(39)―「普天間移設先決着」

◎首相自身が沖縄説得に当たれ

 在日米軍再編の焦点になっていた普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先が最終決着した。日本側が提示した、名護市辺野古崎の米海兵隊基地、キャンプ・シュワブ兵舎地区を横切る形で海域に突き出す「沿岸案」とすることを米側が受け入れた。
 だが、この日米合意に「現行案以外なら県外への移設」と主張していた沖縄県は強く反発しており、沖縄県が受け入れるまでには曲折も予想される。ここは「普天間問題(解決)の責任は私にある」と明言している小泉純一郎首相が率先、沖縄世論の説得に乗り出すべきだろう。
 今週末、ワシントンで開かれる日米の外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、同飛行場の移設先を明記した在日米軍再編の中間報告が発表される。
 今回の在日米軍再編協議で、普天間飛行場移設がいかに大きな比重を示していたかは、米政府高官が「普天間飛行場の決着なしに(再編協議の)中間報告はあり得ない」と再三強調していたことでも明らかだった。
 一九九六年の日米合意で決まりながら、辺野古沖埋め立てる現行案いまだに着工のめどさえ付かない。米政府にとって、そんな状態は日本政府が真剣に普天間問題を解決しようとしていないと映る。「政府間合意」とは、そんなに軽いものか、と米政府高官が思ったとしても不思議ではない。
米政府のいらだちに日本側はどう向き合ったのか。外務省は、例によって米側が提案する方向で落着するよう働きかけた。しかし、基地問題の実相を知り、対応の難しさを肌で感じている防衛庁・防衛施設庁は、外交を優先させる外務省に反発、「陸上案」の基本線を守りながら、環境問題を盾に米側の意向を探ったのである。
 米側が、ヘリポートを辺野古崎近くに移した「辺野古沖縮小案」を最適な選択と主張したのは、この案が地元経済グループがまとめたもので、地元の理解が得られると考えたからだ。
 だがこの案には、沿岸部の水域を大規模に埋め立てることに伴う環境の激変という沖縄が直面している環境保全の視点が欠けていた。
 日米協議で特徴的だったのは米政府のあせりにも似た交渉態度だ。米政府にとって米軍再編・変革で積み残しになっているのは日本だけだ。その日本が今後の米国の世界戦略に占める役割は大きく、再編の仕上げは日本だ。ところが、日本は緊密な日米同盟をうたいながら、在日米軍再編では腰が重かった。
 在日米軍再編をめぐる日米協議は今回の「普天間合意」でほぼ収束、新たな日米同盟の時期を迎えることになる。
 日米合意が沖縄の基地負担をどれだけ軽くするか定かではない。交渉の中で、米側高官は普天間飛行場の移設に併せて中南部地区の基地返還の可能性を強調した。目に見える形での米軍基地の整理・縮小を期待したい。(2005年10月28日付)