(40)―「補助金改革ゼロ回答」

◎首相の威光はどうした

 全国知事会など地方六団体にとって、十月二十六日は「やりきれない日」と映ったのではなかろうか。同日、首相官邸で開かれた三位一体改革に関する「国と地方六団体代表の協議の場」は、前週同様、各省庁とも「ゼロ回答」を繰り返し、補助金改革に対する国の抵抗の強さをあらためて見せ付けた。
 そして、数時間後には中央教育審議会が三位一体改革で焦点になっている義務教育費国庫負担金について、現行の二分の一国庫負担を堅持すべきとの答申を中山成彬文部科学相に提出した。
 ゼロ回答も中教審答申も予想されはしたが、来年度予算編成に向けた時期だけに地方団体は見過ごせない。全国知事会の麻生渡会長(福岡県知事)は、「国と地方の協議の場」の後、厚生労働、財務、国土交通、文科など六省の各閣僚が「具体案を全く出そうとしない」と険しい表情だった。
 中教審答申は、地方代表からの修正案が出されたため答申案取りまとめの時と同様、異例の採決になった。
昨年暮れの政府・与党合意は、義務教育費国庫負担金の八千五百億円を「暫定削減」とし、最終的には中教審の答申待ちとされた。その答申が国の負担金削減に「ノー」を言い渡したのだから、負担金の地方への移譲はなくなったと解される。
 ところが、この暫定削減は既成事実化しており、昨年十一月に固まった二兆四千億円の税源移譲の中心的な項目だ。細田博之官房長官も「地方に任せて弊害はない」と言っており、政治的には既に決着済みになっている。
 義務教育費国庫負担金問題で浮き彫りになったのは、本来あるべき教育制度の論議が脇に追いやられて義務教育に関する「国の責任」「地方の裁量」といったうわべだけのやり取りに時間を費やす不毛の論議が続いたことだ。教育行政の後進性を指摘せざるを得ない。
 三位一体改革は来年度までの三年間で国から地方への補助金四兆円を削減し、その代わり地方に税源三兆円を移譲する。このうち二兆四千億円の税源移譲は固まったが、残り六千億円を確実なものとするため地方団体は今年七月、約一兆円の補助金削減リストを作って各省に提示していた。
 国と地方の協議の場での各閣僚の言い分は「やれることはやった」「関係者で協議中」だった。「地方の言い分を真摯(しんし)に受け止める」よう小泉首相が指示しているにもかかわらず、なぜ国の対応は鈍いのか。総選挙で圧勝した余勢を駆って首相が指導力を発揮すると期待した地方団体が甘かったのか。
十一月早々、内閣改造がある。関係閣僚が地方の求めに積極的でないのも、各省が補助金削減や税源移譲をあらためて精査しないのも、すべては内閣改造を控えた「先送り」の雰囲気が霞が関、永田町を覆っているからである。
 政府の増税論が日ましに熱を帯びている。その中で三位一体改革の影が薄くなってきている。(2005年11月)