(51)―「地方分権担当相」

◎担当相の役割が見えない 

 地方分権改革担当相が誕生、菅義偉総務相が兼任することになった。地方分権改革推進法(分権改革法)が昨年十二月に成立したことを受けた措置で、政府は、新地方分権改革一括法制定に向けた取り組みを加速させたい考えだ。
 菅氏は「(分権改革に)新たに決意を固めている」と語った。分権担当相として改革意欲を示したが、二〇〇七年度以降の第二期分権改革の道は生易しいものではない。なぜなら、今後に控える新一括法の取りまとめには各省の強い抵抗が避けられないからだ。
 分権担当相ができたから、地方分権が進むとみるのは早計だ。権限、役割が総務相とどう違うのかがはっきりしない。これまで以上に政治主導が求められる場面が出てくるのは間違いないのだから、安倍晋三首相の目配り、気配りが一段と必要となることを忘れるべきではない。
 国と地方財政の三位一体改革後の道筋は明確でない。安倍内閣の分権改革に対する地方の信頼は大きくない。夏の参院選を意識した分権担当相設置と受け取る声も少なくない。
 昨年七月の「骨太の方針2006」に盛られた分権改革の方向は、三位一体改革を主導した竹中平蔵前総務相が、当時の自民党執行部を説得して作成した労作である。
 例えば「国と地方の役割分担に関する法令の一括見直し」は、“ポスト小泉”を見通した竹中氏が敷いたレールで、補助金廃止や交付税改革を念頭に置いたものだ。米国流合理主義者の竹中氏にとって、改革は歴代政権が放置した国と地方の関係を、小泉純一郎前首相の後ろ盾を得ながら明確にすることにあった。
 国の地方への過剰な関与、地方の国への依存は行政の責任をあいまいにした。この不健全な関係は「そうすることが互いに都合がよかったからだ」と竹中氏は言った。
 時代は変わった。問題は一九九五年の旧地方分権推進法から二〇〇〇年までの第一期改革の教訓や経験を、これからの第二期分権改革に生かす環境整備だろう。
 分権改革法は三年の時限立法だ。政府は三年以内に「新一括法」を策定しなければならない。新年早々にも発足する地方分権推進委員会が一括法の策定に当たるが、待ち構える中央官庁との折衝は三年間という短期間の勝負だ。五年をかけた旧法ほど時間はない。
 新一括法の焦点は、補助金の廃止となるだろう。加えて、税制改革による地域偏在の是正がある。第一期改革の機関委任事務の廃止を上回る大変革が次の課題なのだ。
 第二期改革の成否は、政治家が主導する改革本部をつくり、その下に有識者の組織を置くことだ、と西尾勝二十一世紀臨調共同代表は強調する。有識者が改革案を作り、政治が官庁に実行させる仕組みでなければ成功しないという。第二期改革は担当相の設置で安心できるほど単純ではない。これまでの内閣以上の指導力、見識が問われるのである。(2007年01月05日付)