(50)―「知事会が談合防止指針」

◎体質改善に知事は全力を 

 三知事が逮捕された官製談合事件を受けて、全国知事会は談合防止策の指針を決定した。指名競争入札の早期廃止や、一千万円以上の公共工事は原則一般競争入札にすることを柱としている。内部通報制度の整備、中堅幹部以上の職員の再就職に関する基準明示、不正業者の入札参加停止期間の延長など国への要望―も盛り込んだ。
 岐阜県の巨額の裏金問題と歩を合わせるように発覚した福島、和歌山、宮崎各県の公共事業をめぐる官製談合事件は、知事を頂点とした組織の中枢で犯罪が繰り返されていることを浮き彫りにした。一九九三年のゼネコン汚職の教訓が生かされない地方自治体のあしき体質が、当然のように温存されていたのだ。
 「統治能力が疑われる」「地方分権を言う前に自らの体質を正せ」と世論の厳しい批判を浴びたのも当然だ。信頼回復には厳しい対策を打ちだすしかないと判断した知事会は、一カ月足らずで指針をまとめた。
 談合防止策検討チームの座長を務めた上田清司埼玉県知事は「ハードルを高い内容にした。実行されれば『天の声』を出せないだろう」と自信をのぞかせた。
 確かに指針は、指名競争入札の「廃止」を明確にし、一千万円以上の工事を「原則一般競争入札」とするなど、現状で考えられる最大限の対策を列記した。それくらい思い切った対策を提示しないと世論が納得しないと考えたからだ。
 だが指針に拘束力があるわけではない。各知事は了承したが、内心では「地域事情が別にある」と考えているかもしれない。公共事業が果たす役割は、大都市部と地方の中小都市・農山村地域で事情が違う。地域経済に占める比重も一様でない。各知事は指針を参考にして独自の改善策をつくることになるだろう。
 一方、官製談合事件であぶり出された選挙に絡む知事と業者の癒着については「関係の透明性を確保する必要がある」と記すだけにとどめた。選挙時の支援の必要性は大部分の知事が認めている。政党、業界団体を含めて推薦団体のポスターが、すき間のないほど張られた選挙事務所は珍しくない。
 諸悪の根源は選挙だと断じる前宮城県知事の浅野史郎慶応大教授は「談合は犯罪、納税者が被害者だ。断固排除するという強い意志が役所に必要」と指摘する。
 入札制度の改革をどう実現するか。指針が示した「一千万円以上の公共工事の一般競争入札」を実施しているのは宮城県などごく数県にすぎない。国の一般競争入札の対象工事は二億円以上である。
 独占禁止法の改正を契機として、捜査当局の談合摘発が進んでいる。談合の容認論に「地元業者の育成」が盛んに言われていたが、それも談合の隠れみのでしかなかった。地域の特殊事情を声高に唱えるだけでは指針の意味はほとんどない。実効性あるものにするため知事は全力を挙げるべきだ。(06年12月30日付)