(43)―「大詰めの在日米軍再編」

◎米軍再編の前途は厳しい
 
 在日米軍再編との絡みで注目された沖縄県名護市長選は、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)を同市辺野古崎への移設を決めた日米合意について、政府との協議に柔軟な姿勢を示していた無所属新人の島袋吉和氏が当選した。
 日米両政府は昨年十月、移設先を名護市辺野古崎とすることなどを盛り込んだ中間報告を策定した。その合意を踏まえての市長選であり、有権者は地元の経済振興を期待して現実的な選択をしたといえるだろう。
 普天間飛行場移設は、在日米軍再編の象徴的課題と位置づけられており、沖縄にとどまらず東京・横田、神奈川・座間、山口・岩国各基地などへの米軍兵力の統合・集約・移転・分散と密接にかかわっている。それだけに、今回の市長選は、日米両政府はじめ基地を抱える全国の自治体も注視していた。
 その結果、対話を求める島袋氏が当選したことに政府は安堵(あんど)しており、地元振興策の財政措置を勘案しながら説得に全力を挙げる構えだ。また、日米両政府の審議官級協議が二十五日からハワイで開かれており、三月中の最終報告策定に向けて再編協議の加速を図る。
 しかし、普天間移設問題がこれで一気に進展するわけではない。島袋氏は中間報告にある名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設案には反対している。当選後の記者会見でも、沿岸部案を海上に大幅にずらす修正案なら協議に応じるとの考えを表明した。
 同氏とともに地元説得の鍵となる稲嶺恵一知事も沿岸部案に反対している上、かねて主張している「十五年間の使用期限」などの条件が満たされなければ、県内移設は容認できないとの立場だ。
 また島袋氏が指摘する修正案は、日米両政府の中間報告で採用されなかった案である。米側は中間報告を事実上の最終案とする方針を示していることから、前途は厳しいといえるだろう。
 在日米軍再編の狙いは、国際的な安全保障環境の変化に対応して、自衛隊の役割強化および米軍との連携・一体的な運用を図り、併せて米軍基地の負担を軽減することにある。だが中間報告が関係自治体の頭越しに決められたことに対する反発は強い。
 再編の骨格は、在日米軍基地の75%が集中する沖縄の過重な負担を軽減し、@米本土の陸軍第一軍団司令部を改編して米軍キャンプ座間に移設A米軍厚木基地の空母艦載機を同岩国基地に移転し、岩国基地の空中給油機を海上自衛隊鹿屋基地に移駐Bその他、米軍機能を北海道や九州など各地に分散・移転―という内容である。
 中間報告後に防衛庁長官や外相らが駆け回った各地の説得行脚も、逆に政府の対米交渉力なさを露呈するだけだった。防衛施設庁が回った十二都道県、四十数市町村は、ほとんど理解が得られなかった。
 最終報告まであと二カ月しかない。関係自治体を「蚊帳の外」に置いた日米合意は、政府が沖縄問題で繰り返してきた稚拙な手法の繰り返しである。(2006年1月27日付)