(38)―「補助金削減・税源移譲ヤマ場」

◎今度こそ首相の指導力を

 国・地方の税財政改革(三位一体改革)の補助金削減、税源移譲をめぐる官房長官と財務、総務、経済財政担当各相による最終調整がヤマ場を迎えている。
二十六日には義務教育費国庫負担金について中央教育審議会の最終答申があり、同じ日に三位一体改革で国と地方六団体の協議日程が組まれている。二十日から補助金削減を詰める閣僚の調整が始まったが、その中身次第では、三位一体改革は振り出しに戻ることにもなりかねない。
 確認しなければならないのは、これまでの補助金削減・税源移譲は地方の要求に十分応えていないということである。昨年十一月の政府・与党合意は、地方への税源移譲は二兆四千億円と目標の三兆円に届かず、生活保護費や児童扶養手当など難題は先送りされた。そこで全国知事会など地方六団体は税源移譲の不足分6千億円を超える約一兆円の補助金廃止を提案、回答を求めていた。
 これに対する文部科学、厚生労働、国土交通など六省の回答は、事実上の「ゼロ回答」だった。首相や官房長官が関係閣僚に削減案を差し戻したほど内容が乏しかった。
 その中で最大の焦点の義務教育費国庫負担金、八千五百億円の取り扱いは、中央教育審議会の特別部会が「国庫負担維持」を明記した答申案をまとめ、二十六日の総会に諮られる。
政府・与党合意では八千五百億円は暫定削減とされ、最終的には中教審の結論待ちとなっていたが、すでに決定済みの二兆四千億円の税源移譲に組み込んである。他の補助金でも、政府・与党は改革の軟着陸を狙って補助金を地方が使いやすい交付金に模様替えした代案を示すかもしれない。だが、補助金の交付金化は官僚の裁量を残し、分権の趣旨にも反する。
八千五百億円の「暫定削減」は、郵政改革を前にして義務教育への国の関与の必要性を求める自民党文教族が激しく抵抗してできた政治的妥協の方策である。
 しかし政治的状況は様変わりした。文教族の抵抗は今ではほとんど見られない。文科省は強力な応援団をなくしてしまったが、教育への政治介入に省内の反発は強い。答申案づくりの過程で明らかになった内閣官房の口出しが、中教審委員を強く刺激したのも確かだ。
「地方案を真摯に受け止める」という首相の言葉を信じさせるには玉虫色の決着であってはならない。義務教育費の負担金廃止だけでなく、財務省が反対している建設国債を充当した事業なども税源移譲の対象とするよう、首相は指導力を見せるべきだ。
 各省が首相の意向に沿った補助金削減案を出し直すのであれば問題はない。だが、ゼロ回答のまま押し切ろうとしたり、玉虫色の決着を許すようだと、国と地方の信頼関係は崩れる。内閣改造前に実のある改革案を示すか。あるいは最低限、分権の趣旨に立つ骨太な方向付けをする責任が首相にある。(2005年10月25日付)