(37)―「普天間移設協議物別れ」

◎日米双方が原則論で対立

 ワシントンで開かれていた在日米軍再編に関する日米審議官級協議は、焦点の普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移転先をめぐる日米間の主張が折り合わず物別れに終わった。
 近く協議は再開される見通しだが、日本側が予定していた今月中の中間報告作成は早くとも十一月、最終報告は年明けにずれ込む可能性が高くなった。
 協議が不調に終わったのは、普天間飛行場の移設先として日本側が本島北部の海兵隊基地、キャンプ・シュワブ内の陸上施設を主張したのに対し、米側は名護市辺野古沖での海上施設を縮小した案を、「移設可能性が最も高い」として譲らなかったためだ。
 日本側が既存基地内の陸上案を示したのは、現在の海上施設建設計画が反対派住民の抵抗で全く移設作業が進まなかった事情を考えたからで、既存基地への移設は短期間で可能とした。
 一方、米側が主張する海上基地の縮小案は、沖縄県が移設受け入れの条件とした民間機の利用も可能な軍民共用空港を大幅に縮小、滑走路も当初の二千メートルから千三百メートルとし、建設場所もさんご礁を避けた沿岸に近い浅瀬を想定している。
 この案は地元の経済グループがまとめ日本政府にも提出、名護市の岸本市長も「有力な選択肢」と評価している。米側は縮小案を「地元の支持が得られる」と譲らなかった。
 陸上案、海上縮小案いずれも一長一短がある。問題は、沖縄米軍基地の整理・縮小をうたった1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告にある「県内移設」を返還条件としたことだ。
 米軍の世界的規模での変革・再編に関連する在日米軍再編は、このSACO合意を事実上ないに等しいものとした軍事情勢の変化である。
 近年の軍事技術の進歩は、在日米軍専用施設の四分の三が張り付く沖縄の現実の異常さを表している。普天間飛行場の県内移設を再検討すべきではないか。
 日本政府は米国と対等なパートナーシップを確立する戦略対話の充実を目指している。
 今回の在日米軍再編協議で明らかになったのは、米側は日米同盟による抑止力、危機対応能力を吟味し日本の役割を明確にしようとしたことだ。これに対し日本は、基地の整理・縮小に主眼を置き、米側が期待するような戦略対話に応じなかったのではないか。
 十一月中旬、ブッシュ米大統領の訪日が予定されている。米側は、それまでに「役割・任務・能力」についての日米の分担を盛り込んだ中間報告をまとめたい意向といわれる。
 在日米軍再編は、沖縄だけでなく青森県三沢基地など全国十三都道県に関連する。日本政府の対米姿勢が問われているのである。(2005年10月5日付)