(52)―「全国知事会の道州制見解」

◎次は自治に立脚した戦略だ 

 全国知事会の「道州制に関する基本的考え方」がまとまった。
 基本原則として、道州制は/(1)/地方分権を推進するためのもの/(2)/省庁の解体再編を含めた中央政府の見直しを伴う/(3)/内政に関する事務については、広範な条例制定権を確立する/(4)/区域は地理、歴史、文化的条件や地方の意見を考慮する―など七項目を挙げた。その上で今後の議論に当たって、国と地方双方が共通の認識の下で政治主導による検討がなされなければならないとした。
 つまり、統一見解は道州制導入の是非論に踏み込まなかったのである。
 安倍内閣は道州制担当相を置き、三年以内のビジョン策定を目指している。一方、自民党の道州制調査会も五月の報告書策定に向けて近く具体的論議を始める。そんな状況を見ながら、知事会が道州制の「あるべき姿」や「枠組み」を避けた「基本的考え方」を示したのは、知事会に慎重論が強かったからだ。
 昨年七月の松江市での全国知事会議では、「道州制導入の必要がある」とした特別委員会報告が提出されたが、「慎重な結論」を求める意見が出て、さらなる検討を続けることになった。
 その検討内容を最終的に討議、結論を出すのが今回開いた臨時の全国知事会議だった。だが、特別委が示したのは「あるべき道州制の姿(案)」。内容も「道州制の制度設計について」「道州制検討の進め方について」と、明らかに道州制導入を色濃くにじませていた。
 このため、道州制への慎重・反対派知事が反発、結局、「あるべき姿」は「基本的考え方 」に修正され、道州制の導入や実現を表す原案の文言はすべて削除、差し替えられた。
 知事会が最終的に内閣や与党の動きに乗らなかったのは分権改革への反省があるからだ。これまでの分権改革は、地方団体が期待するものとは程遠い内容だった。昨年暮れに成立した北海道を対象とした道州制特区推進法も、鳴り物入りで構想が検討されたが、権限移譲や財源の自由度が大きく限定され、法律の実験的意味合いは薄れている。これが政府、与党への不信感を増幅させた。
 それ故、統一見解は、地方が想定する道州制に背馳(はいち)しないよう、議論の前提を明確にするものに落ち着いた。問題点を明らかにしながら国と地方の論議を積み上げていく。そして道州制の本題に入る、とかわしたとみていい。
 道州制論議の歴史は古い。関西経済連合会が提唱して丸五十四年になる。だが道州制のイメージは、相変わらずさまざまで具体的な共通項が見いだせないでいる。全国知事会の「基本的考え方」は、拙速を避けたと評価できる。だが、それに「安住」してもらっては困る。
 道州制を、単なる行政区域の再編を超えた分権改革の土俵の上で一から論議し、政治判断を引き出す戦略が必要になる。それが全国知事会に求められていることなのだ。(07年01月22日)