑えきれない永田町の実態は、小泉政権で崩れた自民党内の力の均衡(バランス・オブ・パワー)が、難問に対して極めて無力なことをさらしているのである。

 「政治主導」は派閥政治が華やかだった時期は、あえて口に出す必要もなかった。しかし、強力なリーダーシップで派閥を率いた「三角大福中」(三木武夫、田中角栄、大平正芳、中曽根康弘各首相)以後は、派閥領袖とはいえ名ばかりで実質的な統率力・求心力はなくなった。党内の実力者でもない小泉氏が「自民党をぶっ壊す」と叫んで政権を手にしたのも、「マイナー」な小泉氏をねじ伏せる力が派閥になかったからにほかならない。

 福田内閣に毅然とした政治信念が希薄なことは、先日、本ホームページの「エッセー・雑感」の「嘆かわしい政治」で書いた。「発言の重み」を求められる政治家の、それもリーダーたるべき政治家の、あまりにも軽はずみな発言がもたらす重大さを指摘した。問題を問われて、「他人ごと」のような言葉を繰り返す首相に国民が厳しい判定を下すのは当たり前だ。

 その福田内閣が初めて手掛けた平成20年度予算の政府案が固まった。この予算案にも内閣の迷走ぶりがはっきりと表れている。歳出要求に対して内閣が与党の要求に押し切られたことに、それが表れている。
 「協調型政治」を掲げた首相は、参院選惨敗からの立ち直りを狙う与党の攻勢を防ぎきれず、財政再建に欠かせない増税論議を早々と封じ込め、挙句の果ては「地方の反乱」を鎮める与党主導の「ばら撒き」を認めてしまった。「認めた」というより「放置した」のかもしれない。

70歳以上の医療費の自己負担増を一時凍結したが、その見返りとして本年度の補正予算で1700億円を盛り込み、農家への助成では生産調整に応じた農家への補助金を補正予算で800億円積み増す「裏技」を使った。補正予算で潤沢に手当てされ、来年度予算はこれまでどおりの財政再建路線を印象付けている。財政再建の帳尻合わせで編成されたのが来年度予算案である。
 来年度予算編成作業で異例だったのは、担当大臣の額賀財務相が防衛省の武器調達疑惑の渦中にあって、野党攻勢の前に実質的な予算編成の指揮を取れなかったことである。財務省原案について額賀氏は「原則を曲げずに歳出改革に取り組んだ」と胸を張って見せたが、額賀氏の役割をどれだけの人が認めているのかは疑問だ。(071222日)