(28)―「リゾート法の見直し」

◎バブルの発想はいらない

 総合保養地域整備法(リゾート法)に基づく全国のリゾート計画が十七年ぶりに見直されることになった。国土交通、総務など四省が同法の基本方針を変更、当初の計画どおり施設整備などが進まず、地域全体で実現の見込めない構想を抜本的な再検討を通知した。
 日常的でない豪華施設を、国民が期待しているとでも考えたような計画が無残な姿をさらしている現状を見れば、見直しは当然の帰結だろう。
 リゾート法が公布・施行されたのは一九八七年秋。折しも民間活力が喧伝(けんでん)され、国中がバブル経済に舞い上がったころである。当時のカネ余り、遊休地の活用、内需拡大などさまざまな問題をリゾート法で片付けようとした。企業の見境のない土地投機、株式市場は庶民を巻き込んで狂奔した。「一億総投資家」と言われた時期だ。程なくバブルがはじけ、転げ落ちるように不況に突入した。
 政府が承認した基本構想は、法施行翌年の十地域から九七年の「北海道ニセコ・羊蹄・洞爺周辺リゾート地域整備構想」まで四十一道府県、四十二地域。バブル崩壊がはっきりした九一年以降も十二道県の構想が承認を受けている。青森県の「津軽・岩木リゾート構想」の承認は九〇年、バブル崩壊直前だった。
 リゾート法は、ゆとりある国民生活の実現と地域振興―を二本柱にした。中山間地域だけでなく、年々疲弊が進む地方経済の活性化を、リゾート開発をてこにする発想自体は間違いではない。だが、人工的な開発が豪華さを売り物とする「非日常性」の追求となり、併せて環境問題を引き起こしてしまった。自然破壊に至らないまでも、計画からの撤退が相次いだ。
 構想の対象となる特定地域のスキー場やホテルなどの特定施設の整備進ちょく率は、整備中を含めても全国平均で計画の23・8%、同施設利用者数は当初見通しの42・8%、雇用者数では21・8%にすぎない。
 青森県の構想の場合、進ちょく率、雇用者数とも、それぞれ31・2%、40・6%と全国平均を上回るが、利用者数が20・8%にとどまっている。全国平均そのものが低いのだから、平均を上回ったといって喜べない。
 国土交通省は昨年三月、総務省も同四月に政策評価を行い、ブロックごとに関係道府県と意見交換した。その結果を踏まえての今回の基本方針の変更である。見直しは特に、的確な需要見通しと整備の工程表作りや政策評価に重点を置いた。
 だが、リゾート構想の問題点は政府機関が十年前に改善を勧告している。にもかかわらず、政府が再検討に乗り出したのは二年半前である。見直しの遅れは明らかだ。構想を精査せずにわれ先に国の承認を求めて走った自治体の責任も重い。 すでに、幾つかの地域では当初の事業計画を転換、身の丈にあった計画で観光客の呼び戻しに成功している。地に足のついたリゾートこそが、時代が求めるものである。(2004年3月16日)