「ビジョン懇の道州制中間報告」

◎足元の論議が足りない

 政府の「道州制ビジョン懇談会」の中間報告がまとまった。
 骨格は(1)おおむね十年後の二〇一八年までに道州制に完全移行(2)中央集権型国家から地域が独自の主権を行使できる「地域主権型道州制」(分権型国家)へ転換(3)そのための道州制基本法案を三年後の二〇一一年の通常国会に提出―である。
 中間報告のターゲットは中央集権体制の打破だ。東京一極集中による地方の疲弊と地域間格差の拡大、そして巨額の財政赤字。グローバル経済という世界の潮流に背を向ける霞が関の過剰な管理と縦割り行政で、日本は国際競争力を弱め経済の停滞を招いた、などと指摘した。
 こんな救い難い現状から脱却するには、東京一極集中から繁栄の拠点を多極化して、日本全体の活性化を目指さなければグローバル化の世界に対応できないと強調した。

 国と地方の役割を明確にすることは分権改革の基本だ。
 国にしかできない役割を外交、安全保障、金融など国家の存立に欠かせない十六分野に限定、それ以外の広域の公共事業・公害対策、経済・産業政策や市町村間の財政格差の調整など国民生活に深くかかわる仕事は道州が担うべきだとした。
 同時に、道州が霞が関や都道府県の組織のしがらみを引きずったままでは意味がないとして、道州議会に広範な立法自主権を与え、首長と議員は直接選挙とする。
 最大の難関とされる道州の区割りは、これまでの論議を踏まえ二年後の最終報告までに基本方針を検討する、と先送りになった。

 今回の中間報告で、道州制の青写真はほぼ出そろった。一昨年二月、地方制度調査会が「導入が適当」と答申、全国を九、十一、十三ブロックに区分けする案を例示した。これを機に道州制論議が活発化した。
 自民党の道州制推進本部が近くまとめる第三次中間報告の「たたき台」として示した「限りなく連邦制に近い道州制」は二〇一五年から一七年の導入をうたい、日本経団連は「道州制は究極の構造改革」として二〇一五年導入を提言した。

 ビジョン懇は昨年一月、安倍前内閣の下で発足、「戦後レジームからの脱却」の一翼を担った。
 ビジョン懇の中間報告を含め、いずれの提言もばら色に彩られ、道州導入の時期が設定された。
 ところが、肝心の都道府県や基礎自治体の考えは固まっていない。加えて、国民的な関心も極めて低調だ。「身内」の論議だけが先行して、道州がなぜ必要なのか国民への説明が足りないからだ。
 道州制は分権改革の到達点である。足元の分権改革を素通りした道州論であってはならない。(20080401日)