(55)―「07年地価公示」

◎勝ち組と負け組がはっきり

 国土交通省が発表した今年の公示地価は、好調な経済を背景に全国平均で住宅地が0・1%、商業地が2・3%それぞれ上昇、バブル経済期以来十六年ぶりにプラスに転じた。
 東京、大阪、名古屋の三大都市圏の一等地の急上昇と地方圏でも中核となる都市の上昇が全体を引き上げた。一昨年以来の不動産投資が一段と活発化している状況が浮き彫りになったもので、特に三大都市圏の商業地の突出した上昇はミニバブルの様相を感じさせる。
 一方で、地方の中小都市を含めた大部分の地点は下落となった。地方の下落率は縮小したが、地域間格差が一段と明確となったのも今回の特徴だ。
 地価は経済の実態を示す指標の一つである。今回の公示地価は、戦後最長の景気拡大が大都市を中心に地価の動意を浮き彫りにした。
 大都市部などでの40%を超える上昇率は、当の国土交通省でさえ説明ができないほどだ。次々と完成する超高層ビル・マンションは、旺盛な土地需要を実感させる。
 だが、この二、三年来の特徴は利用価値、収益性が評価の基準となり、土地の持つ潜在的な可能性が物差しとなったのである。
 地方圏の中核都市以外でも注目される動きが表れている。例えば、北海道函館市や茨城県守谷市などはその好例だ。
 函館市の場合は、高速フェリーの就航や北海道新幹線の完成を見越したもので、守谷市のケースは「つくばエクスプレス」沿線での土地需要の高まりが地価を押し上げた。
 地域間格差を都道府県別で見ると、青森県の商業地は7・8%の下落で昨年の二けたマイナスは脱したものの、全国ワースト2(最下位は秋田県)。八戸市は住宅地、商業地とも県平均をさらに上回る下落率を記録した。景気低迷の影響がストレートに地価に表れた形だ。
 山口県は住宅地が3・8%、商業地が4・6%それぞれ下落。商業地は周南市みなみ銀座がマイナス15%で、昨年に続いて全国ワースト10に名を並べた。
 このような大都市と地方、さらに地方圏の中で明確になった地価のダブル格差は、地域活性化の課題に難問を突き付けたようだ。
 総務省や国交省は、低迷する地価が中心市街地の活性化などの地域再生の緒施策の足を引っ張りかねないと心配している。
 公示地価は一般の土地取引の指標になる。大田弘子経済財政担当相は、公示地価は利用価値を反映した構図だとしてバブルという見方を否定した。
 だが、都心地区の実勢価格は公示地価を大幅に上回る水準にあると専門家は見る。既に、ミニバブルの状況と警戒すべき段階にきている。高騰の波がいつ押し寄せるか分かったものではない。
 地価の急伸と下落が国民生活に新たな重しとなるかもしれない。社会的格差が問題化する中で、地価にも「勝ち組」と「負け組」がはっきりした。重層的な土地政策が求められているのである。(07年3月27日付)