(31)−「抵抗続く補助金改革」

◎政府は地方提案を尊重せよ 
 
 国と地方財政の三位一体改革が年末に向けて本格的に動きだした。全国知事会など地方六団体の包括的な補助金廃止提案、これに対する中央省庁の反論も、日を追うごとに激しさを増している。細田博之官房長官は、地方六団体が示した総額三兆二千億円の補助金削減案尊重をあらためて関係閣僚に求めたが、これも、裏を返せば削減の対象となった各省庁の抵抗が強いことの表れである。
 細田長官が八日の閣僚懇談会で関係閣僚に求めたのは/(1)/補助金削減の各省庁案を二十八日までに示す/(2)/地方案に異論があれば、その代替案を示す―である。だが地方案に、もともと不信感を持つ省庁が、地方自治体の「土俵」で三位一体改革論を交わす気持ちがあるかは疑わしい。
 去る八月下旬、新潟市で開かれた全国知事会は、義務教育費国庫負担金(公立中学校教職員の給与分)の取り扱いで論議は真っ二つに割れた。文部科学省にすれば、地方案はいずれ、二兆五千億円に及ぶ義務教育国庫負担金の全廃につながり、同省の存在そのものが問われかねない。それ故、全国一律の教育水準維持を盾に、猛反撃にでたのである。
 文科省を強気にさせているのは、地方案の裏に潜む異論に加え、森喜朗前首相を筆頭とする自民党文教族の存在だ。
 公共事業についても同じ。いや、むしろ地方経済の実情からいえば、義務教育費より公共事業関係補助金の方が、住民生活との関係から、実体論としては大きいかもしれない。
 全国知事会の梶原拓会長が細田長官に手渡した報告書「改革に対する妨害と思われる実態」で明らかになった事例は、そんな地方の弱みを突いたものだ。国土交通省や林野庁、さらには全国治水砂防協会などが、補助金廃止となった場合の問題点などを市町村や地方議会に指摘、補助金存続の意見集約の誘導をしているという。補助金存続の意見書の「ひな型」を議会に示したり、堅持の結論を誘導するアンケート調査などは、小泉内閣の方針に逆行する。
 国から地方へ、官から民へ―が小泉改革の基本理念である。であれば、三位一体改革の突破口として首相自らが求めた補助金改革の地方案を真摯(しんし)に受け止め、その上で問題点があれば、説得力のある対案を提示、地方六団体と議論を重ねることこそが、政府に求められているものである。
 地方案提示で開かれた政府関係閣僚と地方六団体代表の協議会が、仮にも梶原会長が言うように「役人が書いた反論の作文を読むだけで、地方分権をどう進めるかの議論がない」状態では、三位一体改革の前途はあまり期待できない。各閣僚の改革に向けた政治主導が求られている。
 そして、この協議会が二〇〇五年度予算編成に向けた一時的なものであってはならない。地方分権の道のりの長さをよく考え、将来を見据えた常設の協議会とすべきだろう。(2004 年10月20日付)