(42)―「道州制区割り案」

◎遠大な計画は国民的議論を 

 道州制の在り方を検討している地方制度調査会(首相の諮問機関)の専門小委員会は、これまでの論議を整理し、議論のたたき台として全国を八、九、十一の道州に分ける区割り案を例示した。もっと議論を深めるべきだとの意見も強いが、小委では三案を軸に集約し、近く小泉純一郎首相に複数の区割り案を盛り込んだ答申をする予定だ。
 区割り案は三案とも北海道と沖縄県は地理的な特性などからそのまま道州に移行。東北六県と九州七県もそれぞれ道州とするが、関東甲信越から中国、四国地区の区割りに変化を持たせた。
 具体的には「八道州案」では、「関東甲信越」「中部」「近畿」「中国・四国」だが、「九道州案」は、「関東甲信越」を「北関東」と「南関東」に分けた。「十一道州案」では、「中部」を「北陸」と「東海」に分け、「北陸」は新潟、福井両県を加えた四県とする。「中国・四国」は「中国」と「四国」に分割している。
 三案とも東京都は社会経済的にも巨大であるため他地域とは区別し、単独で道州とすることも想定した。
 区割り案は総務省が昨年提示した七パターンを絞り込んだ。専門小委の例示の形で総会に諮られるかどうかは分からない。議論を集約するための絞り込みは必要だが、その前段として「なぜ今、道州制なのか」の国民的な議論がない。
 あらゆる面で変革が激しい今日、行政区画も明治以来のままでいいはずはない。
 二〇〇〇年の地方分権整備法施行で国の機関委任事務が全廃、国の統治機構の機関だった都道府県や市町村が曲がりなりにも自治のスタート台に立った。そして国は行政効率を狙って市町村の「平成の大合併」を進めている。市町村合併後の焦点は道州制である。
 都道府県制度は政令指定都市、中核市、特例市など大都市、中小都市の役割が大きくなったことで大きな壁にぶち当たっている。つまり権限・財源を持った都市の誕生は、それだけ道府県の存在意義を小さくしているのである。
 だからといって府県を統合して道州制を実現できるかといえば、答えは「否」であろう。道州制への国民的な関心がほとんどないことに加え、道府県側に明快で、説得力のあるタイムスケジュールがない。
 同時に政治的な視点に立てば、道州制は「国の在り方」を問う究極的な制度論であるはずだが、そうした議論が交わされた兆候はない。道州制は遠大な計画である。そうした認識や理念が政治や行政の任に当たる指導者に欠けていないか。道州制導入に対する政治の関心は低いだけでなく、選挙事情を考えれば国会議員の抵抗もあるだろう。
 道州制は機械的な行政システムの再編にとどまらない。道州制移行のプロセスとして、都道府県制を新たな自治能力の高い枠組みに替える道も探ってみるべきではないだろうか。 (2006年01月19日付)