(44)―「地制調が道州制の最終答申」

◎国のあり方欠いた制度論
 
 第二十八次地方制度調査会が道州制のあり方についての最終答申を小泉純一郎首相に提出した。答申は現行の都道府県制度を廃止、新たな広域自治体となる「道州制」を導入することが適当であるとして、全国を九、十一、十三の道州に分ける区域案を提示した。
 道州制への移行には導入準備の法律制定など本格的検討が必要になる。答申は具体的な移行時期は示していない。現在の都道府県の境界が画定してほぼ百二十年がたつ。戦後民主主義を支えた制度だが、近年の地方分権の流れの中で存在意義が問われているのも確かだ。
 しかし、道州制論議が国民的関心を欠いている現状を見れば、答申が説得力を持つかは疑わしい。全国知事会の中でも、反対、疑問を明言する知事もかなりいるし、政治的手続きがどうなるか全く不透明だ。
 答申が示した区域案は▽九道州が北海道、東北、北関東信越、南関東、中部、近畿、中国・四国、九州、沖縄。▽十一道州は、このうち中国・四国を「中国」と「四国」に、中部を「北陸」と「東海」にそれぞれ分け、北陸に新潟、福井両県を加え、埼玉県を南関東から「北関東」に移す。▽十三道州はさらに東北、九州をそれぞれ南北に分割。東京都は特例的に単独道州とすることも検討するとしている。
 道州の導入に当たっては、国と地方の事務配分を抜本的に見直し、国が本来果たすべき役割を除いて道州に行政権限を移譲するよう求めている。具体的には@国道、空港(第二種)管理など社会資本整備A中小企業対策や職業訓練などの産業労働行政B自動車登録検査などの交通行政―といった中央省庁のブロック機関が持つ権限が移されることになる。
 小泉首相の道州制諮問は、社会経済情勢の変化に対応した地方自治の推進を目指したものだ。
 市町村合併は議論を引きずりながらも行政効率化、財政自立を名目に進み、市町村数は二千団体を切った(二月二十五日現在)。町は千五団体、村は二百二十九団体と激減している。
 合併の進展は基礎自治体の数を減らすだけではない。合併によって政令指定都市、中核市、特例市などの存在が大きくなり、東京都を別にして道府県の役割も変わらざるを得ない。市町村合併の次は道州制という論法は、その表われである。
 ところが、道州制に対しては、制度論が先行して実質的な論議がなされていないと反発するのは知事にとどまらず識者にも多い。本来、国家統治機構にかかわる問題であるにもかかわらず、その議論がないということだ。調査会の論議の中でも激しい議論が交わされた。
 諸井虔会長は「(答申は)道州制を押し付けるものではなく、国民的な議論のたたき台」と言っている。であるならば、今後は答申にしばられない国民レベルの重層的な論議を求めたい。国家論、地方論がないような道州制論議は国の針路とはならないからだ。(2006年3月1日付)