(56)―「新分権委発足」

◎官僚の横車を許すな


 三位一体改革に続く「第二期分権改革」の先行きを占う地方分権改革推進委員会が発足した。関係閣僚による地方分権推進本部(仮称)を設置して、安倍晋三首相自らが本部長となって「内閣の最重要課題」に取り組むという。
 首相の意欲は評価できる。関係閣僚も官僚任せにしないで分権改革を着実に進めるよう、首相ともども政治主導の証しを見せてほしい。曲がりなりにも、官僚のわがままを許すようなことがあってはならない。
 第二期分権改革の前に立ちはだかる最大の難問は中央省庁の「抵抗」と言っていい。
一九九五年からの第一期六分権改革に取り組んだ地方分権推進委員会は、機関委任事務の廃止という成果を上げながら、地方税財源や国の権限縮小に立ち入ることはできなかった。そして、その後を引き継いだ地方分権改革推進会議は成果どころか空中分解してしまった。
中央省庁のてこでも動かない権益保持と、それに引きずられた族議員の抵抗が、首相の指示で誕生した権威ある組織を「換骨奪胎」したのだ。
分権改革を取り巻く環境は確かに変わった。見るべき成果はなかった三位一体改革だったが、全国知事会など地方六団体の国に対する攻勢は、もはや押しとどめることはできなくなった。
国と地方の権限・財源の奪い合いと揶揄(やゆ)された分権は国民を巻き込んだ潮流になりつつある。加えて、道州制論議は否応なしに分権意識を高めないではおかない。
旧分権委は当時の首相から「実現可能」という制約を課せられ十分な仕事ができなかった。こんな歩みを経て安倍内閣の下で分権改革推進委員会が動き出したのだ。
委員長には経済界の新しい顔・論客の大手商社、伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎氏が就任。委員長代は改革派知事として活躍した岩手県知事の増田寛也氏が就いた。分権改革推進委の任期は三年だ。この間に地方財政の自立に向けて国と地方の役割を審議して首相に勧告しなければならない。
作業時間は限られている。勧告を基に分権改革推進計画が作成され、新たな分権一括法ができる。
安倍首相は分権改革推進委の初会合で「地方の活力なくして国の活力はない」と語った。まさしく、首相の言うとおりだ。そのために国の権限を必要最小限にとどめ、それ以外は地方の裁量に任せることが必要だ。
中央省庁の第二次再編が取りざたされているのも、分権改革の先行きを見越したものだ。ところが、霞が関の論法は違う。
財務省は地方の歳出改革、地方行革が先決という立場だ。分権改革推進委に対する素早い動きは各委員への牽制と見ていいだろう。
 改革推進委は五月中に改革の基本的な方針をまとめ、それにあわせて関係閣僚による地方分権推進本部が設置される。
 改革推進委の自主性を担保するためにも、官僚の横車を許さない政治主導を期待したい。 (07年4月20日付)