【自民総裁選・福田内閣発足】(2007年9月24、25日)

 自民党総裁選は福田候補が麻生候補に大差をつけて勝利した。
 福田330票(議員票254票、都道府県票76票)、麻生197票(132、65)と、事前の予想通りの福田勝利だが、予備選を実施した都道府県の投票結果は麻生票が上回り、議員票も8派閥の支持を取り付けたにしては福田氏の得票数は想定票を下回った。
 その予兆は確かにあった。
 党内の圧倒的支持を取り付けた福田氏だったが、最終段階になってようやく政策に若干味わいが表れたが、それに至るまでは内政、外交についても総論、抽象論で、何をしたいのかはっきりしなかった。
 「まだ(総裁、総理に)なったわけではない。なったらよく考える」では、マニフェスト以前の話だ。仮にも首相を目指す政治家が、「なったら考える」などと言うものではない。
 自ら先頭を切る能動的な政治家ではない福田氏らしい言い方だが、閉塞感に不満を持つ国民の意を汲んだものとは言えない。
 「安定感がある」は、いわば、安倍政治の突っ走りに対する反語で、それを期待する国民が少なくないことは事実だ。
 対する麻生氏は、閣僚、党役員ポストをこなしてきた経験、実績もあって、演説には具体性があり説得力も福田氏を上回っていた。「麻生コール」が東京ほかの場所で沸いたのも、脱線発言が時として出てくるマイナスを埋めるアピールがあったからだ。
 2001年の自民党総裁選で、小泉純一郎氏が予想をひっくり返して橋本龍太郎氏を敗ったのは、地方での小泉人気が東京・永田町の常識を覆したからだ。
 今回は2001年の再現はなかったが、どんな言い訳をしても、派閥の動きがはっきりと表れた。党4役の人事にしても、「先祖帰り」の色彩が濃い。福田政権は内外の懸案を挙げるまでもなく、「平時」の内閣ではない。果断な政治を求められるのは間違いない。

 25日、福田内閣が発足した(正式には皇居での認証式を終えた26日)。
 閣僚は党役員への転出で空いた文科相の新任と防衛、外務相の入れ替え、外相から官房長官への横滑りだけで、ほかのポストは全員再任である。
 臨時国会の真っ最中で起きた自民党の事情でできた政治空白を埋め、参院の多数を占めた野党対策を考えるまでもなく、閣僚の大幅入れ替えをしていては国会論戦を乗り越えられない。
 「懸案を一つずつ乗り越える」をキーワードにする地味な福田政治の始まりだ。(2007年9月26日)