(33)―「補助金廃止案への8府省の代替案」

◎三位一体改革の原点に戻れ 

 国のあるべき姿の指針となる三位一体改革は、国と地方の信頼関係ができてこそ実現できるというものだ。ところがどうだろう。全国知事会など地方六団体がまとめた三・二兆円の補助金廃止案に対する関係八府省の代替案は、地方案の三分の一にも満たない約九千億円強で、それも大半が地方の抵抗が強い負担率の引き下げだ。
 地方団体の怒りは、削減額が少なかったことに加えて、これまでの補助率を減らし、さらに補助金を統合して交付金としたことだ。交付金化は、表向きは地方の裁量を増やす形ではあるが、国が権限を維持することに変わりはない。地方が求める自由裁量は、巧妙に形を変えて示されただけである。
 補助金削減で大きな論議を巻き起こした文部科学省の義務教育費国庫負担金(八千五百億円)は「ゼロ回答」、公立学校の整備費などは交付金化。農水省も補助金の交付金化などを提案、補助金の削減には応じなかった。厚生労働省は国民健康保険、生活保護、児童扶養手当の補助率カットなどで計九千億円程度を削減するとした。環境省の削減は、廃棄物処理施設の補助金など百四十億円だけ。公共事業の補助金は税源移譲の対象にならないとした国土交通省は、河川修繕費など七十四億円を廃止した。
 八府省の対案に細田博之官房長官は「期待していた線に沿ったものとは言えない」と語り、小泉純一郎首相も関係各閣僚に再考を促した。政府は十八日までの全体像取りまとめに向けて官房長官、財務、総務、経済財政の四閣僚を中心に調整を急ぐ。
 首相の指示で各府省案がいくらかは是正されるだろう。というのも、各府省が地方案に譲歩するタイミングをうかがっているからだ。小泉首相のリーダーシップがどのように発揮されるか。政府案を協議の出発点にすれば、府省側の権限維持は可能だし、譲歩の仕方次第で首相の存在感も保証できる。そんな計算が官僚にないとはいえない。
 全国知事会の梶原拓会長は「各省は三位一体改革の目的である地方分権の根本精神を忘れた対応をしている」と厳しく批判。さらに、補助率カットを「分権改革の枠外」と切り捨てた。首相の求めに応じて出した地方案への答えが、国への信頼を裏切る内容になったことへの憤まんからだ。
 今回の政府案を見る限り小泉首相の意向が閣内に浸透しているとは言えない。閣内不統一との声さえ聞かれる。改革を「政局」にすべきではないと自民党幹部は強調するが、青木幹雄自民党参院議員会長は「地方団体と政府がどういう決定をしようとも、それに従うという気持ちは一切ない」とくぎを刺している。(2004年11月03日付)