(34)―「幕引いた三位一体改革」

◎理念欠いた全体像 
 
 国と地方の税財政を抜本的に見直す三位一体改革の全体像は、一応、改革の方向性を示した。しかし、最後まで数字合わせに終始、「国と地方の役割はどうあるべきか」という改革の根本的な理念が脇に追いやられたまま幕引きとなった。
 小泉純一郎首相は「私の出番をなくしてくれて感謝している」と満足げだが、地方六団体が求めた補助金廃止案からの採用も限定され、生活保護費や児童福祉手当など与党内で調整が難しいものは軒並み先送りとなった。
 最大の課題として最後まで難航した義務教育費国庫負担金(八千五百億円)は、地方案通り削減する方針を明記したが、削減方法は中央教育審議会の結論待ちである。二〇〇五年度はその半分の四千二百五十億円を交付金に振り替え、同年秋の中教審答申を受けて恒久措置を検討するという。
 自民党文教族が一歩も譲らない「国の関与」に配慮しながら、首相の立場にも気を配った玉虫色の改革案だ。言うまでもなく、中教審の事務方は文部科学省の官僚である。審議会の論議を取り巻く状況が従来とは異なるとはいえ、自民党文教族と文科省が一体となった義務教育に対する国の「責任」を簡単に地方に委ねるはずもない。
 国民健康保険負担金の七千億円削減は地方案にはなかった。削減方法は決まっていないが、改革の道から外れるような負担率の引き下げになれば地方の猛反発は避けられない。国保同様、地方の負担増を狙った生活保護と児童扶養手当の削減は、地方の反発に加えて与党の公明党の抵抗で地方団体の代表者が参加する協議会で来年秋までに結論を得ることになった。
 義務教育費と国保の負担金だけで補助金削減の半分を超える。その結果、削減されずに救われた補助金はたくさんある、と宮城県の浅野史郎知事は指摘した。地方の財政自立度を基準にすれば、全体像は極めてあいまいということだ。
 国と地方の仕事の分担を再検討し、地方への権限移譲と財政再建を同時に進めるのが三位一体改革だ。そのために地方の自主・自律の障害になっている補助金、税源移譲、地方交付税のあり方を包括的に見直す。そんな改革を進めるため、小泉首相は地方に補助金改革の方策の作成を求めた。そして、小泉首相に届けられたのが「三・二兆円」削減案である。
 今回決まった三位一体改革の全体像は、〇五、〇六年度の国の補助金削減額が二兆八千三百八十億円。その見返りとなる地方への税源移譲は、〇四年度の六千五百六十億円を含め二兆四千百六十億円。全国知事会の梶原拓会長は全体像について「六十点ぐらい」と一応、合格点をつけたが、数字合わせに終始したことや、仕事を地方に任せる議論がなかったことに不満の意を表明した。
 地方の財政運営を左右する地方交付税が決まるのは十二月に入ってからだ。地方の歳出抑制を狙う財務省との戦いはむしろこれからが本番だ。(2004年11月30日付)