(46)―「公示地価」

◎バブル要警戒の時期に
 
国土交通省が発表した今年の公示地価は、景気の回復を裏付けるとともに三大都市圏を中心にした不動産投資の活発化を浮き彫りにした。
 全国平均で見た商業地、住宅地は相変わらずの下落だったが、二年続けて下落幅が縮小している。特徴的だったのは三大都市圏の商業地だ。
 東京都区部では港区など都心三区の大規模再開発事業が進み、これが都心回帰の流れを呼びバブル再燃が懸念されるほどである。大阪市は駅前再開発の効果でプラスとなり、名古屋圏は名古屋市をはじめ上昇率全国上位十地点のうち八地点を占め経済の好調さを見せつけた。
 地価の上昇・下げ止まりは景気の回復によることは間違いないが、長期にわたる金融緩和や株式市場の低迷でだぶついた資金が、不動産投資に向かった表れでもある。
 国交省は「地価が正当な価格に戻るための過程」と言うが、現状はミニバブルとの見方が少なくない。要警戒の時期に入ったと考えるべきだろう。
 公示地価を子細に見ると地域間格差が明らかだ。商業地は三大都市圏や、札幌市など地方ブロック中心都市で上昇ないし横ばいだったが、それ以外の中小都市での下落が止まらない。いわゆる地価の二極化である。商業地でみると、山口県周南市みなみ銀座が19・2%の大幅下落となり、全国ワースト5に名を並べた。
 都道府県別の商業地の下落率は、青森県が秋田県とともに10%台となった。二けた台の下落率はこの二県だけだ。住宅地でも八戸市は下落幅が拡大した。山口県下関市は、商業地、住宅地ともに下落率は縮小したが、全国平均を上回っている。
 ところで、こんな公示地価は一年前から予測できた。低金利の下で相対的に高利回りが期待できる不動産に資金が流れ、これに主要都市の経済の回復が追い風となって地価上昇の兆しが明らかだったからだ。昨年九月の都道府県地価でも、地価の下げ止まり傾向が全国に広がっていることが裏付けられていた。
 今回の公示地価が持つ意味は、三大都市圏が一九九〇年代初めのバブル経済の崩壊に始まる資産デフレから脱し、地方圏でも大量の投資マネーの流入が明らかとなったことだけではない。
 確かに国内総生産(GDP)は予測を上回る成長で、日銀の量的金融緩和政策も解除された。だがマクロ経済の回復が地域経済にそっくり当てはまるわけではない。
 青森、大阪、沖縄など十二府県の完全失業率は悪化している。国の雇用対策の重点地域となっている七道県の有効求人倍率は低迷したままだ。
 利便性や利用価値、収益を期待できるかどうかが地価を左右するのは自明の理で、このことを鮮明にしたのが今回の公示地価である。地方経済の不振が公示地価に表れたと言える。地価上昇地点への警戒と地域活性化の処方せんが求められているようだ。(2006年3月25日付)