(35)―「05年度地方交付税決着」

◎安心というわけではない 

 二〇〇五年度の地方交付税総額が、ほぼ本年度並みの十六兆九千億円で決着した。一年前、本年度予算編成で地方交付税が大幅に切り込まれた場面が再現されるのではないかと危機感を抱いた地方自治体は、ひとまず胸をなで下ろしたところだ。
 だが、これで地方が安心というわけではない。財務省は〇六年度以降も交付税削減を進める構えであり、財務省と地方の戦いが収まる気配は全くない。逆に、地方財政運営をめぐる地方交付税制度改革とも絡んで、対立は一段と激しさを増すだろう。
 来年度交付税総額のうち国の一般会計から充てられるのは、本年度より八千億円少ない十四兆六千億円。これに特別会計からの借入金や本年度の繰越金を加えた。
 削減といわれながら本年度並みとなったのは、先の三位一体改革の全体像で、〇五、〇六年度は「地方の安定的な財政運営に必要な交付税を含めた一般財源の総額を確保する」とした文言があったからだ。「総額の維持」に財務省が押し切られた形となった。
 地方自治体には苦い経験がある。地方交付税は、もとより地方の自主財源である。だから、その財源を自由に使えるような予算をつくる。
 ところが昨年暮れ、補助金削減、税財源移譲が紛糾する中で、〇四年度の交付税総額が臨時財政対策債も含めて前年度に比べ12%の大幅削減となった。このため自治体の予算編成は財源不足に陥って大混乱、各種の基金を取り崩すなどして急場をしのいだ。
 地方交付税制度は、経済・景気対策などで国の政策に巧妙に利用された経緯がある。いや
応なしに交付税特別会計の赤字が膨らみ続け、〇五年度末には五十二兆円、地方の借入金残高は二百五兆円になる見込みだ。
 補助金削減、税財源移譲、地方交付税を見直す三位一体改革は二年目を迎え本格化する。ところが、補助金削減に見合う税財源移譲は、東京都など大都市を別にすると中小自治体に財源不足という極めて厳しい現実を突き付ける。
 これを埋めるのが財政調整機能を持つ交付税だ。だから自治体は交付税の大胆なカットを狙う財務省に猛反発し、交付税総額を何とか維持しようとする。
 地方交付税を含めた〇五年度の地方財政計画は、本年度比1・1%減の八十三兆七千七百億円。計画によると、地方の一般歳出は本年度比1・2%減の六十七兆三千二百億円。地財計画に過大に計上されている地方単独の公共事業費を減額、逆に少なく見積もられている単独の社会福祉費などの一般行政経費は、市町村合併推進などを考慮して上積みされた。地方公務員の給与削減は約三千億円。
 地財計画はどうにか形を整えたが、地方交付税は中長期的には削減の方向が強まるのは避けられない。削減を視野に置いた地方の対応が求められるだろう。(2004年12月23日付)