(30)−「地方の補助金改革案」
◎改革の道のりは険しく遠い

 地方分権の「生みの苦しみ」を実感させる会議だった。
 新潟市で開かれた全国知事会は、小泉純一郎首相から求められた補助金削減案の取りまとめをめぐって激論を展開した。会議に提出された二〇〇六年度までの三・二兆円削減の原案は知事会の歴史上、初めて採決に持ち込まれる事態となった。何とか結論を導き出し、全国市長会、全国町村会などの了承を得て地方六団体の総意として近く政府に提示される。
 だが、焦点の義務教育費国庫負担の取り扱いに表れたように、国の義務を地方が肩代わりし得るのか。あるいは税源移譲で避けられない大都市と中小市町村の財源格差に伴う財政面での地域偏在をどうするか―などは、ひとえにカネの問題に帰する。それ故、それぞれ異なる条件を抱える各知事が、総論で補助金廃止と税源移譲に賛成しながら、各論で足並みをそろえることは、ほとんど不可能と言っていい。
 「おおむね三兆円の税源移譲」とされた政府の骨太の方針に対応する地方六団体の補助金削減三・二兆円は、事前の討議で、市町村が強く抵抗した公共事業関係の流域下水道整備などで八千五百億円の削減が消え、代わって同額の公立中学校教職員給与費の廃止で穴埋めされる形となった。
 このため「数字合わせ」の批判が出る一方、税源移譲の不確かさや不十分な交付税措置とも絡めた補助金必要論。加えて、教育問題の本質論なども飛び交い、議論の収束は難しいのはないかとさえ思わせた。
 激しい論議を仕切った梶原拓会長(岐阜県知事)は、会議終了後の記者会見で、補助金の改革案をまとめたことを「税源移譲が実現しつつある。歴史的な出来事だ」と自賛する一方、従来にも増して地方の団結が求められる厳しい時代への覚悟を語った。
 首相から投げられたボールをしっかり受け止め、説得力のある地方案を示す。それができなければ、地方の足元が見透かされる。そんな危機感を抱きながらの改革案だ。
 サロン的な集まりでしかなかった知事会が、「闘う知事会」に変身したのは、国と地方の対等な関係を、身をもって実践しようということにほかならない。一人ひとりの知事が論議で、思いのたけをぶっつけた。かつてなかったことである。改革案を政府に提出することに七人の知事が反対したが、そのこと自体は大した問題ではない。地方分権のこだまを映す、百家争鳴への変化にこそ目を向けるべきだろう。
 だが、中央省庁に加えて族議員の強い抵抗は避けられない。はやくも省庁や政党の反発があらわになっている。改革案が求めた政府と地方六団体による協議会設置はできるにしても、その構成・機能・権限の先行きは不透明だ。三位一体改革の道のりは険しくて遠い。腰砕けにならない地方の覚悟がより一層求められる。そのための住民との連携・共闘をどう構築するかだろう。(2004年8月21日付)